「マロン」は「栗」ではない
秋の味覚として定番の「栗」。
栗といえば、モンブランやマロンケーキとか好きですよ、という人もいるかもしれません。
実はこの「マロン」という言葉、英語で「栗」を意味していると誤解している場合が多いのですが、そうではないのです。
フランス語で「marron」 は、 「セイヨウトチノキの木の実」、 いわゆる 「栃の実」のこと。
マロンケーキが日本に入ってきた時、職人が作ろうとして「栃の実」が手に入らず、よく似た「栗」 を代わりの材料として用いて、名前はそのまま「マロンケーキ」としたことから、 日本の中で「マロン」=「栗」という認識が広まったようです。
英語で「マロン」というと「ザリガニ」を意味しますので、ご注意を。
日本人「私、マロンが好きなんだ」
アメリカ人「えっ……マジで? あのマロン? 変わり者だね」
日本人「なんで? マロン、おいしいけど?」
アメリカ人「食べるの!? ちゃんと煮てからだよね?」
日本人「マロンを煮るの?」
アメリカ人「それにしても食べるなんて。水槽で飼うならまだしも」
日本人「アメリカでは水槽でマロンを飼うの!?」
……みたいな、かみ合わない会話になってしまいます。
栗は英語で 「chestnut」 と言います。
建築資材の床材でも「チェスナット材」ってのがあります。
焼き栗は「ロースト・チェスナット」 ですし、栗まんじゅうに入っている栗の餡は「チェスナッツ・クリーム・ペースト」。栗ご飯は「ライス・クックド・ウィズ・チェスナッツ」 です。そこまで強引に、日本独自の調理を英語で言う必要はないんですけど。
小学校から帰ってきた子供が、 母親から「今日の晩御飯は、アンタの好きなライス・クックド・ウィズ・チェスナッツ(栗ご飯)よ」とか言われたら、子供はなんだか、正装して食べなきゃいけないような気がしてきます。
「モンブラン」の方もフランス語です。
「mont blanc」 で 「白い山」を意味します。 アルプスの山でも「モンブラン」ってありますもんね。
さて、秋を英語で言うと 「autumn」 ですが、 「fall」 という言い方もあります。
春は「spring」、 夏は 「summer」、冬は「winter」……どうして秋だけ呼び方が二つあるのか。
私が中学生だった頃、英語担当だった中年男性教師に「どうしてなんですか」と尋ねたことがあります。
その教師はこう言いました。
「オータムって呼び方に、飽き (秋) たから、フォールって呼んだんだろう」
ダジャレオチ。
この時の中年教師の「してやったり」なドヤ顔、大人になった今でも忘れないんだよなあ。
実際は、 「オータム」 がイギリス英語、 「フォール」 がアメリカ英語で、二通りあるから、だそうです。




