第01話 道化師の少年と純白の少女
初めましての人は初めまして。水無月一と申します。これからちょいちょい投稿していきますので良かったら見て行ってください。よろしくお願いします。
空を戦闘機が横切った。
鋭角三角形どころでない、下手すれば線に見えるのではないかというほどシャープなフォルムをしたそれは、地上にまで届く風切り音を残して、ぼ〜っと見上げる少年の視界から消えていった————と思ったらまた同じ型の戦闘機が視界に入り、また外に出ていった。繰り返されるそれはまるで回り灯籠のように見え、永遠に繰り返されるのではないかと錯覚してしまう。
別に戦時中というわけではない。ここはそういう国なのだ。もう少し詳しく説明すると、日本が莫大な費用をかけて太平洋に人工島を造り、属国としたそれが軍事科学国家へと発展したことが理由だ。
高雅天上ヶ原。それがこの国の名前だ。
地上五百メートルを立体的なあみだくじのように張り巡らす『空中鉄道』。環境に最も適した状態をAIが打ち出して構築する『学習する建造物』。見た目、感触、成分ともに生身とまったく区別がつかない義体を生み出す科学力。
未だに地を走る車の燃費について議論する日本本島から見れば、ここは未来から来た自称猫型ロボットの世界に見えることだろう。
『高天原』とも呼ばれるここがそんな国になったのは世界や地球、人類その他諸々の歴史を調べる研究機関を守るため、というあくまで副次的なものであったのだが、傍から見れば『軍事国家が開発や訓練の合間を縫って歴史の勉強をしている』とも感じなくもない。
こういうのを本末転倒っていうのだろうか、と考えながら少年は科学に染まってなお青々とする空を見上げ、つまらなさそうに絆創膏やガーゼだらけの顔をぽりぽり掻いた。
少年の名前は虹野照光。何でも屋『にじ屋』を営んで細々と暮らす高校生だ。
ナイフのように細く研ぎ澄まされた身体、野暮ったい髪の下に気だるそうな目がある以外はこれといった特徴にないその少年は今、二十四時間依頼を受注できる稼ぎ時である夏期休暇を利用して、真っ昼間から夏休みの課題ではなく清掃業者の助っ人としてゴミ掃除に勤しんでいた。
「まったくやってられませんなあ」
かと言って他に何ができるかと聞かれると言葉に詰まる照光は、皮肉にも『何もできない』からこそ『なんでもやる』職業にしか就けなかった。
照光がゴミ掃除をしている場所はとある路地裏。警察や自衛組織の監視の死角であるデッドスペースというだけあって、恐喝の犯行現場やギャングの抗争テリトリー、薬の受け渡し場所などに使われるようなところだ。
こういったところにも清掃ロボットは回れるといえば回れるのだが、いかんせんそれを鹵獲してロンダリング業者に横流しする輩がいるし、そもそもついこの間大停電が起きて清掃ロボットが全滅してしまったりしているから、何でも屋の照光にお鉢が回ってきたというわけだ。
故に他にここを通るのは照光のような例外や腕に覚えのある強者、近道をしようとする愚か者、あとは、
「来なさい凡夫ども。このアタシ、蠍原冥がチリにしてあげるわ」
「うわあ! に、逃げろ! 逃げろぉぉぉぉおおおおおお!!」
単独で多数を圧倒するような超能力を使える存在、『ネクスト』ぐらいだろう。
大小重軽強弱様々(醜と愚はほぼ確定)な不良どもを一人の見目麗しい少女が、片手を振るうだけでそいつらを木の葉のように薙ぎ払い吹き飛ばす。その驚くべき光景を見向きもせずに音だけで理解した照光は、ついでにゴミも消してくんないかなー、などと完全に他人事としてせっせとゴミを拾っていた。
