マッチよりもライターが先に発明された
雪が降る中、「マッチ買って下さい……」と、少女が街頭でマッチを売っている。
アンデルセンの書いた童話『マッチ売りの少女』のワンシーンです。
マッチが誕生したのは、19世紀のヨーロッパ。
1826年に発明されたばかりの頃は、「砂紙」と呼ばれる紙やすりのような紙に挟んで、強く引き抜いて点火していました。ただ、質が悪かったせいか、なかなか火が点きにくいという欠点もあったようです。
その後、1831年に、「砂紙」を必要としない、どこに擦っても点火するという改良版マッチが開発されました。
原料として使われていた黄燐には強い毒性があり、製造工場の作業員が病気になる、その毒が殺人や自殺に使われる、さらには発火しやすくなったことで、ちょっとした摩擦や衝撃で火災事故が発生するなど、なかなか危険なものであったと言われています。
しかも、当時の安価なマッチは箱入りではなく、薪のようにマッチの束をヒモなどで縛って、ひとまとめに売っていました。
『マッチ売りの少女』の絵本などでは、現代のように小箱に入ったマッチではなく、ヒモで縛って束で売っている絵が描かれている方が多いようです。
小さな子供が、そんな危ないものを扱っていたのか……。うっかり転んで地面に擦りつけでもしたら、全身火だるまになりそうな。
『マッチ売りの少女』が出版されたのが1848年。
それから7年後、黄燐ではなく赤燐に代わった安全マッチが発明され、普及することになりました。
マッチは摩擦で火を点ける原始的な方法なので、ライターと比べたら「マッチの方が先に発明されたんだろうな」と思いがちですが、意外にも発明されたのはライターの方が先でした。
厳密に言うと、ゼンマイと火打石と鉄を使った、ライターの原型。それを開発したのは、1772年、あの平賀源内です。
その後、現代にも通じるオイルライターの第一号は、1900年に入ってから、オーストラリアの科学者、カール・ヴェルスバッハが開発しました。
マッチが誕生するより50年以上も前に、既にライターの原型を日本で作っていたことになるのです。
マッチやライターに馴染みが深いのは、やはり喫煙者の人たちでしょうか。
昔の映画の中で、大人の男性が口にくわえたタバコに、慣れた手つきでシュッと火を点けるというのは、子供心に「格好良い仕草」として記憶に残っています。
ですが、分煙化の進む現代社会の中では喫煙者は阻害される一方ですし、今時タバコを吸う不良なんて絶滅危惧種な気がします。
タバコを嗜むオトナのダンディズム、ってのも「教育に悪い」という理由でフィクションの中ですら消えていく世の中ですからねえ。
世知辛いったらありゃしない。




