12話 Child
「名前は?」
「梶木 涼。19です……」
探るような目は、正直苦手だ。
「俺は湯ノ瀬 仁。おっさんだ」
見りゃ分かるよ。ふざけてるのか真面目なのかわかりやすくして欲しい。
「大学生か?」
「いえ、高校です」
一年間色々あったから、あまり聞かれないと良いけど。
「ああ、色々あったのね」
……期待以上でした。
「ぶっちゃけお前の身寄りなんてどうでもいいし」
「お父さん!」
娘に怒られてる。なんだこのおっさん。
「俺が聞きたいのは、お前が何をしようとしてるかってことだ」
「具体的には……?」
「まずは、コイツをどうした」
そう言って見せつけて来たのは、あの家で拾った拳銃。一瞬、頭痛が強くなった。
「それは、拾い物です。警察官の遺体から」
「それで、どう使うつもりだ?」
どうって……身を守るくらいだ。このおっさんは、俺を何だと思ってる?
「俺が言いたいのは、お前みたいな子供が、こんなちっちゃい子を引きずり回して拳銃まで持ち歩いてる。それにどういう理由があるんだってことだ」
疑われている、で間違いなさそうだな。
「その子は、俺の姪っ子です。両親と離れ離れで、今は俺が……」
俺が……世話をしてるのか?
「ほう。そんで、アテはあるのか」
……アテ?
「この子を送り届けるなり、世話をしてもらう場所のアテはあるのか」
「……ありません」
兄貴からの連絡が無い以上、アテなんかどこにもない。
「そいつは、少しばかり無責任だな」
「……今は、どうしようもないと思っています」
「今は?いつになったらどうにかできる。今は、なんて言う奴に次はない」
厳しい言葉だった。
「オマケに勝手に疲労をためて、勝手に倒れやがる。俺たちが見つけてなかったら、どうなってたと思う」
……何も言えなかった。自分の浅はかさ、弱さを見せつけられた気がした。
「……まぁ、お父さんも褒められた人じゃないケド」
「ほっとけ」
娘の方は大分軽いようだ。親バカなのかもしれない。
「……んで、お前はどこを目指してる」
「浜名湖を。置き手紙というか、待ってる……らしいので」
そこくらいしか、目的地なんてない。
「東か……まぁいい。今日は寝ろ」
「……はい」
「お前らと同行するかどうか決める。一晩でそのくたばった体を戻しとけ」
そう言って、おっさんは少し離れた。
もし同行してくれるのなら、そんなにありがたいことはない。
このおっさんがどこまで頼りになるのか分からないが、少なくともいないよりはマシだろう。
「安心して寝ていーよ。荷物に手をつけたりしないからさ」
バカみたいに明るい笑顔で言われると、疑う気力も尽きた。
「大丈夫だって。あんなこと言ってるけど、結局君と一緒に行くって言うよ」
「そうなのか……?」
今、すごい考えてる感のあるポーズをとってるけど。
「だって、ウチのこと心配でたまらないみたいだし」
やっぱり親バカだったか。
「ここだけの話、昔、ちっちゃかった妹を亡くしたんだって。それで、多分ウチに重ねてるんだよねー」
迷惑な話だよ、とでも言いたげに彼女は言った。
「そっちの目的地は、どこなんだ?」
「東京。お母さん、今あっちにいるから」
確かに、方角は一緒だ。
「……連絡は?」
「ついてるけど、ケータイの電池の問題とかもあるからねー。まぁ、アテがあるだけマシだよ」
俺と違ってな。
「大丈夫だってー。4人もいれば何とかなるよ。そんな暗い顔しないでさ」
「……いや、なんでそんなに明るいんだ?」
この状況下で。演技だとしてもすごいメンタルだと思う。
「……なんでだろーね。ウチ、バカだからさ」
バカというか、能天気というか。
「いいじゃん。暗い顔しても笑ってても、別に何も変わらないよ」
「そこは、笑ってた方が良いことあるよ、ぐらいは言って欲しかったな」
本当にバカなのか、よく分からない。でも、ごめん、なんて笑いながら言う彼女に、どこか救われたような気がした。




