第118話 アルバムに残された笑顔
施設「ひだまり」で見つかった一冊の古いアルバム。
そこには、時を超えて今へ繋がる、大切な思い出が残されていました。
優しさの原点が、少しずつ明らかになっていきます。
主人公は、白い花を大切にバッグへしまうと、再び施設「ひだまり」の中へ戻った。
女性は、どこか懐かしそうな表情で一冊の古いアルバムを棚から取り出す。
「これも、見てもらいたかったんです。」
テーブルの上へ静かに置かれたアルバムは、何度も開かれてきたのだろう。
表紙は少し色あせていた。
主人公はゆっくりとページをめくる。
そこには、施設で暮らしていた子どもたちの笑顔が並んでいた。
季節ごとの行事。
誕生日会。
運動会。
どの写真からも、温かな時間が伝わってくる。
「みんな、本当に楽しそうですね。」
女性は優しく頷いた。
「苦しいことも多かったけれど、笑顔だけは忘れないでいてほしかったんです。」
さらにページをめくる。
その時だった。
主人公の手が止まる。
一枚の写真。
そこには、見覚えのある男性が写っていた。
少し若く、今より細身だったが、その穏やかな笑顔に間違いはない。
「あ……。」
主人公は思わず声を漏らした。
「この人……。」
女性は写真を見つめ、静かに微笑む。
「覚えているんですね。」
「あの方は、まだ会社を大きくする前から、毎年ここへ来てくださっていました。」
主人公は写真を見つめ続ける。
ホームレスの姿で出会ったあの男性。
世界的な大富豪。
そのどちらとも違う、自然な笑顔だった。
子どもたちに囲まれ、一緒になって笑っている。
「誰にも名前を言わず、毎回たくさんの靴や文房具を届けてくださったんです。」
「そして最後には、必ず子どもたちと同じご飯を食べて帰られました。」
主人公は胸が熱くなった。
「……あの人らしい。」
写真を見ているだけで、あの優しい笑顔が浮かんでくる。
さらにページをめくると、主人公はもう一枚の写真に目を奪われた。
一人の若い女性が、小さな子どもへ黒糖飴を手渡している。
どこか見覚えのある横顔。
「……。」
主人公は息をのんだ。
女性は主人公の表情を見て、小さく頷く。
「その方のお名前は分かりません。」
「でも、毎年黒糖飴を持ってきて、子どもたちへ配ってくださいました。」
主人公は写真へ手を伸ばす。
優しい笑顔。
どこか懐かしい眼差し。
「母さん……なのかな。」
確信はなかった。
しかし胸の奥では、不思議と涙が込み上げてくる。
女性はアルバムを閉じると、一枚の封筒を差し出した。
「これは、その方が最後に残していかれた物です。」
封筒には、こう書かれていた。
『優しさを忘れないあなたへ』
主人公は震える手で封筒を受け取った。
その中には、まだ知らない過去が眠っている。
そんな気がしてならなかった。
【今回のポイント】
・施設「ひだまり」の古いアルバムを閲覧
・若き日の大富豪が施設を支援していたことが判明
・主人公の母と思われる女性の写真が登場
・「優しさを忘れないあなたへ」と書かれた封筒を受け取る
【次回予告】
主人公は封筒の中に入っていた手紙を開きます。
そこには、黒糖飴に込められた本当の意味と、母が主人公へ託した最後の願いが記されていました。




