入学式
最近テストが近くなっていることに気が付き慌てて課題に勤しんでいるのでもしかしたら更新頻度が低下するかもしれません。
入学式前日の早朝
僕はスカイ学院の理事長室に呼び出されていた。
「単刀直入に言うが、学年主席の君が学年代表の挨拶をしてくれないか?」
「嫌です」
渋いというかダンディーなおじさん、もとい理事長の頼みをバッサリと断る僕。
理事長室は高級そうなソファーや机、椅子やテーブルがあり赤い絨毯が敷かれている。そこには現在理事長とその秘書の女性と僕がソファーに向かい合って座っていた。
因みに秘書は理事長側に座っている。
「そんなに急に言われても困ります。そもそもなんでこんな前日にお願いしてくるんですか?そんなの普通は合格通知と一緒にそういう話があると思うのですが」
他の学院がどうかなんて全くもって知らない根も葉もない情報ソースなので完全に言いがかりと言われてもおかしくないことを口にしてしまう。
「こっちもこっちでやることがあってね。それに文章はこちらが用意したものを見ながら声に出して読んでくれればいいだけだし簡単だろう?」
「すみません僕には失敗する未来しか見えないので辞退させて頂きます」
僕はこの学院で霧からの招待状を貰えさえすれば後は平穏な学院生活というものを送りたいだけなのだ。向こうの世界では勇者パーティや四天王をやってたのでこういった普通の暮らしというものに興味があったのだ。無理に目立つ必要なんてどこにもない。
只でさえ僕は青みがかった白髪碧眼でさらにこの学院の男子生徒というだけで注目を浴びている。容姿のせいでもはや今更かもしれないが僕は元々目立つのが好きではないのだ。
もし僕がそんなこと気にしない派の人間(吸血鬼)だったら眷属と普通に出かけている。
因みに誰が特権を持っているか、なんて公開されていないし、入試の順位も同様なので今のところ最低限の注目度なのだ。
まぁ特権が与えられていることくらい霧の場合は簡単に分かる場合が多いのだが、我が優秀な眷属は基本的に寮生活でのサポートを頼んでいるし人目につかない様にしてくれる為なんの問題もない。
「君になら、と思ったのだがね。仕方ない代理を立てることにするよ」
「ありがとうございます」
翌日、つまり入学式当日。
僕は緑をベースにした制服を纏い鏡を見て身だしなみを整えていた。
「中々様になってるじゃない。流石私を召喚しただけのことはあるわ」
僕の頭の上に乗っかって偉そうなことを言っているのは黒い左翼と白い右翼を持つ使い魔であるルーエルだ。
「そうか、ありがとな。でもなんでそんなに偉そうなんだよ。別に構わないけど」
「ほら、支度が終わったら早く行くわよ!」
「分かったよ。おい!髪引っ張るなよ」
早くしろと言わんばかりに僕の髪を進行方向に向けてルーエルが器用に引っ張る。あくまで体は熊系なのでこんな器用なことは難しいはずなのに難なくこなすルーエル。全くもって無駄な技術である。
部屋を出た時に丁度シノンやシオン姉様に会ったので一緒に学院に向かう。
この学院はクラスで制服の色が変わり霧が緑、嵐が赤、雨が青、雲が黄となっている為僕らの制服の色はバラバラだ。
「すっかりルーエルに振り回されているじゃない」
「ほんと、じゃじゃ馬だよ。今のところ役に立った経験がないし只の手のかかるペット感覚だね」
シオンの言う通り僕はことあるごとにルーエルに振り回されている。
例えば辺境伯の屋敷に戻った時、使用人にちょっかいをかけてそのお詫びとして僕が何か贈り物をして女性だった場合、眷属の殺意を抑える為に血を提供するということがあった。でも本当に困ることは絶対にしないので今では只の愛情表現だと思っている。あれ以来僕に多少の我が儘を言うくらいなので可愛らしいものだろう。
「ペットって何よ!この私がペットなんて信じられない!せめてパートナーでしょ!?」
コイツはどの口が言うんだ?
