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【感謝!4万PV突破!】雑に学ぶと書いて雑学 ~昨日より今日の自分が少し賢くなるかもしれない~  作者: 雲条 翔


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刀にまつわる慣用句あれこれ

 A美さんとB子さん、二人の女子大生は、喫茶店で待ち合わせていました。

 既にテーブルについて、カプチーノを飲んでいるB子さんのところに、遅れてきたA美さんがやってきます。


「ごめんB子、待ったー?」


「全然大丈夫。聞いたよA美。別れたカレと元サヤに収まったんだって?」


「そうなんよー。最初、浮気が分かった時はヤキ入れたろかと思ったけど」


「元ヤンこわっ。浮気相手の天然系の子と、火花バチバチ散らしてたって聞いた時は、マジでやるんじゃないかと思ってたけど」


「誰が元ヤンか」


「単刀直入に聞くけど、元ヤンでも今ヤンでもないよね……?」


「不安そうに聞かないでよ。それっぽいって言われるけど、違うから。でね、その浮気相手の子は、昔から知ってたけどさ、もともと私とはソリが合わない子だったのよ。カレも、その子も、あたしとバイト先が一緒だったんだよね」


「ふむふむ」


「適当な相槌打ってる。ちゃんと聞いてる?」


「聞いてる聞いてる」

 

「じゃあ、続けるけど。あの子、仕事もできないし、いつもトンチンカンなことばっかり言ってんのに、愛想良くしてるだけで、周囲のオトコたちはチヤホヤしてたワケ。絶対に計算なのよ。抜き打ちテストでも、しれっと満点取る感じの、イヤなアタマの良さ」


「いるよねえ、そういう子」


「そうそう。極めつけは、こっちがヘンなお客の相手で、切羽詰まった状態でレジ打ってんのに、あの子はヘルプも来てくれないし。急場しのぎで、そのお客の対応は先輩に回して、私は通常の仕事に行ったんだけどさ。その日はもう、マジで忙しくて。あの子は、ニコニコしながら、忙しいなら代わりばんこでレジに入りましょうか~、とかノンビリ言ってくんのよ」


「わかる。そういう子に限って、オトコ受けは良かったりすんのよ。太刀打ちできないよねえ、そういう子」


「あ、もう時間じゃん。行かないと。ここの払い、私出すよ。遅れてきたんだし、あんたが飲んでるカプチーノ代くらい」


「いいよいいよ、自腹で。じゃ、行こっか」


 さすがは、サムライの国、ニッポンの娘さんたち。日常会話の中に、サムライの武器・刀に関する単語がいっぱいです。


 以下、解説。


「元サヤ」は、「元の鞘に収まる」の略で、抜いた刀を再び鞘に収める動作から、「本来あるべき姿に戻る」意味となり、恋愛では「別れた恋人同士が復縁し、もう一度やり直す」といった形で使われます。


「ヤキを入れる」、これは刀鍛冶が高音に熱した金属を水に入れ、急に冷やす「焼きを入れる」が元。刀の硬度を上げるためのものですが、金属を強くする、それが転じて「ゆるんだ気持ちを引き締めさせること、そのための厳しい制裁」という意味になりました。


「火花を散らす」のは、刀を持った両者がぶつかり、打ち合った刃の部分から火花が散ることから、「互いに激しく争う」ことを言います。刀のつばもぶつかることから「鍔迫つばぜり合い」という慣用句も似たような意味で使われます。「しのぎを削る」も近いですが、こちらは努力・研鑽して相手を追い抜こうとする、良い意味も含まれるようです。


「単刀直入」は、刀を一本だけ持って敵陣に切り込むことから、遠回しなことをせずに直接本題に入ることを言います。


「反りが合わない」は、刀剣と鞘の反り方が一致しなければ収めることができないことから、考え方や相性が悪い相手のことを言います。


「相槌」「相槌を打つ」も、刀に関する言葉が発祥。刀鍛冶の師匠と弟子が、呼吸を合わせて交互にハンマーを打つところから、相手の話の合間にする返事や動作、言葉を挟むことを意味するようになりました。


「トンチンカン」も、意外ですが刀を発祥とする言葉。上記の「相槌を打つ」で、師匠と弟子のタイミングが合わないと、鋼を打つ音がリズムを失って「とん・ちん・かん」と聞こえるところから。「頓珍漢」と漢字表記する場合もあります。ちなみに、正しいリズムだと「とん・てん・かん」だそうです。


「抜き打ちテスト」の「抜き打ち」、これはどのような状態でも刀を鞘から抜いて素早く切りつける、いわゆる「居合抜き」という剣術を言い換えた言葉です。前触れもなく、いきなり事を起こす意味で使われます。


「極めつけ」は、正しくは「極め付き」。刀剣などの骨董品で、鑑定で高い評価を受けた物は「極札きわめふだ」という札が付けられたことから、定評のあるもの、確実であるものを意味します。「折り紙付き」とほぼ同義。


「切羽詰まった」は、身動きが取れず、追い込まれて為す術がなくなること。刀のつばを固定する金具・切羽せっぱが外れて、鞘から刀が抜けない状態から生まれた言葉です。


「急場しのぎ」、この言葉の元は「急刃きゅうばしのぐ」。戦場で刀の刃が欠けた時に、ありあわせの研石で磨いて、とりあえず刃をつける様から、「間に合わせの対応でその場を切り抜けること」を指します。似たような言葉に「付け焼き刃」があります。


「代わりばんこ」は、刀というか、製鉄が発祥。「番子ばんこ」と呼ばれる三人一組で交代しながら、昼夜問わずに作業したことから「かわりばんこ」という言葉が生まれたそうです。


「太刀打ち」は、刀剣の「長太刀ながたち」を使って競う様子。そこから、張り合ってぶつかるというのが本来の意味ですが、多くは「太刀打ちできない」など、「長太刀を使う相手には勝つことができない」=「まともに張り合ってもかなわない」という敗色濃厚の意味で使われます。


「自腹」は「自腹を切る」から。武士が責任を取る時、刀で切腹をしていたことから、「自らお金を出して責任を取る」意味になった……と言われていますが、「自腹を切る」と「身銭を切る」という言葉を混同していることも多く、必ずしも「お金」が絡むことに限らず、自ら責任を取る、という大きなニュアンスが正しいようです。


 ちょっと長くなっちゃったー。

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