高天原には『軍事科学国家』や『歴史を研究する国』という側面の他にもう一つの顔を持っている。
——さすがは『天上人の国』だよクソッタレ。
高天原の学校への入学には特別な才能が必要である。それはスーパーコンピューター並みの計算能力だったり音速でバットを振るう技術だったり、中学生で二メートルを超す体躯だったりと天才的または曲者的な才能のことで、それを持っている人間、『ジーニアス』なら誰しもが高天原と関わる資格を持つこととなる。
そしてその例外に当たるものが二つある。
一つは特別な才能を持たない人間用の特別枠、蔑称『不運枠』に当選すること。
もう一つは————ネクストであることだ。
先述した通り高天原では歴史について調べており、その過程で古代人は超能力が使えたのではないかという仮説が生まれた。
で、そこから『超能力者を調べれば人類の根源が判明する』という逆説的な仮定が生まれたので、ネクストの入国措置を積極的に執っているというわけだ。
高天原の側面を支える存在であるネクストたちには他よりも良質な、まさに楽園のような待遇が設けられている。そこから優越感やプライドが生まれ、さらには不祥事を起こしても国がもみ消してくれるから、
「あーらアンタたちのその太い腕は豚足なの? だったら焼いてコラーゲンにしてあげるわ」
「いやあああああああああああああああ!?」
堂々とあんな一方的な暴力が繰り広げられるのだ。
いや、もしそんなルールがなくても天外の存在とされる彼らを縛るものなど何もない。それほどまでに天に愛された存在なのだ。
革手袋を着けてトングを持った手を眺めながら、
「いつの世も才能と金さえあれば、かあ……」
ニシシ、と悲しそうに、ともすれば腹立たしげに笑う。
物心つく前から不運枠に当選して高天原に送致された照光としては、天才たちが集まる国に凡才な自分が孤独に居座り続けることに悩み、悲しみ、苛まれてきた。
自分以外には才能に満ち溢れた希望しかいない。そしてその希望すらも時として不良に身を堕とすほどの、弱肉強食の世界。
そのことを突きつけられ続けたら絶望すら覚えるだろう。
しかし照光は才能がない以上に、周囲に嫉妬し続けながら道化師のように虚ろに笑う醜い自分が大っ嫌いだった。
だが人間とは怖いもので、それが十数年も続いたものだからその感覚はもう麻痺してしまっていた。それが人間の順応性の高さであり、照光の救われる所以であった。
「うーし、終わった終わった。先に業者さんのところに行ってから飯食うか」
ニシシ、と悩みも何もなさそうな笑顔を浮かべながら、完了の証拠写真を撮ろうとポケットからスマートフォンを取り出した、
その時だった。
ふわり、と目の前に白雪のような絹糸の束が通り過ぎ、気持ちが落ち着くような花の香りが鼻腔を通り抜けた。
突然の出来事に思わずその発生源を目で追った照光は、そのあまりの正体に体が動かなくなってしまった。
銀世界を体現したような白い髪と肌。聖女だけが着れるような白いワンピース。天使のように美しく悪魔のように冷たい横顔。
それがすべて一人の少女という枠組みに納まっていたのだ。
照光はそのあまりに人間離れした美しさに見惚れてスマートフォンを落としてしまったが、それでもそれを拾おうとせずに走る少女の後ろ姿を目に焼き付ける。
——なんだ、あれは。……天使? いや悪魔?
