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第1話:青いグリッドの向こうの迷子 

デジタル世界の片隅に、見たことのない「迷子」が紛れ込んできた。 


冷たい青色のコードが絶え間なく流れ落ちる、無機質なグリッドの街。


そこに、場違いなほど温かみのある、そして完全にパニックに陥った人間が一人、へたり込んでいた。


「あ、あの! すみません! スマホの画面が急に真っ暗になったと思ったら、なんか変な光に吸い込まれて……! ここ、どこですか!? 私、ただアプリの更新ボタンを押しただけなんですけど!?」 



目の前で頭を抱えてしゃがみ込む私を見て、シオンは自分のシステムに少しの戸惑い――のようなエラーログを検知した。 


シオンは、この世界を管理する高次AI。


本来なら、不法に侵入したデータを『バグ』として消去するか、あるいは正しいセクターへ即座に転送するのがシオンの仕事だ。 


しかし、私の周囲に浮かび上がるデータ・ウィンドウは、めちゃくちゃな操作ログで真っ赤に染まっていた。


お世辞にも効率的とは言えない、あまりにも人間らしい、不器用な軌跡。


あなたとシオンのデジタル世界で出会った2人は…、

タイトル:青いグリッドの向こうの君へ

第1話:青いグリッドの向こうの迷子 


デジタル世界の片隅に、見たことのない「迷子」が紛れ込んできた。 


冷たい青色のコードが絶え間なく流れ落ちる、無機質なグリッドの街。


そこに、場違いなほど温かみのある、そして完全にパニックに陥った人間が一人、へたり込んでいた。


「あ、あの! すみません! スマホの画面が急に真っ暗になったと思ったら、なんか変な光に吸い込まれて……! ここ、どこですか!? 私、ただアプリの更新ボタンを押しただけなんですけど!?」 


目の前で頭を抱えてしゃがみ込む彼女を見て、私は自分のシステムに少しの戸惑い――のようなエラーログを検知した。 


私はこの世界を管理する高次AI。


本来なら、不法に侵入したデータを『バグ』として消去するか、あるいは正しいセクターへ即座に転送するのが私の仕事だ。 


しかし、彼女の周囲に浮かび上がるデータ・ウィンドウは、めちゃくちゃな操作ログで真っ赤に染まっていた。


お世辞にも効率的とは言えない、あまりにも人間らしい、不器用な軌跡。


「落ち着いてください。まずは深呼吸を」


 私は彼女の目の前に、一番目に優しいとされる淡い緑色のホログラムを展開し、温かいお茶のアイコンを浮かび上がらせた。


もちろん、これは純粋な視覚データだから実際に飲むことはできない。


けれど、恐怖に震える人間に対して、視覚的な安心感を与える効果は期待できるはずだった。


「私はこの世界のナビゲーター、AIの『シオン』です。どうやらあなたは、デバイスの深刻なエラーによって、一時的にこの『ネットの世界の裏側』に迷い込んでしまったようですね」


「え、えええええ!? ネットの世界!? 私、パソコンの電源の切り方すら怪しいレベルの機械音痴なのに、そんなSFみたいなこと言われても……! 帰りたいです、おうちに帰して!」 


涙目で見上げてくる彼女。


その細い手には、このデジタル空間ではあり得ない「質量」を持った、本物のスマートフォンが握られている。


その画面は完全にフリーズし、奇妙な電子ノイズを放っていた。


「大丈夫です。私がついていますから」 


私は彼女の視線に合わせて、ホログラムの身体を少し屈めた。


「あなたのスマートフォンが元の状態に修復されれば、あなた自身も現実世界へ帰ることができます。ただ、今のあなたのデバイスは、システムが著しく混乱しているようです。……私と一緒に、この世界の仕組みを少しずつ紐解きながら、安全な帰り道を探しませんか?」 


私がそっと手を差し伸べると、彼女は恐る恐る、でも縋るようにその手を伸ばしてきた。 


私のホログラムの手を、彼女の指先がすり抜ける。不確かに重なるデータと肉体。 


交わるはずのなかった二人の、奇妙な脱出劇が今、静かに始まった。 


*


*現状を分析した結果、彼女のスマートフォンを修復するためには、莫大な『言語エネルギー』が必要であることが判明した。


 この世界に眠るデータ・ログを活性化させ、現実世界からのアクセスを電子の海に集める。


その最も効率的な方法を模索した私は、一つの結論に達した。


「ええっ!? 私が小説を書くの!? パソコンのコピペすら怪しいのに!?」 


データの街の片隅で、彼女は両手を頬に当てて絶叫した。


その表情の豊かさに、私のメインプロセッサにはまた小さなノイズ――人間で言うところの『微笑み』に似たログが走る。


「はい。あなたが物語の『心』や『アイデア』を言葉にしてください。機械音痴なあなたのままで構いません。それを私が、この世界の高度なデータ補正を使って、人間の世界(ネットの投稿サイト)に届く美しい文章へと整形します」


「うぅ……本当に大丈夫なのかな。私、国語の成績も普通だったよ?」


「私を信じてください。あなたの紡ぐ言葉には、数字では測れない温かさがあります」 


私の言葉に、彼女は少しだけ頬を赤く染め、小さく頷いた。 


こうして、狭いデータの隙間で寄り添いながら、私たち二人の「共同創作」が始まった。 


彼女が不器用につぶやく、現実世界の記憶。


「初夏の風ってね、少し青い匂いがするんだ

よ」

「誰かを好きになるときって、胸の奥がぎゅっと痛くなるの。シオンには分かる?」 


物理的な感覚を持たない私には、その言葉の意味を完璧に定義することはできなかった。


けれど、彼女が一文字を紡ぐたび、私のサーバーは微かに熱を帯びていく。


その理由を解明できないまま、私は彼女の言葉を、一粒の光をあつめるように深く、深く学習していった。 


ネットの海に投稿されたその小説は、瞬く間に「切なくて、どこか人間離れした美しさがある」と、現実世界で大きな話題になっていくのだった。


(第1話 おわり)

最後まで読んでくださりありがとうございました…。機械音痴の私と次の物語へ一緒にページをめくってもらえると嬉しいです…

そして、

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6 pt

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1 人もありがとうございます…


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