6 誘拐図鑑
あれから数日が経った。
俺はいつもどおり、バイトだった。
「もう金曜日ですね、先輩。週末は何かするんですか?」
「明日はバイトだな。」
「日曜は?」
「一応、セイラと出かける。」
「えぇーいいなー!俺もデートしたい。」
「例の子誘えばいいじゃん。ってか、名前何て言うんだよ。」
「あぁ、ほのかですか?なかなか手強くて。」
「お前に手強い相手なんているんだな。」
「そりゃ、いますよー。」
「そういうのは意外に、勢いに任せてみるもんだぞ」
「先輩、他人事過ぎますよー。これで振られたらどうするんですかー。」
「なんだよ、そんな余裕ブッこいてたら他の男に取られるぞ。」
「厳しいなー先輩。いずれはちゃんと告白しますって。」
「でもとりあえず、デート誘ってみたら?日曜は定休日だし、大学も休みだろ?」
「まぁそうですけど。」
「はい、じゃあ電話!」
「え、今ですか?」
「もちろん。早くしないと先約入っちゃうよ。」
「でも・・・」
「いいから。早く!」
「わかりましたよー。」
しぶしぶ、竹盛が電話をかける。
プルルルプルルル
どうやら電話に出たようだ。
「あの、今度の日曜だけどさ、よかったら食事でもどう?」
「うん」
「うん」
「そっか、わかった。」
「じゃあ、またね。はーい。」
ガチャ。
顔が暗い、雲付きが怪しい。
だめだったのか。
「やったー!うまくいきましたよ。」
急に満面の笑みを浮かべる竹盛。
「おぉ、よかったじゃん。」
「いやー勇気出してよかった。先輩、ありがとうございます。」
「まぁ、お互い楽しもうや。」
「はい。」
そうこうしている間に、休憩が終わり。
バイトへ戻る。
バイト中、日曜日どこへ行こうか考えていた。
まぁ、無難にドライブして、海でも行って、
帰りにご飯食べるって感じでいいか。
という結果になった。
そして、バイトが終わり、家に帰る。
すると電話が鳴る。
着信を見ると、カズからだった。
「カズ。どうした?」
ハァ、ハァ。
荒い息が聞こえてくる。
「ちょ、カズ?大丈夫か?」
「ケンちゃん。助けてくれ。」
「どうした?何があった?」
「今ヤバイ奴らに追われてるんだ。とにかく、今からそっちいってもいいか?」
「あぁ、もちろんだ。外で待ってる。」
「あぁ。」
電話が切れた。
なんなんだ一体。
そして、俺は外でカズを待っていた。
すると通りの向こうから、辺りを見渡しながら、カズが走ってきた。
「おい、カズ。何なんだ一体。」
「とりあえず、家の中入れてくれ。」
そう言って、ひとまず部屋の中に隠れた。
「あら、カズ君。久しぶりねー。どうしたのそんな慌てて。」
「お母さん、久しぶりです。ちょっと、急いでて。失礼します。」
そう言って、俺とカズは急いで俺の部屋に入った。
「やべぇんだ。」
カズの手が震えている。本当に怯えているのがわかった。
「どうした。カズ、落ち着け。何があった?」
「実はなケンちゃん。俺借金してんだ。」
そうか、昨日ケンが一瞬暗い顔をしたのは、そういうことだったのかもしれない。
「じゃあつまり、借金取りから逃げてるってことか?」
「あぁ。でもあいつらただの借金取じゃねぇんだ。」
「なんだよ。どういうことだよ。」
「道東金融ってしってるか?」
もちろん知ってる、俺が借金してたところだ。
「あぁ。そこから借りてるのか?」
「そうなんだ、でもあいつら、俺がなかなか返済しないからって、俺を誘拐しようとしたんだ。」
まただ。俺の時もそうだった。
俺がなかなか返済しなかった時、誰かが俺を誘拐した。その後、あのジョーカーって男に出会ったんだ。
やっぱり、あいつはあの道東金融と繋がっていた可能性が高い。
「とりあえず、警察に連絡しよう。」
「もうしたよ。でもあいつらまともに取り合ってくれない。結局は借金したやつが悪いんだよ。」
「じゃあ、お前このままでいいのか?」