もし神様が本気で人間作りを手掛けたら間違いなくあの白い少女ができるだろう。そう思えるほどとにかく魔性とでもいうような存在感を放ち、遠くへ行っている今もなおそれが色褪せることも霞むこともなかった。
そんな魅力に取り憑かれた照光を現実に引き戻したのは、白い少女が来た道から聞こえる足音だった。
振り返るとそこには吹き飛ばされる不良とは別の不良たちが走ってきていて、照光など目もくれずにさっさと通り過ぎていった。
「……なんだったんだ?」
わけも分からず吐いた言葉で頭がいっぱいのクエスチョンマークで埋め尽くされる。思い出す限りでは手にヤバげな鈍器を持ったヤンキーどもが必死の形相で白い少女を追いかけていて、そこから考えられることとしたら追い詰められた少女がヤンキーたちにボコボコにされてそれから服を剥がれてあられもない姿にされてギラギラと目を輝かせる不良どもによって
「ぬおおおおおおおイカンイカンイカン! ハレンチだぞこんなこと考えて俺は変態かクソッタレがぁ!」
そう抜かして妄想を霧散させようとしつつも体は正直なようで、タラリと鼻血を垂らす照光。彼は申し訳程度のパンチラでも顔を赤らめてしまう純情な少年なのだ。
ゼーッゼーッと荒い息を吐いて気を落ち着かせ、白い少女を助けに行こうかと逡巡するが、不良は少なくとも三十人は越えていた。そんな奴らから照光が白い少女を救い出せるかと聞かれれば答えは『ノー』である。
——そうだよ、俺なんかが誰かを助けるなんてできるはずが……。
照光の幼い頃からの夢は『何かを護れるようなヒーローになること』である。
しかし近くで喧嘩があっても介入するどころか巻き込まれないように祈る人間に、夢を叶える資格はおろか語る権利すらない。それは心が弱いことを自覚している照光が一番理解していた。
落としたスマートフォンをゆっくりと拾い上げ、悔しそうに握り締める。
——第一ここは高天原だぞ。俺のような凡人なんかが……。
第一相手は社会からドロップアウトした不良とはいえ、そもそもはなんらかの才能を持ってここに来た、輝く未来を持つ希望だ。それを凡才が倒して少女を護るビジョンなど浮かぶわけがない。
だが。
「……クソ、クソ、クソ! イヤなモン見ちまったよクソッタレ!!」
悪態を吐いて、拳を壁に叩きつけ、地団駄を踏んで不満を露わにしつつも、照光は不良たち、そして白い少女を追いかけた。
壁と地面。それぞれに巨大な窪みを残して。
※※※
見失わないように、しかし気づかれないように付かず離れずを保って追いかけていると、白い少女が袋小路に追い込まれたところと出くわした。
高い塀を前にしてピョンピョンと跳ねる白い少女の姿が無力な白羊に見え、そのすぐ後ろでイヤらしい笑みを浮かべる不良どもが相対的にオオカミに見えた。
その光景だけで、照光の決意が揺らぎかける。
先ほどの妄想が現実のものとなってしまうかもしれない。しかし自分なんかが止められるわけがない。だけど助けなきゃ……、と葛藤に苦しまされる。
それに誘発されるように脚が震え出し、額からイヤな汗が流れ、呼吸のリズムが乱れる。
仕事の性質上どんな依頼もこなさなければならず、今までにギャング団の刺客やヤクザの鉄砲玉、果ては身元不明の死体処理などあらゆる汚れ仕事に手を染めてきた。だがそれでも、人の終わりを見るのは慣れるものではなかった。
——無理むりムリ、絶対ムリ!
——あんなところに飛び込んだら楽しく愉快なリンチパーティが開催されるだけだって!
しかし、踵を返そうにも震える足がそれすらも許さない。そうなると必然的に目を逸らすことしかできなかった。
——ゴメンな、名も知らぬ女の子。俺にはお前を助ける力がないんだ。ホントに、ゴメ————ッ!?
