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鬼死回生~酒呑童子の異世界転生冒険記~  作者: 今田勝手
章の六

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第百二十三話/迷子

「お名前、言えますか?」

「エーワ」

「この方はパパですか?」

「ちょっと違った」

メイは立ち上がると、大きく深呼吸する。

「…マンジュ殿、どこにシュテン殿の子がいると?」

じとっとした視線を送られ、マンジュは慌てて言い返す。

「だ、誰だって間違えるっスよ!あんな風に子供が出てきたら…」

「シュテン殿は東から来て、王京より東にあるコーシの街で我々と出会ったのですよ?こんな所に子供がいるわけない事くらい、少し考えればわかることじゃないですか」

「そんな事言って、姐さんも飛んで来たじゃないっスか!」

「それは貴女があんな一大事みたいに言うから!」

「おねーちゃん達、ケンカはダメだよ?」

子供に窘められ、バツが悪くなり二人揃って黙る。

「…こほん。それで、エーワ殿はパパをお探しなんですね?」

「うん、パパ迷子なの」

「迷子はアンタっスよ…」

「お家はこの辺りですか?」

「うーんと、あっち」

エーワが指さした方向には、一つだけ居住区がある。

「じゃあ、行ってみましょうか。お父様も探してるかもしれません」

「…うん」

エーワの手に力が入ったのを、握られたシュテンの掌が感じ取った。

「…………?」





「ここ、ですか?」

「うん、ボクんち」

「しかし…ここは…」

エーワの道案内で一行が辿り着いた場所で、彼が自宅だと指さしたのは、どう見ても瓦礫の山であった。

「エーワ、本当にここであってるっスね?」

「うん、生まれた時から住んでる家だもん。間違えないよ」

メイが手元の瓦礫を拾い上げる。黒い煤が付着していた。

「火事の痕…いえ、これは…爆発痕、ですね」

「…って事は、姐さんもしかして」

メイの顔が曇っていく。

「エーワ殿、家が壊れたのは先月ですか?」

「うん」

「そう、ですか…」

メイは瓦礫を持ったまま視線を上げる。

周りをよく見ると、この辺りはまだ復旧の手が回っていないようで、道路の穴や崩れた建物があちこちに点在していた。

苦虫を噛み潰したような顔のメイに代わり、マンジュが口を開く。

「壊れてからは何処で寝泊まりしてるっスか?」

「うーんとね…えーっとー…?」

エーワは眉間に皺を寄せたまま、首を傾げた。

「あんまりよく覚えてない」

マンジュは腕を組んで唸る。

「…うーんじゃあこうするっス!アタシと一緒にこの辺歩いて、逸れた父親探すっスよ!」

マンジュが手を伸ばすと、エーワは少し悩んでからシュテンの手を離した。

エーワの手を取ったマンジュは、メイの背中を叩く。

「んじゃ、アタシら行ってくるっスから、アニキと姐さんはここで父親が来ないか見といてくださいっス!頼んだっスよ!」

「え?あ、はい!」

「じゃ、行ってくるっス!」

「おにーちゃん、おねーちゃん、またね」

二人が駆け出して行くと、次第に静寂に包まれていく。


「…親、かァ」

「え?」

ふと声が聞こえたメイが顔を上げると、シュテンは先程までエーワと繋いでいた手をじっと見つめていた。

「…シュテン殿?」

「なァ…メイ」

「は、はい?」

いつにもなく神妙な面持ちのシュテンに、メイは少し緊張を感じた。

「…父親ってのァ、なんだァ?」

メイはシュテンと目を合わせたまま、数回瞬きをする。

「シュテン殿は…」

口を開くが、ふと言い留まる。

解答が貰えると思ったシュテンは、フリーズしたメイを見て怪訝そうな顔になる。

ひとつ、咳払い。

「いえ、えーっと…そうですね。父親とは、ですか…」

メイは自身の父親である国王を想起する。

しかし彼はメイ達の父親でありながらも、国民の父でもある。

ただメイに見せる父親としての姿と、国王として民に見せる顔のギャップが大きく、ついメイは笑いが込み上げる。

「…ふふっ」

「……......?」

シュテンの顔が更に困惑に染まるのを横目で感じ、急いで口を開く。

「ええ、そうですね。父親というのは、口では厳しくも優しい目をして、大きな視点でみんなを支える柱のような、そんな家族です」

「…家族」

シュテンが最後に出てきた単語を反芻する。

「家族、かァ…」

その言葉に、メイはドキリとする。

一度は飲み込んだ言葉が、もう一度口をつく。

「その…シュテン殿、シュテン殿の…」

「おーい、アニキー、姐さーん」

ハッとして前を向くと、マンジュがエーワを肩車して手を振っているのが見えた。

メイは平静を装いつつ、ゆっくりと大きく息を吐いた。

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