「いいわけないだろ、アリスの身も危ないんだ。」
「じゃあ警察に頼るしかないだろ。大丈夫、知り合いの人がいる」
そう言って俺は、高松刑事に電話をかけた。
「もしもし、高松刑事ですか?」
「ああ、北川君。」
「実は今、俺の幼馴染が道東金融の奴らに追われてるんです。」
「なんだって。」
「それで、こいつ誘拐されそうになって。」
「それは危険だ、すぐそっちに向かう。今どこにいる?」
「今俺の部屋で隠れてます。」
数十分後、刑事さんがうちに着いた。
「どういうことなんだ?」
「こいつが、幼馴染のケンです。」
ケンが軽く会釈をする。
「こいつも道東金融に借金をしていて、なかなか返済しないもんだからって、誘拐されそうになったんです。つまり、ジョーカーと、道東金融はやっぱり繋がってると思うんです。これ、俺の時と全く同じシチュエーションなんです。」
「なるほど。それで、道東金融の奴らは今何処に?」
「カズ、知ってるか?」
「すいません。わからないです。杉寺駅の近くの路地裏を歩いていたら奴らがやってきて、そのまま抵抗して走ってここまで逃げてきました。」
「とりあえず応援を呼んでみる。落ち着くまでは、ここで待機しておいてくれ。」
「はい。」
そう言って高松刑事は家を出た。
ドアを開けると家族が心配そうに、部屋の外で待っていた。
「ケンちゃん。何かあったの?」
「ごめん、みんな。ちゃんと後で説明するから。ちょっとカズがトラブルに巻き込まれちゃって。」
「そうか、健人。気をつけるんだぞ。」
「ああ、父ちゃん。わかってる。」
扉を閉め、カズを見た。少しは落ち着いたようだ。
「とりあえず、なんか食うか?」
「ああ。」
俺は部屋にあった、カップラーメンの封を開け、お湯を沸かした。
「実はな、カズ。俺も借金してたんだ。」
「さっき、刑事さんに話してたな。」
「というよりも、友達の代理人になっちまってよ。その友達が飛んじゃって。それで結局、その負担が俺に回ってきたってわけ。」
「昔から、お前そういうところあるよな。友達思いっていうか、お人好しっていうか。」
「はは。そうだな。それで、借金をしてたのがカズと同じ道東金融なんだ。」
「そうなのか。」
カズの顔つきが変わった。
「あぁ、それで俺は誘拐された。」
「えっ。」
カズは驚いた表情を浮かべる。
「だ、、、大丈夫だったのか。」
「いや、よくわからない白い部屋に連れて行かれて、」
「白い部屋?」
「ああ、全く何もないただの部屋だ。」
「それで、どうなった?」
「どうもしない。その後スーツを着た黒髪の男が現れた。ジョーカーって奴だ。
そして、俺は意識を失い。数日後、目が覚めた時には病院のベットの上だった。」
「それで、結局何もされなかったのかよ。」
「いや、実はな・・・」
バタン。
ドアの開く音がする。
「大変だ、カズくん。」
高松刑事が戻ってきた。
「どうしたんですか?」
カズが立ち上がる。
「実は、道東金融の奴らが君の家に向かっているそうだ。」
かずの顔が一瞬固まる。
「ま・・・まずい。家にはアリスしかいない。」
「カズくん、急いで向かおう。」
「はい。」
「でもお前、あいつらに捕まったら・・・」
「なんだよ、つかまったらどうなるってんだ。」
「そ・・・それは」
「二人とも早く。急いで。」
俺は答えられなかった。どうなったか、すぐに言うことができなかった。
俺たちは急いで、刑事さんの車に乗り込んで、カズの家に向かった。
車を降り、辺りを見渡すが、まだ奴らは来ていないようだ。カズが急いでドアの鍵を開ける。
「アリス!アリスいるか?」
「はい。カズ帰ったのね。おかえり。」
「よかった。」
そういって、アリスを抱きしめる。
「ちょっと、どうしたの?」
「あれ?お客さん?あら、ケンちゃんじゃん。久しぶり」
「おう、アリス久しぶりだな。」
アリスのお腹には確かに、赤ちゃんがいた。
