異世界探検 (3)
森の中でクマと出会った。
空腹でとても敵う相手じゃない。
いや、それ以前に一般人だった俺では、ウサギか鳥、頑張って犬くらいしか倒せないだろう。
クマを再度見ると、
「おはよう」との朝の挨拶。なんと礼儀の正しいクマだった!
と思ったら人でした。
慌てて挨拶を返す。 「おはようございます」と同時に言葉は通じるのか少し不安になった。
「ハンターさんか? 随分軽装だが大丈夫かい?」
どうやら無事に言葉は通じたようである。神さまの翻訳に感謝する。
「あ、はい。 いいえ...」変な返事を返してしまった。
家出?迷子?記憶喪失?なんと説明しようか迷う。さすがに異世界転移とは信じてもらえないだろうし、怪しすぎると情報ももらえないかもしれない。が、とにかく腹が減っていた。餓死寸前なんだ!
「ハンターではないのですが、森に迷ってしまって、もう数日何も食べてません。何か食べ物を譲ってもらえませんか?」
そう言ってインテリジェントカードを見せる。
すると、?な顔をするクマのおじさん。
「ギルドカードを持ってるなら、ハンターじゃねぇか?」
え、ギルドカード?これギルドカードだったのか?
同時に俺、すでにハンターだったのか!
職業:ハンター を手に入れた。
しかもやっぱりあるんだね。ギ・ル・ド。 なるべく早くその辺の情報も欲しいな。
「初心者でよくわからなくて! 何か、俺に手伝えることはありませんか? 手持ちでなにか渡せるものがあればいいのですが、何もなくて… 」
すると、さらに?な顔をするクマのおじさん。
「ギルドカードにいくらか、入っているようだが、手持ちがないのか? あんた盗賊にでも襲われたか?」
「いや、簡単に言うと迷子でして、三日ほどこの森をさまよっています。たぶんあっちからまっすぐ来ました」来た方を指さす。
「そうか。そんならいいが、まぁちょうど朝飯前だし、飯をくれてやるのはかまわねぇ。しかしその分きっちり働いてもらうぜ?」
「はい!!!!! ありがとうございます!!!!!」
人生で一番きれいなお辞儀をしたと思う。綺麗な90度と声量もバッチリだった。
クマのおじさんは、エブリンという名前らしい。こちらも丁寧に名乗った。名乗った名前はアラタ。ハンター名だ。名字は、この世界のことがよくわからないのでスルーした。
エブリンは、一人で森の小屋に住み、木こりをしている。年を聞くと27歳という自分よりも年下であったが、その巨漢と体毛の濃さからは推測が難しい。
小屋に到着すると、ハムのような肉を焼いてくれた。主食はパンだ。ちょっと触った感じとても硬い。保存食用に作られているみたいだ。カレーとかに浸して食べればおいしく食べれそうだ。
エブリンは、なにも食べていなかった俺のために、ハムを厚く切ってくれた。ありがたい。さっきからよだれがとまらない。早く食べたい。もういっそ焼かなくてもいいから食べたい。極限って今のことか。
木の皿にハムをのせて、スープの代わりに、薄いお茶のような温かい飲み物も出してくれた。
料理をテーブルのうえに並べる手伝いをした。並べ終えて完成だ。
エブリンが座ると、『どうぞ』の目くばせをしてくれた
「いただきます!!!!!」手を合わせてすぐに、木のフォークでハムを突き刺し口に運んだ。
「う、うまい!!!!」そういって涙がでた。
エブリンが驚いている。驚きすぎて引いている気がする。
「こ、こんなゃに うまい ハムぅ はじめて です」涙が止まらなくてうまくしゃべれなかった。
思い起こせば、ここ数日本当につらかった。新しい世界に緊張もしていた。精神も極限状態だったのだろう。水なし、食べ物なし、情報もなし。急に放り出された世界で下準備も何もなしにやっていくこと、前の世界が如何に恵まれた環境であったのかがわかった。蛇口をひねれば水がでる。食べ物もすぐに手に入る。わからないことはスマホがすぐに教えてくれる。
この前までただ、普通のことだったのに、いや普通だったから気が付かなかった。
「幸せだったんだな」ポツリとつぶやいた。
エブリンは何も言わなかった。
食べ終わると同時に、俺は倒れるように寝てしまったらしい。すでにあたりは薄暗くなっていた。




