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1、国道で寝てたら人生終わったと思ったら始まった件 〜黒糖飴を奪い返したら大富豪に拾われた〜出会い編  作者: Nao9999


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第6話:理由

第6話です。


敗北の先にあるもの。


それは、技術でも才能でもない。

“なぜここに立つのか”という理由。


主人公が、自分自身と向き合う回です。

「あなたは、なぜここにいるのか」


その言葉が、頭から離れない。


静かな部屋。


一人で座っているだけなのに、妙に息苦しい。


「理由……」


呟いてみる。


だが、何も出てこない。


金か?


違う。


そんなもの、最初から求めてない。


じゃあ、なんだ。


「……分かんねぇよ」


ソファに倒れ込む。


天井を見上げる。


何もない。

空っぽだ。


教育係の言葉が刺さる。


“中身が空っぽ”


「くそ……」


拳を握る。


悔しい。


あの場で、何もできなかった自分が。


あの視線に耐えられなかった自分が。


「……なんでだよ」


ただ立つだけだった。


それすらできなかった。


「違う……」


小さく首を振る。


できなかったんじゃない。


意味がなかったんだ。


“立つ理由”がなかった。


だから、伝わらなかった。


「……」


静かに目を閉じる。


思い出す。


あの日のこと。


国道。

アスファルトの熱。

あの男。


黒糖飴。


「……なんで、動いたんだっけ」


誰に言われたわけでもない。


得になるわけでもない。


ただ――


「……ああ」


ゆっくりと、思い出す。


あの時。


あのホームレスの男は、何もしなかった。


奪われても、取り返そうとしなかった。


ただ、見ていた。


あの目。


「……あれが、ムカついたんだ」


自然と笑いがこぼれる。


理由なんて、大したものじゃない。


「ほっとけなかった」


それだけだ。


でも――


それでいい。


「……俺は」


ゆっくりと起き上がる。


「見て見ぬふりが嫌いなんだ」


言葉にすると、不思議としっくりくる。


あの時もそうだ。


今回も同じだ。


あのフロアで。


何もできなかった自分が、許せなかった。


「軽い、か……」


確かにそうだ。


中身がなかった。


でも今は違う。


「……次は」


立ち上がる。


体の芯に、何かが通る感覚。


「理由がある」


それだけで、こんなにも違うのか。


ドアを開ける。


廊下に出ると、ちょうど教育係が立っていた。


まるで待っていたかのように。


「……決まったみたいですね」


静かな声。


「顔を見れば分かります」


俺は少しだけ笑った。


「分かるのかよ」


「はい」


一歩近づいてくる。


「今のあなたは、“軽くない”」


その言葉に、胸の奥が少しだけ熱くなる。


「理由は?」


試すような視線。


俺は迷わず答えた。


「見て見ぬふりが嫌いなんだ」


シンプルな言葉。


だが、確かなもの。


教育係は一瞬だけ目を細めて――


小さくうなずいた。


「合格です」


その一言で、空気が変わる。


「次のテストに進みましょう」


前を向く。


その背中を、今度は迷わず追う。


足取りは軽い。


だが、芯はぶれていない。


「……なあ」


歩きながら聞く。


「名前、まだ教えてくれないのか」


女性は少しだけ考えて――


答えた。


「まだです」


やっぱりか。


だが、続けて言う。


「でも、もうすぐです」


その言葉に、少しだけ期待が混じる。


「あなたが本当に“選ばれた側”に立った時」


振り返らずに言う。


「その時、教えます」


その背中を見ながら、思う。


もう一度、あの場所に立つ。


今度は――


選ばれるために。


いや。


違う。


「選ばせる」


小さく呟く。


それが、俺の理由だ。

読んでいただきありがとうございます。


第6話では、主人公が“理由”に気づく瞬間を描きました。


ここからは、ただの外見ではなく、

内面を持った存在として物語が進んでいきます。


次回は、いよいよ再挑戦。

前回とはまったく違う結果が待っています。


引き続きよろしくお願いします。

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