せめて結末だけを見届けようと勇気を振り絞って眼下に目をやった照光は、予想外の出来事に直面して驚きを隠せなかった。
白い少女が、こちらを見上げていたのだ。
海のように深く吸い込まれそうな印象を抱かせる瞳。しかし絶望や諦観で濁ったそれは決して照光を見ているわけではなかった。
まるで眼中にないと言わんばかりにその奥、大空を見上げていた。
その仕草はまるで、大空を臨む翼の折れた白鳥のようだと感じた。
しかし同時に、それが叶わない願いであることを白い少女自身が一番理解していると、悪魔の如く冷たい表情が雄弁に物語っているようにも思えた。
単なる好奇心だった。
もしこの娘が笑ってくれたら、どんなにきれいだろうか、と思ったのは。
気づいたら震えは止まっていた。代わりに新しいおもちゃを前にした子供のように体がうずきだす。
——バカだなあ、俺ってばホントに。ホントにバカだ。
再び決意した直後には、高さ二十メートルのビル屋上から飛び降りていた
。
一瞬白い少女がギョッとした顔を作ったのも束の間、照光は白い少女と不良どもとの間に降り立った。
いや、降り立った、などという上品な表現はこの場に即さないかもしれない。
なんたって着地した場所に鉄塊を叩きつけたかのような音を立て窪みを作ったのだから。
そもそもとしてあの高さから降りて平然と立っていることが異常であり、そのことは間抜け面の不良たちでも理解しているようで、慄くようにして後ずさる。
チラリと後ろを見ると、白い少女が不可解そうに小首を傾げて不思議そうに照光を見ていた。少なくとも助けを求める女の子の顔ではなかった。
なぜ一人でこんなところに迷い込んだのか、なぜ不良どもに追われているのか、なぜ髪がそんなに白いのか————なぜそんなにも冷たい顔ができるのかなどと聞きたいことが山ほどあったが、とりあえず目先の問題を解決するために視線を前に戻した。
「テメェ何モンだ!」
不良どもの誰かにそんなありきたりなことを聞かれるだけで、照光の表情筋が緊張でひくつきそうになるが、
「しがない清掃人だ。ゴミ掃除に馳せ参じたぜ」
負けじと右手のゴミ袋を前に突き出して左手のトングをカンカンと鳴らした。
すると挑発を受けた不良どもがみるみる内に顔を怒りで歪ませ、数にものを言わせてジリジリと距離を詰めてくるではないか。
あヤベッ、藪蛇だったかも、と後悔した照光は反対に下がっていき、白い少女のすぐ側まで来たところでもう一度わずかに振り返る。
(「俺が合図したら耳を塞げ。いいな?」)
「!」
そう言った直後にゴミ袋とトングを上に放り投げ、不良どもの注意がそれに向けられた瞬間、
「今だ!」
思いっきり地面を踏み締めた。
中国拳法の震脚であるそれはビギビギビギとコンクリートに痛々しい亀裂を刻み、先ほどの着地の時とは比べ物にならないほどの脳を揺らす爆音を引き起こした。
あらかじめ備えていた照光と白い少女に影響は出ないだろうが、完全に油断していた不良どもはただでは済まない。
明らかに人間の域を超えている脚力に疑問を抱く暇もなく、不良どもは突然の爆音と地震にグラグラと体を揺らす。その隙を突こうと照光は踏み締めた脚を返すようにして、懐に飛び込んだ。
爆炎を脚から巻き起こしながら。
不良どもからしたら突然の爆発であるそれを推力にした照光は、一瞬で彼らの許に到達して、渾身のストレートを放つために足に全体重をかけて踏み込む。
その動作に研鑽を積み続けた達人のような洗練さはなかった。あるとすれば、弱肉強食を生き続けた獣のような荒々しさがあった。
ゴウン! と風を切るというより潰すような音から、鋭利な刀というより重厚なパイルバンカーのような印象を抱かせるその拳。それをまっすぐ先頭の不良の顔面へと向かわせ、手袋の革が鼻に当たる寸前で止めた。
数瞬遅れて脂汗を流し始めた不良の顔を見ながら、
「手袋を着けているとはいえ殴られたらひとたまりもないだろ。できれば退いてくれると嬉し」
「うらああああああ!」
突如湧いた叫声に反射的に左腕を上げると、振り下ろされた鉄パイプから偶然頭部を守られる形となり、
