閉話:アニタのお手伝い
今回は潮風の満福亭の看板娘のアニタ視点です
いつもより短いです
わたしの名前はアニタ、潮風の満福亭という宿屋の一人娘です。
12才ですが、近所に住んでいる友達よりも読み書きも計算も
わたしの方が上手です。
お客さんからの食事のお釣りの計算もバッチリです。
「将来はいいお婿さんを見つけて、より一層繁盛させてね」
お客さんやご近所さんは私をよく褒めてくれるのです
わたしもそれに答える為に努力しています。
☆
朝起きると、まず店の裏にある井戸から水を汲みます
これは大変なんですが、水が無いと何もできないのです。
水魔法も使えますが、台所の桶に3回分が限界なのと
井戸の水の方が美味しいからです。
お父さんの名前はダンと言います、昔は冒険者をやっていたそうです。
料理の腕はミーナの南地区では上位3人に入ると言われています
わたしには優しく、いろいろな事を教えてくれます。
やさしくて大好きです。
お父さんは寝る前に明日の献立を考えながら寝るという、すごい
技を持っています、どうやったら寝ながら献立を考えられるのか不思議です。
お父さんのお手伝いで朝食に使う分の野菜の皮剥きをします。
今では魚の鱗取りも任せもらえるようになりました。
そうこうしている内にお母さんが店内の掃除を済ませて厨房に来ます。
お母さんの名前はアルマ、とっても美人さんと評判です。
ここからはお父さんとお母さんで食事の準備をします
お母さんが凄いスピードで朝食を作ってくれるので厨房が見えるカウンターで
家族揃って朝ごはんを食べます、毎朝美味しいごはんです。
☆
ご飯が終わると、私は厩舎にいるお客さんの馬やロバの世話をします。
わたしが厩舎の前に行くとご飯の時間だとわかるのでみんな寄ってきます。
馬に餌を上げ終わる頃になると決まって魚屋さんと八百屋さんが来るので
二人を厨房に案内します
「アニタちゃん、今日もがんばってるね」
「この時間から一生懸命働いている子供は少ないよ」
「わたしは満福亭の看板娘ですから!」
「そうだね、アニタちゃん抜きだったら大変だね」
お肉屋さんは来ません、近所なので必要な時にお父さんが買いにいきます。
一通り終わると、1の鐘がなるので事前におこして欲しいお客さんの
部屋へ行って起こして上げます。
それが終わると料理を運ぶのを手伝います
朝ごはんは1の鐘から2の鐘と3の鐘の間までですが、みんな2の鐘には
食べ終わってます。
それから出立したお客さんの部屋の掃除です
だいたいこれで3の鐘が鳴るので、一旦私の仕事は無くなります。
あとはお父さんとお母さんにお任せです。
☆☆
ついこの前に鞄を持っていない若い商人さんが家に泊まりに来ました。
初日にうさぎ料理を美味しそうに食べていたのを覚えてます
2日目は翌朝の朝食はいらないと言ってきました。
「たぶんお金がないんだね」
「商人さんなのに貧乏なの?」
「だれかに騙されたか、盗賊にあったかだね」
「運の悪い商人さんは明日には出立するのでしょうか?」
でも帰ってくると金貨をだして長期宿泊を希望してきました
お金が無いというのは誤りだったようです。
商人の人はお金の事を他人にはしゃべらないというのは本当でした。
そして数日後、商人さんはカズマさんというらしいですが、食事を決める
のが面倒なので私に選んで欲しいと言ってきました
お客さんにおすすめを聞かれた事はありますが、長期宿泊のお客さんに
毎日のおすすめ以外でメニューを決めるのは難題です。
お父さんは毎日どうやって献立を決めているのか聞きたくなります。
勇気を振り絞って私が考えたメニューを出すと美味しそうにたべてくれ
お礼も言ってくれました。
そして私の選んだメニューをアニタスペシャルとか言って絶賛してます
しかし、カズマお兄ちゃんは朝ごはんに食堂にくる確率は半分位です。
聞いてみるとご飯を食べるより、寝ている方が楽しいからだそうです
わたしは毎日、1の鐘が鳴る前に起きているのでよくわかりません。
そして運命の日です、カズマお兄ちゃんからチョコレートという
食べ物をもらいました、これは今までに食べたことのない程の美味です
お父さんとお母さんも絶賛です。
お父さんを唸らせるお菓子をくれるなんて何者なんでしょう?
「アニタここに書いてあるものを買ってきてくれる?」
「はい、お母さん満福亭には関係無いものがいっぱいあるね」
「3日後に兄さんが住んでた村へに行くから必要なのよ」
もしかしてこれは、お母さんがいなくなってしまう
私が変な事を考えていると。
「大丈夫よ安心して商隊の人と一緒だから」
ナイスフォローです、でも最近お客さんが盗賊の話をしていたので
ちょっと不安です。
どうやらカズマお兄ちゃんも同行して一緒にいってくれるとの事
商人さんに任せて大丈夫が不安ですが専門の護衛もいるそうです。
、
お弁当は二人分、私が安全を願って作りました。
☆
3日後お母さんが馬に乗って帰ってきました、私の願いは届かず
盗賊に襲われ護衛もピンチの時にカズマお兄ちゃんが盗賊を
全滅させたそうです。
お母さんの話をお父さんと二人で聞くと、盗賊を倒していいか
お母さんに尋ねてから盗賊を倒したそうです、変わっている商人さんだと
思っていましたが盗賊に襲われている最中にゆっくりお母さんに
話かけるタイミングを図っていたそうです。
今日は久々のおやすみです、もちろん満福亭は開いています。
今日は友だちと遊びに行く日です
お父さんにお弁当を作ってもらって2の鐘に広場に集まって川へ行きます。
川は冷たくて気持ちがいいので大好きです、友達と一杯遊べるのは
おやすみの日だけですので、たっぷりみんなと釣りとかします。
楽しい時間は一瞬です、もう夕方帰る時間です
みんなで今日の事をいろいろ話しながら家に向かうのです。
いつも通り仕事をしているとお母さんが何か悩んでいます
聞いてみるとカズマさんが宿の契約が切れても帰ってこなくて
部屋を掃除すると荷物はすでに無いという事です。
何も言わずに出ていってしまったんでしょうか、そんな人には
見えなかったのでちょっとショックですが、男の人は女の人といると
変わるといいます、きっとあの双子のお姉さんが原因かも。
☆
しばらくするとカズマお兄ちゃんが帰ってきました
男の人から初めて髪飾りをもらいました。
今日は昨日からの雨が続いて連日の雨です、なので私は臨時の休日です
朝いつもの時間に目が冷めたので、カズマお兄ちゃんが言っていた
二度寝をしてみましたが、二度も寝れません起きてお手伝いしました。
一人でゆっくり朝ごはんを食べるのは久しぶりです
でも家族でカウンターで食べる方が美味しく感じます。
今日はお客さんがたまにくれるチップを貯めたお金で買い物でもしようかな?
特にカズマお兄ちゃんはしょっちゅうくれるので小金貨5枚分位あります。
いざ買い物へ
と思ったら雨です、残念ですが仕方ありません。
今日も8の鐘がなったらお手伝い終了、着替えて就寝です。
おやすみなさい。
残高:小金貨5枚




