「天ぷら」は西洋料理?
フジヤマ、ゲイシャ、スキヤキ、テンプラ……外国人が覚えていそうな日本語の羅列ですけれど、実は和食代表の「天ぷら」は日本発祥の料理ではありません。
諸説ありますが、16世紀に、ポルトガルの宣教師から江戸に伝わった西洋式の揚げ物が発祥らしいです。
教会から伝わった料理ということで、スペイン語の「寺」を意味する「テンプロ」から、あるいはポルトガル語の「調理・調味料」を意味する「テンペロ」、他にもポルトガル語の「四季に行う斎日」を意味する「テンポーラ」が、「てんぷら」の語源になったと言われています。
江戸時代の1669年の書物『食道記』に、「素材に衣をつけて、油で揚げる」料理として、「てんふら」という名称が文献に登場します。
最初は屋台で、揚げたての品を串に刺して立ち食いする、庶民の文化だったようです。幕末近くになって、天ぷらは店舗で提供されるようになり、明治に入ると高級料亭などで食べられるようになりました。
高級なお座敷で、目の前で揚げてくれる天ぷらには、衣に卵黄を多く使って黄色っぽく仕上げた「金ぷら」、対照的に卵白を多く使って白っぽく仕上げた「銀ぷら」など、変わり種もあったようです。
変わり種の天ぷらと言えば、私、天ぷら専門店で「アイスクリームの天ぷら」を食べたことがあります。
空気を含む衣で素早く揚げると、衣が断熱層となって内部に熱が伝わるのが妨げられ、高熱の油の中でもアイスクリームが溶けないのです。揚げた後、すぐ食べないと、内側に熱が伝わって溶け出してしまいますが……。
天ぷらの衣の食感の奥に、冷たく甘いアイスクリーム、という不思議な口触りと味わいでした。