「パートナーって言葉の意味知っている?お互いを助け合う存在のことを指すんだ。僕は助けたことはあるがその逆はないと記憶しているけど?」
「………私だって役に立つのよ!今に見てなさい!すっごい活躍をしてやるんだから!」
「……期待しとくよ」
一応珍しい使い魔で強そうな種族だから役に立つのは分かるのだが性格がお世辞にも良いとは言えないので彼女との会話はおざなりになってしまうことが多々ある。そして今回も適当な返事をしてしまう。
そうこうしている間にスカイ学院に到着して体育館へと足を運び入学式に参加する。
新入生代表挨拶は次席の魔王の息子がしていた。彼は黒い瞳に黒い髪を持つ中性的な美少年だ。確か双子の姉がいたはずだ。
魔王とは魔族の王の総称で決して悪い印象だけもつことはこの世界では厳禁だと学んだ。何故なら現在の魔王とは友好平和条約を結んでいて友好の証として双子の子供を預けるということになっていたと記憶している。
挨拶が終わり、立ち去る時に一瞬こちらを見た気がしたがもしかしたら近くの騒いでいる女子生徒の誰かを見たのかもしれない。のだが
『今あの人私達のことを見たわよ』
念話で得意気にそう伝えてくる。
念話とは通常はスキル持ちでしか出来ないことなのだが使い魔ならスキルなしでも出来る。使い魔は現在、魔法が使えない人にとってのパートナーと言える存在なので地位の高い人は必ずと言って良いほど優秀な使い魔を使役している。
『了解。警戒しておくよ』
腐っても天使と言ったところなのかコイツは感覚がとても優れている為こういった何気ないアドバイスが役に立つことが……いつか来ると信じてる。因みに的中率は今のところ五分五分。
新任の先生の紹介があった後入学式は終わりそれぞれのクラスへ移動する。
教室に着いて少ししたら先生と思われる薄紫のセミロングの髪に青い瞳を持つ女性が前に立つ。
「私がこのクラスを担当するミシュノ・ラナーフルよ。これから宜しくね」
この学院は基本的に三年間担任の先生が変わらない。そもそもクラスにコンセプトがあるのだから指導する先生もコロコロ変わってしまうのはあまり良くないのだろう。
「因みに私まだ18歳で初めての先生だから一生懸命頑張るけど色々サポートしてくれたら嬉しいな」
それから軽く自己紹介があって気づいたことはこのクラスには男子が僕を含め二人しか居ないということだ。ざっとこの学院の男子生徒の人数を入学式の間にレニーナに調べて貰った結果5人くらいしかいなかった。そう考えると多いと思うので贅沢は言えない。
そのあとは時間割り表を配られたり、教科書を配布されたりして解散となった。
寮へ向かうと、どうやらほとんどの生徒が寮を使う様で女子寮はかなり混雑していた。男子寮は元々この学院の生徒が数人程度しか居ないしほとんどの生徒が寮を利用しない為いつのまにか女子寮と合併してしまったらしい。学院側よ、それでいいのか。
合併とはいえしっかりフロアが別れており男子生徒は6階、つまり最上階だ。
因みに各フロアに40部屋がありこれはクラスで別れていて1階には食堂と銭湯がある。流石に銭湯は時間をしっかりと区切られている為間違いなど起こらないが過去に無理やり女子生徒が男子生徒を犯したという事件があった為男子生徒は滅多に寮を使わなくなったらしい。それでも何故か一応午前中は混浴となっている為気を付ける必要がある。
暫くして手続きが終了したのでそれぞれの部屋に向かっていく。
部屋は3Lと1人暮らしにも関わらず広い。家具が何もないという点を除けば普通の部屋だっただろう。
「見事なまでに何もないな」
後で知ったことだが、これは男子生徒の部屋限定でそうなっているだけで女子はしっかり家具も付いているのだとか。
「ねぇレニーナ、ナノルルに僕の家具を作ってくれる様に手配してくれない?」
「わかりました」
今月は4月なのでNo.4のレニーナの番なのだ。彼女は幽霊で素早さ特化のステータスを持っている為偵察とかにはとても役に立つ。今回は只の伝達係だけどね。
恐らく家具が届くのは1週間後だと思うのでそれまでの間眠る為に僕の宝物庫から青いペンダントを取り出した。
このペンダントの名称は無重力のペンダント。その効果は名前の通り装備した者を無重力状態にする。これはペンダントの他にもリングや指輪、イヤリングがあり無重力シリーズと言われていて以前四天王をやっていた時に集めていたというか勝手に全て集まったものだ。他にも色々有用の物を眷属たちが集めてきてくれるので僕の宝物庫には珍しい物が沢山ある。
僕は次に宝物庫から一本の鎖を取り出す。
この鎖の名称は空間固定の鎖といい、指定したものの動きを二十四時間以内で指定した時間だけその空間に固定する能力を持ち指定した時間が多いほどインターバルの時間も比例して等しく増える。
それらを使って僕は空中で寝るつもりだ。身動きが取れなくなるが魔法は使えるし最悪レニーナに守って貰うことだって出来る。
流石に掛け布団までは宝物庫には入っていない為柔らかくて肌触りもいい服装に着替えて寝ることになるが床で寝るよりはマシだ。
時刻はまだ夕方なので寝るには早すぎるが準備くらいはしておくべきだろう。
さてと、確かシノンとシオンも寮のはずだし少し遊びに行こうかな。
季節の恩恵を授かりし者たちという作品より投稿頻度が多いのが良くないかな?と思っているのでもしかしたら投稿頻度を変更するかもしれません。が、一章が終わるまではこのままでいきます。