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5、国道で寝てたら人生終わったと思ったら始まった件 〜黒糖飴を奪い返したら大富豪に拾われた〜 第5章 原点回帰編  作者: Nao9999


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第121話 公園のベンチで待っていた人

静かな公園で見つけた、小さな約束の数々。


母の面影を感じながら涙を流した主人公の前に、一人の老人がゆっくりと姿を現します。


その出会いが、また新たな縁へと繋がっていきます。

主人公が振り返ると、一人の老人がゆっくりと歩いてきた。


白髪交じりの髪。


少し曲がった背中。


杖をついてはいたが、その足取りには不思議な力強さがあった。


老人は主人公の前まで来ると、穏やかな笑顔を浮かべた。


「その黒糖飴を手にしたということは……ようやく来てくれたんだね。」


主人公は胸ポケットの黒糖飴へ視線を落とす。


「僕を……知っているんですか?」


老人はすぐには答えず、公園の古いベンチへ腰を下ろした。


「座りなさい。少し長い話になる。」


主人公も隣へ腰掛ける。


木漏れ日が二人を優しく包み込んでいた。


「君のお母さんとは、ずいぶん昔からの知り合いだった。」


その一言に、主人公の胸が高鳴る。


「母さんと……?」


老人は静かにうなずいた。


「あの人はね、不思議な人だったよ。」


「自分が苦しい時でも、人に笑ってほしいと願える人だった。」


主人公は何も言えなかった。


それは、自分が知っている母そのものだったからだ。


老人は懐から、小さな写真を取り出した。


写真には、若い頃の母が写っている。


その隣には数人の子どもたち。


そして、中央には見覚えのある人物が立っていた。


「……大富豪さん。」


まだ若い頃の大富豪が、子どもたちと同じ目線で笑っていた。


高価なスーツではない。


動きやすそうな服を着て、泥だらけになりながら子どもたちと遊んでいる。


主人公は目を丸くした。


「こんな頃から……。」


「そう。」


老人は写真を優しく撫でた。


「彼は、自分が支援者だと名乗ったことは一度もない。」


「子どもたちは、近所の優しいお兄さんだと思っていたよ。」


主人公は思わず笑みを浮かべる。


「なんだか、大富豪さんらしいですね。」


「そうだろう?」


老人も笑った。


しばらく沈黙が流れる。


風が吹き、木々が心地よい音を立てる。


やがて老人は空を見上げながら続けた。


「君のお母さんが、よく言っていた言葉がある。」


主人公は自然と姿勢を正した。


「『優しさは、返さなくていい。横へ渡しなさい。』」


その言葉を聞いた瞬間、主人公は母の手紙を思い出した。


『私へ返そうとしないでください。目の前で困っている誰かへ渡してください。』


まったく同じ想いだった。


老人は静かに微笑む。


「だから、この公園には今も子どもたちの約束が残されている。」


主人公はクスノキの根元へ視線を向ける。


あの缶の中には、未来へ繋がる約束が詰まっていた。


「でも……どうして母さんは、この公園を選んだんですか?」


その問いに、老人は少しだけ表情を引き締めた。


「それは、この場所が……。」


言いかけたその時だった。


カラン……


小さな音が足元から聞こえた。


主人公が見ると、一粒の黒糖飴が転がっている。


さっき胸ポケットへしまったはずの黒糖飴ではない。


誰かが置いたように、ベンチの下から転がってきたのだ。


老人はその飴を見ると、どこか懐かしそうに目を細めた。


「まだ、あの人は見守っているんだね。」


「あの人……?」


主人公が顔を上げる。


しかし老人は、それ以上は語らなかった。


代わりに公園の入口へ視線を向ける。


そこには、白いワンピースの少女が静かに立っていた。


主人公と目が合うと、少女は優しく微笑み、国道の方へ歩き出す。


主人公は立ち上がる。


「待って!」


声を掛けても、少女は振り返らない。


ただ風に包まれながら歩き続ける。


主人公は老人を振り返った。


老人はゆっくりとうなずく。


「行きなさい。」


「あの子は、君が進むべき道を知っている。」


主人公は深く一礼すると、ロードバイクへ駆け寄った。


国道へ続く風が、また新しい出会いを運んできていた。

第121話を読んでいただき、ありがとうございました。


今回は、公園で主人公の母を知る老人との出会いを描きました。


少しずつ母と大富豪、そして「優しさの連鎖」が一つの線で繋がり始めています。


次回は、白い少女が主人公を導く先で、新たな出会いと公園に隠された意味がさらに明らかになっていきます。

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