表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/54

邪眼・魔眼

 前回、Nやんが面白がって話し出したお話です。


「怪談が好きなら「邪視」って話は知ってるかな? 見つめるだけで絶望感に苛まれて良くて錯乱、悪ければ……って話」

「うん、読んだ事は有るよ」

 彼は私の返事に頷いて話を続ける。

「世界中にこれに類するお話は多い。ヨーロッパではイーヴィル・アイ要するに邪眼、エジプトには石化の魔眼なんてのも有る。中国では災いを見分ける水晶眼なんてのも有るね。日本では透視に特化した遠見とおみなんてのも魔眼の係累だろう」

「Nやんは魔眼? と関わった事は有るの?」

 私が訊ねると彼は笑って首を振る。

「無い。ってかそれこそ超常の異能だろうさ。現代でそんな眼を持ってる人間が居るかなんて分からないし想像も出来ない。ただ、逆説的には不思議な目の持ち主は人類の歴史の中には居たのではないか? と思わせられるね」

「どういう事?」

 回りくどいNやんの言い回しに首を傾げつつ訊ねた。


「いやね、その邪眼魔眼の対抗する手段ってのが妙に似通ってるんだよ、分類すると二種類しか無いのさ」

「え? でもその魔眼って結構な種類が有るよね?」

「うん、それなのに対処法は二種類しか無い。目を逸らさせるか見つめ返すか、なんだよ」

 掴みどころのない言葉に強い疑問を感じる。

 邪視の場合は目を背けさせる物や行為を見せる、だったと記憶しているが、見つめ返すとはどういう事だろう?

 そんな私の疑問を読んだ様に彼は話を続ける。

「邪視の場合は汚物や性行為を見せて目を背けさせるって対処法だったね? 見つめるって方は目の形をしたお守りを使うんだよ。中東の邪眼除けのお守りは文字通り目をあしらったアミュレットが使われるし、エジプトではホルスの目って首飾りが有る。インドだと孔雀の羽根とかマラカイト。日本だと蛇の目かな?」

 立て続けに各地の邪眼魔眼とその護符を列挙する。


 Nやんの説明ではヨーロッパの話が完全に抜け落ちているのと日本のが良く分からないので聞いてみる。

「ヨーロッパはキリスト教の影響下だから、神に祈る一択なんだと思うよ。蛇のじゃのめはあの蛇の目傘の蛇の目さ」

「蛇の目傘って何だっけ? 童謡でしか知らないんだけど」

「蛇の目傘は和傘の模様の事なんだけど、本当の意味はちょっと違う。蛇の目を模った模様を書き込んだお札を傘の内側に貼るんだ、これで透視を遮る呪法なんだよ。まあ日本はちょっと独特では有るんだけどね」

「どういう風に?」

 面白そうに、楽しそうに語るNやん。

 まあ、オカルト話を全開で出来る友人なんて中々居ないし、私もNやんとしか怖い話は出来ないし。

 結局、こんな機会でしか思い切り話せないから仕方が無いのだけれど。


「つまりね、世界中の邪眼除けのお守りは神様の力を借りる訳だけど、それは邪眼が魔物か災いだと捉えられていて、日本の蛇の目はむしろ人間に怖がらせて目を背けさせる事を狙ってるのさ」

 曰く、日本以外では邪眼魔眼は魔物や魔女等の討伐対象だと捉え、日本では異能を持つ()()()()()だと認識している、らしい。

「古来より人間はこの異能を恐れ対処してきた訳だけど、これだけ対処法が似通ってくるって事は何となくその異能が本当に有ったのでは? と思いたくならないか?」

「ん~、どうなんだろう? でもなんでそんなに目に拘るんだろう?」

 楽しそうに笑う彼とは打って変わって、乗り切れずに居る私は疑問を投げかけた。

「そりゃ、目だけが非接触で情報を取り込む唯一の器官だからじゃないかな? それだけ目だけが特殊だと古来から考えられていた訳だね」

 味覚は舌で、嗅覚は鼻腔で、聴覚は鼓膜で、触覚は皮膚で接触するのに対して、視覚だけは非接触で感じる五感だから、そうNやんは言い切る。

 これは人間に限った事では無いけれど、確かに視覚だけが特殊に思えてくる話だった。


「もっとも、今日び邪眼魔眼除けなんて考えるよりも生霊の方がお前さんの場合は問題だな」

 そう言うと彼は人差し指と中指を広げて私の頭上に勢いよく突き出した。

 まるで思い切り目潰しをする様に。

 この人は本当にオカルトに関しては容赦がないと思う。

 どこの世界にストーカーの生霊に向かって全力の目潰しを仕掛ける人が居るだろうか?

 一層、この人の方が怖い気がしてきた。

「敵意全開で睨んでくるコイツ、どこのだれか調べるか?」

 そう笑ってのたまう彼に私は頬を引きつらせて頷いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