画家ルーベンスのマルチタスク
名作アニメ「フランダースの犬」最終回で、ネロが最期に見たのは、ルーベンスの天使の絵「聖母被昇天」でした。
ルーベンスのフルネームは、ピーテル・パウル・ルーベンス。
多くの国の貴族や要人から製作依頼を受け、画家として大成功した彼の作品は、この時代の画家にしてはかなり多く、二千点を超えるそうです。
なぜこんなに多くの絵を残すことができたのか。
それは、現在でいうところの「漫画家」と「アシスタント」のように、ルーベンスが構図を考え、下描きをしたあと、弟子に色塗りの指示を出して、完成させていたんですね。
大規模な工房システムの確立。
ルーベンスが実際に絵を描いた割合で、作品の値段が変動したらしいので、このシステムは周知の事実だったようです。
「自分ひとりで描いてなかったのかよ」とツッコミを入れる前に、ルーベンスについてもう少し詳しく紹介します。
ルーベンスは画家の面もありましたが、本職は外交官。
語学に堪能で7カ国語を流暢に話し、交渉も得意。
法律の知識もあって、絵画の売買契約には「公証人」としてのスキルも生かしました。
工房を経営していたり、美術品のコレクターだったり、絵画だけではなくデザイナーとして書物の装丁も手がけるなど、その活躍は八面六臂。
中でもすごいのは、絵を描きながら、口述筆記で弟子に手紙を書かせたり、時には弟子に小説を朗読させて「耳で本を読んだり」しているのです。アウトプットとインプットを並行するなんて、人間業とは思えません。
聖徳太子は十人の話を同時に聞いたという逸話がありますが、それに匹敵するマルチタスクではないでしょうか。
忙しいからこそ、弟子に任せるシステムを構築して、工房で大量の絵を作るきっかけになったのかもしれませんね。
ちなみに、ルーベンスはふくよかでぽっちゃりした女性が好みで、絵のモチーフとして何度も登場させています。
それが語源で、「ルーベンスの絵画風のふくよかな女性」を、オランダ語では「Rubensiaans」と呼ぶそうです。




