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いつか君へ…  作者: 半纏少尉
決意の刻 第1章決意と訓練と
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閑話 sideジン

俺の名前はジン、グルスト王国ユーリスト公爵領の領都アルカの街を拠点に冒険者をしている。


アルカの街から遠く離れた南の地で依頼を終わらせた帰りにそれを聞いたんだ。


その日はアルカの街に後2日程で帰れる最後の道程でギルドに帰りに受ける丁度いい依頼が無いかと探しに行っていた。


「なぁ、この前の戦争であの『風の四重奏』のローランが死んじまったらしいぜ」


「マジかよ⁉︎」


「あぁ、しっかし分からんもんだなAランクになった凄腕があれくらいの戦争で死ぬなんて。」


「そうだな…やっぱりこの仕事はいつ死ぬか分からんからな、悔いが残らねぇ様に生きねぇと…」


「ハッハじゃあ悔いが残らねぇ様に今日も飲みまくるぞ‼︎」


「おうよ‼︎」


そんな2人組の会話を聞き俺は愕然としていた。


だってそうだろう?あんな強くてもう少しでBランクからAランクになれると言われている俺が見てもあの人の実力が見えねぇ。


ローランさんがパーティを組み、活躍し始めて少し経った頃に俺は、そのパーティに見習い冒険者として一時期お世話になっていた。


その頃から実力にランクが合って無いなんて言われていて本当に強かった。


戦争孤児だった俺は彼らに冒険者の全てを教えてもらいながら日々を過ごし着実に実力を付けていった。


絶対追いついて恩を返すと意気込んでいたもんだ。


ローランさんがパーティの1人アリーシャさんと結婚してパーティは解散したからパーティに返す予定の恩をせめて最初に拾ってくれたローランさん達に返そうと決めていた。


アリーシャさんが子供を産み1年程経った頃だった。


またカリスと戦争が起り、そこにギルドの要請でローランさんも俺も戦争に駆り出され、街が手薄になった時に魔物の襲撃が起こった。


普段であれば兵士なり冒険者なりが大勢いて、多少の犠牲を出しながらも無事終える事が出来たはずだった。


はっきり言ってタイミングが悪かったとしか言いようが無い。


引退した冒険者と戦える男を集め、アリーシャさんが中心となり魔物の撃退に向かったらしい。


なんとか退けた時には無傷の者は居らずアリーシャさんは戦闘中受けた傷が原因で亡くなった。


これも普段であれば街に居る腕の良い治癒術師や薬のお陰助かるはずだった。


でも薬も術師も戦争の為に集められ碌な治癒が出来ぬまま亡くなったそうだ。


戦争が終わり、街に戻るとただただ呆然としてしまった。


人手が足りず処理しきれない魔物の死体と、その戦いで亡くなった家族が戦争に出て他に家族が居ない人の死体。


ローランさんが覚束ない足取りで歩いて行った。


その方向を見るとアリーシャさんの遺体が有った…崩れ落ちるローランさん。


そんな初めて見るローランさんに声も掛けられずいると、ギルド職員がローランさんに何かを話していた。


弾かれた様に走り出し向かったのは良く宴会で使う宿だった。


そこで小さな子供を抱きしめ泣き崩れて居るローランさんと不思議そうにしながら身を捩る子供。


あぁ…この子はまだ母親の死が分からないのだろう。


俺は何処か冷静に考えながらそれを見ていた。


そんな事を回想してしまいギルドの職員に不審がられていたが考え込んでしまった。


(ローランさんが死んだ?って事はっ!?)


不意に気付き走ってギルドを出る、取っていた宿をキャンセルして馬を借りアルカに向かう。


(今、アランは1人じゃねぇか⁉︎あの悲しみは、あの絶望は、絶対1人で背負っちゃ行けねぇ‼︎)


嘗て自分が感じた絶望をあの子が1人で感じて居るなんて考えただけで平静を失う。


休憩を入れず走り抜け1日で辿り着いた。


逸る心を全霊を込めて抑え込みアランが居る筈の家の戸を叩いた。


少しして出てきたアランは思った程悪い状態ではなかった。


少しホッとしながら家に入りアランと話した。


アランが無理して居ないか確認しながら進める会話の途中、アランは言った。


「ジンさん、大切な人を守るのに何が必要ですか?」


それを聞いた時俺は、こいつが自分で心を整理して自分で動き出したんだ。


これならもう大丈夫だ、そう肩の力が抜けるのを感じた。


俺はアランの質問に答えるべく色々と答えた。武力、や地位と名誉、お金や知識など自分に思い付く全てを言った。


少し考えた後アランは「ジンさん、冒険者の僕の後見人になってくれませんか?」と言った。


それを聞いた俺はローランさん達に返せなかった恩が、その息子に、今一番必要としているアランに返せる。


そう思い俺は迷わずアランに見習いの話をして俺が冒険者になるまで面倒見てやると言った。


今迄俺が受けた恩を全てアランに俺が持てる知識を全てアランにそうする事が一番ローランさんやアリーシャさんが喜ぶだろうから。


そうして始まった俺とアランの生活は、アランの飲み込みの良さと鍛錬に打ち込み着実に付ける実力に満足感と少しの嫉妬を覚えながらも続いている。

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