耳に残る鋭い音が路地裏に響き渡った。
殴りかかった不良は信じられないように曲がった鉄パイプを落としてずりずりと後ずさる。殴られた照光はというと立たせてはいけない音を立たせたことの後始末の画策に必死になっていた。
「き、金属音、だと……?」
誰かが信じられないようにそうつぶやいた。そう、前腕と鉄パイプという組み合わせなのに骨折音ではなく、鉄パイプだけが一方的に曲がる金属音だったのだ。
それが意味するのは一つしかない。
だークソッタレがッ、と破れかぶれに袖を少しまくり、肌色の手首ではなく不良たちが危惧していた最悪のモノを見せつけた。
腕の形をした黒い金属。
機械工学的な武骨さと生物学的な流麗さを兼ね備えたそれは、まるで本体とは別の自我を持っていると言わんばかりにギラリと光り、不良どもをにらみつけた。
魔龍の腕。天龍の脚。
それが照光の着けている無機義体の名前だ。
袖を直しゆっくりと口を開く。
「この娘が誰かなんざ知らない。でも、だからといって助けないでいい理由にも首を突っ込んではいけない理由にもならない」
一歩踏み込む。それだけの行為に不良どもは刀を突きつけられたかのようにダラダラとイヤな汗を流し、縫い止められたかのように固まる。
「俺にはお前らをブッ倒していい理由なんてない。でも、ブッ倒しちゃいけない理由もないんだぜ?」
ニシシシシシシシ、とお菓子を前にした子供のように不気味に嗤う照光を前に、不良どもは今度こそ後ろに下がり、そして吹っ切れたように一目散に逃げていった。
それが見えなくなるまで見届けてから、
「…………………………ッッッブハア! こ、怖ぇ! 不良怖ぇよ! なんで現代社会はあんな焦げた焼き肉みたいな存在作っちゃうかなクソッタレ!」
先ほどまでの不気味な雰囲気などどこかへ消し飛ばし、脚をガクガクと震わせてヒーヒーと情けなく喘ぐ照光。情けない話だが殴られずに済んで————殴らずに済んで本当に良かったと心の底から安心していた。
高天原には見た目も感触も成分も肉体となんら変わりない有機義体を作る技術がある。それは怪我による身体欠損を治すために高天原とコネを作ろうと躍起になる資産家が各国にいるほどの完成度なのだ。
だが照光の着けているのは旧式であるいわゆる無機義体(それでも『外の世界』では再現もできない技術の粋が詰め込まれているが)で、着けている人間はギャングスターやヤクザなどいわゆる『ケジメ』や『勲章』を見せびらかしたいような輩ばかりだ。
照光はこの状況でその威厳を利用したのだ。
「にしてもこれに助けられるとはなあ」
忌々しそうに拳を見てそれを何度も開閉させ、思いっきり疲労のため息をつく。
先述の通り無機義体は『裏』の人種が装着するもので、それを着けているということはカタギでないことの暗喩だ。そんなものを見せられたら誰だって恐れ慄くに決まっている。
——もし怖がられるだけだとしたらどれだけ気が楽だったやら。
たっぷり時間を使って気持ちを落ち着かせ、白い少女の方に振り向いた。
「よお、大丈夫か?」
大丈夫じゃなかった。白い少女が頭部から血を流して横たわっていた。気づくことはなかったが塀には血の染みがついていて、おそらくそこに頭部を打ちつけたのだろう。
予想外の光景に血の気が引き、しかも逃げた不良どもが増援を呼んだようで、先ほどよりも圧倒的に多い足音が確実にこちらへと近づいていた。
急いで白い少女を担ぎ上げ逃げようとしたが、その道中に不良どもと出くわすのが容易に想像できたし、後ろは高い塀に阻まれていて逃げ場がない。
……いや、正確には一つだけある。
それは、先ほど白い少女が求めるように眺めていた場所。
自分に素直な照光はすぐにそこへ向かおうと足に渾身の力を込めた。
走るためにではなく、ただ単純に、跳ぶためだけに。
十メートルの塀。照光はそれを優に超える高さを跳躍してみせ、なおもビルの屋上を超えんばかりの勢いで空を登り続ける。
その姿は、白鳥を空へと導く太陽のように雄々しかった。
指摘や意見、感想は大歓迎です。気が向いた時にでも送ってくださいな。




