表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/101

挑発系男子

久しぶりですね、今回はちゃんと本編です。

言い訳じみていると言われればそれまでなんですが…遅れた理由なんですけど、意外と課題やら登録やらが終わらなかったりリモートなのか教場なのか決まらなかったり、免許取りに行き始めたりで色んな準備に手間取ってました。


これからは多分週1で1本いけるかどうかになるので、改めて宜しくお願いします。



…あ、あと新作の短編投稿したんでした!合わせて読んでいただけると幸いです(なおこれが一番時間泥棒してた)




「っ!?」


突如として土御門の顔が急に強張り、素早く立ち上がると俺に立ち上がるよう急かす。

そして改まった様子で真剣な眼差しを俺に向けた。


「今、感知用に撒いておいた符に反応があったわ、後1分もしないうちに百々目鬼が来る。

…もう一度聞くけど、本当にその作戦でいいのね?」

「さっき、それが一番勝率が高いってお前が言ったんだろ?

どのみちお互い退路がないならこうするしかないじゃんか」

「……わかった、じゃあ作戦通りこれを預けるわ。

5分間の時間稼ぎ、任せるわよ」


土御門が俺の手にいくつか白い小さな球体を押し付けて握らせると、腕に一枚の符を貼り付け再び先ほど俺を窮地から救った時と同じく霞と消えた。

…ホントまるで映画に出てくる光学迷彩みたいだな、気配遮断の符とかなんとかの効果らしいが本当に凄まじい、昨日俺が知らぬ間に使ってたが敵からしたらこんな厄介な相手はいないだろう。


高度に発展した科学は魔法と見分けがつかないとかそういう言葉をどこかで聞いたが、これは逆もまた然りということなんだろうか。

なんて、他のことに意識を割いて誤魔化そうとしてみるが心音バクバク冷や汗ダラダラだ。


圧倒的脚力で地面を蹴り進む音が徐々に近づく、それに比例するように震えが大きくなる足に一発拳を入れて、何事もないかのようにスカした笑顔を貼り付けて敵を待つ。


そしてそれはすぐさま現れた。


「あれ、退魔師の女はどうした?まさか逃げたってわけじゃねえだろ?」


自分の立っているところのすぐ近くでやたらと煩く聞こえていたはずの足音が止んだ。


振り返ると、先ほどまでは着ていなかった美しく赤い鮮やかな色調の絹織物の着物で着飾った姿、それとは対照的に野蛮にすら思える凶暴な笑顔で口角を吊り上げた顔が目に焼き付く、しかし笑顔というには物足りないというかどちらかというと怪訝そうな表情で俺を無数の目玉が見つめていた。


視線がうるさいとはこういうことなんだろうか、比較的肌の露出が少ないが腕や無駄に肌けた隙間から覗くその体には大量の目玉が生えていて…気持ち悪いな、やっぱりグロッキーだと感じた。


…いや、気持ち悪いとか思ってる場合じゃない。

自分で提案した作戦なんだ、やり通してやる。


「はっ、なにそのカッコ、花魁のモノマネかなんか?

というかどこで拾ったんだよその衣装、ごみ捨て場とか?」


崩れそうな表情を無理やり表情筋で固め震えそうな声を理性で抑えて、必死こいて頭を回して咄嗟に考えた軽口で挑発する。

緊張しすぎて普段なら絶対思いついても言わないようなレベルの拙いし適当な挑発になってしまったけど、こんなんで大丈夫か…?


もしかしてスベった…?と内心震えつつ百々目鬼を暫く見つめていると俺の色々酷い挑発を聞いてか、呆けたような顔になってすぐさま顔を手で覆い腹の底に響くほどの大声で嗤い始めた。


「…へへ、いうじゃねえか……殺す。」


覆われていた顔から手を離すと、その下からは額に大きく血管を浮き上がらせ殺意の波動に目覚めているマジギレ状態の鬼がいた。

ピリピリと肌に何かを感じる、これが殺気ってやつなんだろうか…ッ!


冷や汗が背中をぐっしょりと濡らしてるけどとりあえず第一段階、クリアっ!


表情豊かに殺意と鋭い牙をむき出しにした百々目鬼を横目にすぐさま逃亡に移る、もう足は震えていない。

その怒り狂った顔に恐怖ではなく若干の達成感を覚えたことを心の端で快く思いつつ、全力で手と足を振って校舎側のスレスレを走る。


「は?逃げてんじゃねえよ、死ね!!」

「鬼ごっこも知らねえのかよ、できるもんなら捕まえてみろよギョロ目女!」


ここまできたらもうヤケクソ気味に後ろを一切振り返らず悲鳴の代わりに挑発をひねり出す、真後ろからは怒りの行き場がなくなって言葉にならない声で咆哮が上がると、凄まじい脚力で追従してくるのが足音で分かる。


「もう許さねえ、ぜってえに殺すッッ!!!テメエの首引っこ抜いて頭カチ割ってそれで酒をたらふく呑んでやらァ!!!」


なんかトンデモなく怖いこと言ってる!?