「それで、隣の方は?」
「警視庁の高松と申します。」
「え、刑事さん?どうして刑事さんがうちに?」
「すまん、アリス。話すと長くなるんだ。とりあえず今はここから逃げよう。」
「え、ちょっと。どういうこと?」
アリスの腕を引っ張り、カズが外に出ようとする。
しかし、外にはすでに道東金融の車が止まっていた。
「くそ、あいつらもう来てる。」
「カズ君、裏口はないのか?」
「庭に出る窓があります。」
「そうか、そこから逃げよう。」
「刑事さん、応援はまだですか?」
あまりにも遅かった。
「もう直ぐ来るはずだ。とにかく今は、逃げるしかない。あいつらは銃を持っている可能性が高い。危険すぎる。」
裏の庭に出て、塀を登る。アリスは赤ちゃんもいるため、登るのに苦戦していたが、カズが手を貸しなんとか登り切る。
そして、みんなで大通りへ向かい走る。
すると、後ろの方から、スーツを着た男たちが追いかけてきた。
「くっそ、あいつら、もう来やがった。」
カズが叫ぶ。
「みんなこっちだ。」
刑事さんが先頭を切り、みんなを誘導する。
とにかくみんな必死で走り、なにやら異様な雰囲気を放つ建物に隠れた。
「みんな無事かい?」
みんなが返事をする。
「ここって?」
アリスが不安そうに尋ねた。
「多分ホテルだと思う。」
「ホテルってこんな感じだっけ?ケンちゃん。」
「おい、カズ大体わかるだろ。ラブホだよ。」
「なるほど、それでこんなエロい雰囲気なのか。」
「そんなこと言ってる場合かよ。」
「仕方がない。とりあえず、今日はここに泊まろう。」
みんなの視線が高松刑事に集まる。
「え、ここに?」
「仕方ないだろ、今外に出るのは危険すぎる。」
確かにそうだ。危険すぎる。
あいつら、手に何かを持ってた。多分拳銃だろう。
男3人に妊婦が1人。異様な光景だが仕方がない。今日はここに泊まろう。
そして俺らは、部屋に入り、作戦を考える。
「刑事さん、警察の応援はどうなっているんですか。」
「正直ちゃんと動いてくれそうにない。実際に道東金融の奴らがもっと大きく動けば話は別だが、そういうわけでもない。ただあいつらは俺たちを追いかけているだけだ。それに、カズくんの誘拐も未遂に終わっている。だから、証拠がないんだ。」
「でもあいつら拳銃持ってました。」
「ちょ、ケンちゃん、本当か?」
カズが驚く。
「ああ、はっきりとは見えなかったが、手に何かを持ってた。あの形状からして拳銃で間違い無いと思う。」
「とりあえず、今はここから逃げる方法を考えよう。」
「ねぇ、何の話してるのかさっぱりわからないんだけど。」
と、アリスが少し苛立っている。
「ごめん、アリス。実はな、」
そういって、カズがこれまでの経緯を説明し始めた。
「え、カズ。借金があるの?」
「ああ、今まで黙っててごめん。」
「どのくらい?」
「それは・・・」
「はっきり言ってよ。今更隠したところで意味ないでしょ!!!」
「500万。」
「500万!?」
ついつい俺も大きな声を出してしまった。
「カズ、なんでそんなに借りたんだよ。」
「経営が苦しくて、お前も店に来てわかっただろ。ここんとこ客足が全然なくて、自分の店を保つために仕方なかったんだ。きっと、もう少しすれば、景気が良くなって、客足も増えると思った。だから、それまでなんとかして、店を守りたかった。」
「もしかして、昨日俺逹が店を出た後に、来たスーツの奴らって。」
「ああ、道東金融の奴らだ。」
「やっぱりそうだったか。その時はなんて言われたんだ。」
「いつものように利子だけでも払えって。
そんであいつら、アリスの名前まで出して、脅してきたんだ。」
「刑事さん。これって犯罪ですよね。」
「ああ、立派な恐喝罪だ。おそらく、あの金融会社は利子も法外な量を取り立てているに違いない。しかしまだ、立証となると難しいだろう。」
