「まごの手」は「孫の手」ではない
「まごにも衣裳」ということわざを「おじいちゃん・おばあちゃんが孫に新しい服を着せて喜んでいる」意味だと勘違いしていた、というエピソードを何かで読んだことがあります。
正しくは、「孫にも衣裳」ではなく「馬子にも衣装」。
「馬子」とは、昔あった役職で、馬の世話をし、荷物を馬に乗せて運ぶ専属係。
身分が低いため、みすぼらしい恰好をしている「馬子」でも、良い服を着せればそれなりに見える、というところから「どんな人間でも身なりを整えれば立派に見える」という意味です。
背中がかゆい時に使う「まごの手」も、現在は「孫の手」と表記されることが多いようですが、由来に「孫」は関係ありません。
古代中国の書物「新仙伝」に登場する仙人の女性・麻姑の名前から来ています。
美しい仙女・麻姑は長く爪を伸ばしており、別の仙人が「その手で、かゆい背中をかいてもらったら気持ち良いだろうなあ」と言ったことが由来となっているそうです。
このことから、「かゆいところに手が届く」=「物事が思い通りにいく」ことを「麻姑掻痒」と言う故事ができました。
「靴の上から、かゆい足をかこうとしても、うまくかけない」=「はがゆく、もどかしい」という対義語の「隔靴掻痒」という言葉もあります。
でも、まあ……おじいちゃんやおばあちゃんが、背中がかゆい時に、孫の小さな手でかいてもらったら、それはそれで幸せでしょうけどね。




