【目を】市長の真意【覚ましてみた】
そして、結果的にはそれが失敗だった。
敵がぎょっとしたように俺の方を振り向く。
俺と目が合う。
その瞬間、俺の首筋に何かが突き刺さっていた。
吹き矢のようだ。だが、傷は浅い。まだ追える。
飛び立とうとする翼竜との距離を、俺は一桁縮めようとした。
が、できなかった。
目がかすみ、手が震える。体から力が抜けていく。
毒だ……!
どうすることもできず、俺は雑草の生えた地面に倒れこんだ。
翼竜がフィアを連れて去っていく。
フィア……!
※※※
目を覚ますと、俺は自分のベッドの上にいた。
窓からは日の光が差し込んでいる。夜は明けたらしい。
「お目覚めですか?」
聞きなれない声に体を起こす。
ベッド脇の椅子に座っていたのは、スニード元市長だった。
「あ、あんた、なんでここに……!?」
「私の手の者が、あなたたちに危機が迫っていると教えてくれたのです。しかし、少し遅かったようですね」
「手の者……?」
「そう。私もこの数年間何もせずにいたというわけではない。ミア・ザナギ・ハルフォードを倒すべく体勢を整えていたのです。そして彼女を暗殺する計画が、ちょうど今日でした」
「俺にエニルを預けたのは……」
「はい。万が一の場合、私の娘に危険が及ばないためです」
その時俺はようやくエニルのことを思い出した。
連れ去られたのはフィアだけ。
エニルは?
「エニルはどうなりました?」
「おかげさまで、無事です。あの女の方がうまく逃がしてくださったそうです。フィアさん、でしたか?」
「……そう、です」
市長の顔色は、以前あった時とは別人のように良くなっていた。
「ミアの手によって貧民街に落とされたのは事実ですが、私もあの地にいる方が動きやすかった。エニルには辛い思いをさせてしまいましたが」
「じゃあ、病気だっていうのは嘘か?」
「騙してしまってすみません」
「いや……」
したたかな男だ。
こうでもなけりゃ市長にはなれないってことだな。
とにかく、俺もこうしちゃいられない。
「? どこへ行かれるのです」
「ミアの館ですよ。フィアが連れ去られた」
「無茶です。あなたが受けた毒は致死性のものだ。今生きているのが不思議なくらいで……」
俺は市長の体を押しのけ、立ち上がった。
「不思議だろうが何だろうが、俺は今生きている。だったら、俺にできることはやらせてもらいます」