三枚のお札の坊主の気分を味わいながら情けない声が上がりそうになるのを喉元寸前で堪えつつ、捕まったらグロ同人みたいなことになること間違いなしの死刑宣告を受けて理性が肉体のセーブを忘れたのかさらに手足を全力で動かして走る、疾る、駆るッッ!!


「っ、らァあ!」


近づく足音に心臓と胃ををやられながら必死こいて走って漸く校舎外周の曲がり角、ちょうど校庭まで一直線のコーナーが見えた付近で今までずっと握っていた土御門からの預かりものを幾つか力一杯地面に叩きつけた。

ガラスが割れるような甲高い音が響いた瞬間あたりは一瞬で五里霧中になる、日がなかなか射し込まない位置であるというのも相まって完全に視覚を失った。


…壁際を走っていた俺は別だけどな!


「っクソが、また柊と鰯の灰煙かよっ!!?

しかも今度はさっきより濃いじゃねえか…うざっってええええなァあああ!!!!!」


怒り狂った女鬼の声が霧の奥深くから響く。

土御門曰く、鬼にとっては柊と鰯の頭を使って作った魔除けは死ぬよど嫌いらしい、その二つを灰にして特殊な魔術的加工を施した煙玉は鬼の名を冠している百々目鬼にとっても有効に決まっている…ってさっき言ってた。


ので、時間稼ぎ役を引き受けた俺が今日持っていた分全てを貰い受けてこの通りの耐久戦に臨んでいるというわけだ。

これが作戦の第一段階『挑発してヘイト稼ぎつつコソコソ生き残る作戦』!ダサいなやっぱり。


しかしこんなもんじゃどうにもならないのはわかってる。

ブンブンと風を切る音がするので多分百々目鬼は今煙を払うのに本気になっているだろう。


校庭が開けた場所であるというのはさておいても、さっきだって同じように展開した煙幕を速攻で散らされたし校舎裏でそれほど開けてないと言っても所詮は野外だしいつ煙を飛ばされるかわからない。


求められた時間は5分…多分今だと1分ちょっと経ってればいいほうだろう。

手の中に残っている煙玉の個数は感覚的に後2つ、これで後4分注意を惹き続ける必要がある。

あまり現実的ではない時間設定に嫌な汗が垂れ流れる。でも、これしかどうにかする方法はないと短い時間ながら

話し合って決まったんだ、今更これだけやっておいて逃げられない、逃げられるわけがない。


…とりあえず移動するか。


胃が痛くなってきて逆流しそうになるのを堪えながら、校舎に手をついてなるべく急いで且つ足元に注意して元の道を引き返す。

ん?直進しないのかって?馬鹿野郎、だって直進したら土御門と合流しちまうだろ?


時間稼ぎのために地面にタイマーをセットしたスマホを置きつつ煙が停滞した地帯から抜け出した、多分あと3秒くらいで…


『鬼さんコ〜チラ、手の鳴る方へ〜ってな!』

「っ!?舐めやがって、この!!!」


あらかじめ作戦が決まった時点で録っておいた特性クソガキボイスが煙の中から鳴り響き、それが聞こえると同時になるべく大きな音で手を大きく鳴らす。

何でわざわざ自分から居場所がバレるリスクのあることをするのかというと百々目鬼の平衡感覚をできるだけ奪うためだ。


視覚が占める情報量は他の五感に比べてとても多いという話はよく聞くだろう。しかもあの鬼は全身に目玉がついて死角がないらしい、つまり感覚器として人間以上に視野に頼りまくってるということだと推測できる。


なので挑発してまともな判断を出来ないようにし、さらに視界を封じた上で聴覚に本来ありえないような情報量を与えてやれば…っ!


「どこだッ!!どこに隠れやがった!

出てこいこの卑怯者!!!ぶっ殺してやる!!!」


怒り狂いながらも若干錯乱したような絶叫が、だんだんと薄れ始めた濃煙から聞こえる。夜の校舎に反響したそれは、殺気だった絶叫は、見えないはずの鬼を俺に連想されて冷や汗を止どめなくかかせ続ける。


「…残り3分ちょい。

やれる、俺ならいける」


軽く確認したデジタル時計から残り時間をおおよそ割り出す。そのまま両頬を軽く叩いて今にも晴れそうなほど薄まってきた霧の奥から出てくるであろう化け物を今か今かと待ち伏せる。


…心臓が破裂しそうだ。


モチベーションになるのでブックマーク登録や評価の方、宜しくお願いします。

評価はこの下の☆印のところを押して頂ければできます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