【気配】眠い……眠くない?【感じてみた】
これが聖女ボディか!
見ちゃったことは何度かあるけど、こうして触れたのはほとんど初めてかもしれない。
「すぅ……」
フィアは、俺の体に覆いかぶさったまま、気持ちよさそうに寝息を立てている。
フィアの吐息が俺の耳元にかかってくすぐったい。そして、なんかすげーいい匂いがする。
し、仕方ない。不可抗力だもんな。しばらくこのままにしてても怒られないよな。
俺はフィアの体を、そっと自分の横に寝かせた。
そして、フィアの頭を腕に乗せる。
フィアの柔らかそうな頬が目の前に来る。
…………。
……。
…。
「レルー、なにしてんのー……?」
ぎょっとする。
見れば、エニルが枕片手に俺たちを見下ろしていた。
だが、まだ寝ぼけているようで、目はきちんと開いていなかった。
くっ! この状況! どう切り抜ける!?
「あたしも寝る……」
俺が悩んでいるうちに、エニルは躊躇なく毛布に潜り込んできて、俺とフィアの間から顔を出した。
そして、俺の腕に頭を乗せる。
「え、エニル、てめー」
「くかー……」
俺が文句の一つでも言ってやろうとしたときには、既にエニルは寝息を立てていた。
このガキ……!
フィア一人ならともかく、二人となるとけっこう重たい。
あと、腕がちょっと変な方向にねじれちゃってだんだん痺れてきた。
どうにかしなければ、俺の腕が死ぬ。
俺は無事な方の手で、エニルをどかそうと腕を伸ばした。
が。
「ママ……」
エニルの寝言だ。
俺は手を止めた。
よく見ると、閉じられたエニルの目には、涙のようなものも浮かんでいた。
……あーあ、畜生。
なんなんだよ、本当。
「クソガキ、いい夢見ろよ」
エニルを起こすのはやめた。
さらば俺の腕。明日は動かなくなっているかもしれない。
目を閉じて、できるだけ腕のことは考えないようにする。
だけど、俺の腕の上の二人の体温がそれを邪魔する。
「……眠れねえ」
なんということでしょう。
しかし身動きの取れない今、寝る以外のことは俺にはできない。
くそ、俺の体よ、今すぐに休息をとれ! もう働くな! 勤労意欲は明日にとっておけ!
大体、どうしてこんな小さい毛布に三人も入っちゃってんだよ。どうせならベッドで寝ようよ。
無理やり目を瞑ると、フィアのエニルの寝息が二重奏で聞こえてくる。
明日はベッドで寝ることを提案しよう。
そんなことを俺が考えていた時。
見知らぬ敵意が俺たちの家に近づいてきたのを感じた。
殺気と言い換えたほうがいいかもしれない。
平和ボケした脳が目覚める。
全身が総毛立つ。