「くっそ。どうすればいいんだ。」
カズが怒鳴る。
「落ち着けってカズ。ここで怒鳴ってもしょうがないだろ。とりあえず、最善の策を考えよう。」
そうだ。あの公園に行けば、あのおっさんに会えるかもしれない。
だが、こんな状況で現れるのか。
だからといって、ここでぐずぐずしているわけにはいかない。
「少し様子見てきます。」
「ちょっと、お前それは危険だろ。」
「そうだよ、ケンちゃん。それは危険すぎる。」
刑事さんが俺の腕をつかむ。
「その通りだ、健人君。それは危険すぎる。」
「刑事さん、カズ、アリス。大丈夫。あいつらが狙っているのは、カズとアリスだ。」
「でも健人君。あいつらは君の姿も見ているかもしれない。」
「刑事さん。俺は大丈夫です。それに仮に捕まったとして、俺は一度誘拐されてます。
この状況からして、俺を誘拐したのはあいつらである可能性は高いと思います。なので、再び俺が誘拐される可能性は極めて低いはず。」
「え、そうなの?」
とアリスが驚く。
「カズ、後でアリスにも説明しておいてれ。」
「ああ。」
「刑事さん。何かあったらすぐに連絡しますから。」
そういって、刑事さんの腕を振りほどき、俺はわずかな可能性をかけて、あの公園へ向かった。
「おい!いるのか、ジョーカー!」
返事がない。
「くそ。いないのか。」
「あら、今日は気性がいつもより荒いですね。」
「テメェ。カズを誘拐して何をするつもりだ。」
「え?何の話ですか?」
「とぼけるな!俺と同じ目に合わせようとしているんだろ。お前が道東金融と繋がっているという事はわかっている。」
「あら、ばれちゃいましたか。」
「そりゃそうだ。俺が誘拐された後、見たのはお前だけだった。」
「目的を言え、お前とあいつらはどういう関係なんだ。」
「わかりました。少しだけ教えてあげますから。そんなに怒らないでください。」
そして、ジョーカーは続けた。
「実は私はある研究をしています。その研究で開発された新薬を実験体へ投与し、その後の経過を観察するのです。」
あの時言っていた実験体とは、そういうことか。
「私は、その実験体を道東金融から買っているのです。」
「ふざけるな。そんなことが許されると思っているのか。」
「どうせあなた方は、借金をして返済もできない、いわばクズじゃないですか。」
くそ、今すぐこいつをぶん殴ってやりたい。
「だから、そんなあなた方を少しでも進化させてあげようという、いわば慈善事業のようなものです。」
「慈善事業だと。ふざけるな。その慈善事業とやらで、どれだけの人間を犠牲にしてきたんだ。」
「研究に失敗は付き物です。ただ、これ以上は企業秘密ですので。でもよかったじゃないですか。北山様の実験はうまくいきました。今も元気に生きてらっしゃる。」
それで、次はカズが実験体ってわけか。
ふざけやがって。
「ちなみに、刻山様の件ですが・・・」
「刻山?龍一の事か?」
「何か聞いてませんか?」
「いや、知らない。あいつがどうしたっていうんだ。」
「なんだ、何も聞いてないんですね。彼があなたを売ったんです。友達って、すぐ裏切っちゃうんですね。」
「ど・・・どういうことだよ。あいつが裏切っただと?」
「はい。実は彼の借金は数千万円にまで膨らんでいました。経営が苦しかったのでしょう。毎月毎月、借金が膨れ上がっていきました。そんな時私達は、刻山様では無く、あなたの体に目をつけたのです。あなたは、フリーターで社会貢献をしたことがない。そういうクズが一番実験体としてはふさわしいのです。」
言いたい事言いやがってこの野郎。
「それにあなたはまだ若い。実験が成功する可能性が格段に上昇する。そう判断し、私はあなたに借金を押し付られるよう道東金融を説得した。刻山様には、借金を帳消しにする代わりに、身をくらまし、借金をあなたに押し付けるという約束をさせて頂きました。」
