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72 ふざけた神

 オスリーの相手は騎士団長達がやってくれている。俺はセレスを……



 騎士達の争いの原因となった相手と俺一人で……

 大丈夫なのか?


 国の未来が俺に託されてる……

 そんな重要な任務を俺なんかに任せてアッシュ様はいけると思ったってことなのか……?


「セレスさんはどこにいるのでしょうか?」


 神の生命力はラピスでも掴めないらしい。


 そう、依頼を受けたもののセレスの居場所すら知らないんだ。


 でも……


「このまま上に行く」


「塔の上にですか?」


 確信がある訳じゃない、でも……




 セレスの人を見下したような子供じみた性格。

 騎士達が争い合うことを楽しんでいるような態度。



 城にまだ残っているとしたらここにいるはず!





 塔の最上階の展望台。





 城のことがもっとも広く見渡せる場所。



「いらっしぁ〜い」


 このふざけた声……予想は的中だ。



 展望台から城内を眺めているセレスが振り向くことなく、俺のことを招き入れた。



「もういいだろ? こんなことをするのはやめろ!」


 このままじゃ本当にクーガが滅びてしまう……


「こんなことって?」


 前と同じくふざけた態度でこちらを振り返ることもなく接してくる。


「お前が今眺めてる騎士達の争いだ!」


「え〜〜あたしな〜んにも悪くないじゃん、神授花を刈り取ったせいで人間の心にも邪心が入り込んじゃったのはあるのかもね。でもそれも人間のせいじゃん」


「攻め込んでる奴らに力を貸してるだろ! それさえしなければ……」


「えっいいの? 攻めに行った人間達が一方的に殺されるだけじゃないそれ?」


「そんなことない! 追放された騎士達が下手に力を持たなければ争い合いなんか起こらず終わったかもしれないだろ!」


「それって弱いから言いたいことも言えずに帰るってことでしょ? それでいいの?」


 くそ……セレスの言い分だってわかるところはあるけど、わざわざ争いの種を撒くことはなかったって話なのに……


「争いの火種になるようなことをしたらダメだろ……」


「知らな〜い、やり始めたのは自分達なんだから」


 言いぶりが子供そのものだ……

 判断能力のない子供が力を持ってしまったらこうなってしまうのか……?


 これじゃ話にならないじゃないか……


「サレムさん、私に話をさせてください」


 ラピスがセレスと向かい合う。


「大丈夫か?」


 こういう揚げ足取りとは相性悪そうだけど……


 まあでも神様同士の方が話しやすいってこととかあったりするのかな。

 ラピスはやる気だ、別に戦うとかってことではなくセレスと話し合うことに随分意気込んでるのは感じる。


「セレスさん。優秀なあなたが何故天界を追放されたのですか?」


 思わぬ質問にセレスは目を丸くした。


「なにそれぇ、今聞かないといけないことなの?」


 露骨にバカにした態度でラピスに逆に問いかけてきた。


「理由がなければ神が追放されることなんてありません」


「それはアンタも同じでしょ? イマイチな神は修行で人間界へ行かされる、ここで下手すりゃアンタだって追放よ」


 えっ、ラピスってそんな理由で俺についてたの?



 帽子山であったカルセド様はそんなこと全然言ったなかったのに……

 ラピス見てて全然わからないかって言われたらそんなことはないけど……ドジだし、そそっかしいし。

 まるで人間みたいっていうか……



「わ、私は……」



 ラピスが言葉に詰まってる……



 追放されるなんて言われたらいい気しないに決まってるよな。


「ダメなもの同士で寄り添ってさぁ、お互い安心なんでしょうけどね外からみてたら滑稽よアンタ達」


「おい! そりゃいいすぎだろ!」


 俺のことはいくら言われてもいい……

 ラピスのことを言うのは違うだろ。


 ドジだけど……

 勘違いも多くて、なんか嫉妬深いところもあるけど……


 ラピスがダメな奴だなんて思ったこと一度もない!


 俺はこれだけは言い切れる。


 ラピスは絶対に俺の味方だ!



「綺麗ねぇ……そうやってかばいあってさぁ、バカみたい」


 ヘラヘラしながら俺らを挑発してる。

 戦いになってもセレスの方が強いだろうからな……


「本当はわかってるんです……」


 ラピスが申し訳なさそうにセレスに呟く。


「セレスさんは人の気を引くために憎まれ口を言い続けてるんです、そうしないと神は死んでしまうから……」


 んん!?


 生きているためにセレスが憎まれ口を叩いてる??


 あっ!

 そういえば、前にラピスが言ってたような。

 神様は忘れられることが死だって。


 追放されたセレスは神様だけど、思い出させられる機会が極端に減ってしまった。

 だから……


 嫌がらせのように人にちょっかいをだすことで記憶に残ろうとしてる。


 子供じみてると思ったけど、セレスもこう見えて必死……なのか?



「バカにしないで!」


 セレスの口調が変わった。


「悪い印象でも人からの思いを強く向けられてセレスさんは私よりも強い力を持ちました」


 思いの力……?

 人に忘れられると死んでしまう神様の強さはその逆で人に覚えられることにあるってことか。


「知ったようなことを言わないで! 何も知らないのに!」


「はい……セレスさんの心のことはわかりません、でもセレスさんの感じてる恐怖は伝わってきます。だから実態を手に入れたんですよね?」


 実体?

 っていうと……えーっと。


 ラピスは俺以外には見えなかったけど、セレスは他の人からも見える……

 実体があるってすごいリスクだよな、物理攻撃を受けたらいくら神様でも死んでしまうだろうし。


 そうしてまで姿を現したかった理由がある。


 それも忘れられないため、なのか……?


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