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『其の三』 一つのパンフレット

俺とイノは舗装されていない砂利道を歩いていた。

「ここってもしかして山奥なのか?」

「そうじゃぞ?」


右には川、左には山。

そんな道を歩いていた。

「何もないってつまらなくないか……?」


そう言うと、イノは反論した。

「つまらないとは失礼じゃの!ちゃんと娯楽はあるぞ!」

「……じゃあ何があるんだ?」


するとイノは少し黙り込み考えていた。

「やっぱりつまらないんじゃないのか?」

「うっ……なにかあるはずじゃ……」


俺はそんなイノを横目に、周りをの風景を見ると、本当に俺が知らない世界が広がっていた。

右側には澄み渡った川。

風をあまり感じないのに音と視覚だけで涼しさを感じるくらいだった。


そしてイノがいる左側は山。

木々は緑色に生い茂っており、静かにゆらゆらと葉を揺らしていた。


すると歩いている方向に一つの建物が見えた。

「なあイノ、あれは何の建物だ?」

「なんじゃ!妾は今娯楽の事を考えているんだぞ!」

「ほらあそこだよ」


指を指すと、イノは建物について話した。

「あぁ……あそこは駅だ」

「駅?繋がってるのか?」

「今はもう鉄道は通っておらん、それも3年前の話だ」


イノの話にすこし興味を示していると、肩をトントンとされた。

「少し中を見に行くか?」

「ああ、少し見てみたい」


こうして俺達は駅へと向かった。


───────

────

──


駅の前にたどり着き、全体を見渡してみた。

全体は木材だけで作られていたが、白い塗料や屋根に塗られている赤い塗料はボロボロに剥がれていた。

「これ……中にはいっても大丈夫だよな」

「大丈夫じゃ!もし崩れたとしても妾ならすぐに逃げれる!」

「いや俺は?!」

「さあ中にはいるぞ!」


イノは俺にお構いなしに中に入っていった。

「お、おい危ないって!」


俺はついて行くように入ると、中は外見とは違い木の独特の匂いが充満していた。

それに加え、埃は被っているが比較的綺麗な状態であり、音はやけに静かだった。

「おぉ……意外ときれいなんだな」

「そりゃそうだろう、長年の経験がある大工が建てておったからな」


自然に足が動くように俺は中を探索し始めた。

すると駅名と時刻表が書かれている物を見つけた。

「奥多摩駅……?」

「久しく聞いたな、あまり利用者はおらんかったがここらへんの学生がよく使ってたの」


すると近くに一枚のパンフレットが置いてあった。

俺はそれを開くと、見たことがある地形が書かれていた。

「奥多摩……青梅……秋川……」

「そんなボツボツいってどうしたんじゃ?」


何かを思い出せそうだが、これだけの手がかりだけじゃ何も思いつかなかった。

しかし一つだけ言えることはあった。

「俺はここに来たことがあるかもしれない……」

「ほう?」


イノは眉を潜め、俺に質問した。

「何か思い出したかの?」

「まだ分からない……だが見覚えはあるんだ、この駅名……そしてパンフレットに書いてあるこの情報」


すると後ろからイノの手が伸び、俺が見ていたパンフレットを奪った。

「なっ!何するんだよ!」

「なに、妾が持っててやろうと思っただけじゃ」

「俺が持つから大丈夫だ」

「だーめーじゃ!お主は記憶も失っておるからもしかしたら落としてしまう可能性もあるだろうに!」

「落とさねーよ!」


「それにまだ早い……」

「え?なんて言ったんだ?」


するとイノは逃げるように駅から飛び出した。

「あっまてこの狐野郎!」

「神様に向かって何という言葉使いじゃ!」


こうして俺達はまた道を歩くことになった。

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