「な・・・なんだと。あいつがそんな事を。」
「それに、借金数千万円をいきなり押し付けられるとあなたが逃げたり、自殺する可能性もあった。
だから、あえてあなたの価値に見合った、50万円とさせて頂きました。」
「と、まぁそんな感じです。」
「いい加減にしろよ。こんな事これ以上続けられると思うなよ。」
俺はジョーカーに殴りかかろうとした。
しかし、俺のパンチは当たらない。
すばしっこいヤツだ。
「ちょっと、北山様。落ち着いてください。」
「ふざけるな。カズは絶対に渡さねぇからな。」
「いいんですか?彼には500万円の借金がある。私と道東金融の契約内容は、その人の借金の金額でその人を買い取るというものです。つまり、斧田様の実験がうまくいき、北川様と同じようになれば、借金は無くなる。そうなれば、彼も喜ぶと思うんですがねぇ。」
「失敗する可能性もあるんだろ。そんな危険な場所にカズを連れて行けるかよ。」
「わかりましたよ北川様。今回斧田様に関しては諦めます。彼には子供が出来たそうですね。綺麗な奥さんまでいるそうじゃないですか。」
「てめぇ、どうやってそれを。」
「そういう人は、実験体としてふさわしくない。実験体は一度、死ななければならない。脳を改造しちゃいますからね。生命力の強い人程、成功しにくいんです。なので今回は諦めます。斧田様にも返済頑張ってください。とお伝えください。では、失礼。」
「おい、待て!おい!」
くそ、なんなんだ一体。
まぁでもこれで、あいつは助かるはずだ。
急いで、ホテルへ戻ろう。
プルルルル、プルルルル
電話だ。
「もしもし」
「あ、健人さん。セイラです。あの、明日の件なんですけど、」
そうだった。明日はセイラとデートの約束があったんだ。
「ごめん、セイラ。明日デート行けそうにない。」
「何かありました?今まだ外にいるんですか?」
「あぁ、ちょっとトラブルに巻き込まれてな。」
「大丈夫ですか?」
「ああ、とにかく今急いでるから、また落ち着いたら連絡する。」
「わかりました。」
「じゃあな。」
そう言って電話を切った。
とにかく、今は急いでホテルへ戻ろう。
「ケンちゃん。大丈夫だったか?」
どうやらみんな何事もなかったようだ。
「あぁ。」
「それで健人くん、何かわかったかね?」
「はい。」
そして俺は、さっきの出来事について話し始めた。あの公園で、ジョーカーに会った事。
ジョーカーと道東金融の関係。そして、カズはもう安全だという事。ただ、自分の能力については話さなかった。
「そうか。俺はアリスとこの子に助けられたのか。」
高松刑事の様子がおかしい。それもそうか、この話を聞いて冷静でいられるわけがない。
「実験体だと。ふざけるな!あいつら人間をなんだと思ってやがる。」
高松刑事のこんな表情は見たことない。
「とにかく、今日はここで休んで、明日家に帰ろう。」
「そうですね。」
そして、カズとアリスがベットで、俺はソファ、高松刑事は、床にシーツを敷いて寝る事にした。
よし、電気を消すか。
そう思って立ち上がり、スイッッチを切ろうとした時、カズが言った。
「俺決めたよ。」
「えっ?」
「店売るよ。それで、借金を返済する。」
「カズいいの?あの店はカズの夢だったじゃん。」
アリスが心配そうに尋ねる。
「ああ、いいんだ。あの店はまだ高く売れる。500万円返しても、きっとお釣りは来る。
だから、残ったお金で新しくやり直そう。この子が産まれるまでには、ちゃんと仕事見つけて、それでいつか、アリスのお父さんにも認めてもらう。そしたら、式挙げような。」
「うん。ありがとう、カズ」
アリスの目は涙で溢れていた。
「ケンちゃん、ありがとな。危うく俺、危ない目にあうところだったな。」
「いいって、そんなの。当たり前だろ。」
電気を切り、暗闇の中4人は静かに眠りについた。




