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谷口とは卒業を控えた中学三年のとき、学年全員でディズニーランドに行ったことがある。そのとき、なぜか突然僕に声をかけてきて、一緒にアトラクションに乗ったりした。しかし、その後の詳しい出来事はもう思い出せない。ただ一つ鮮明に覚えているのは、卒業式のリハーサルでのことだ。僕があからさまにやる気のない態度をとっていたとき、教室に戻る途中で谷口が近づいてきて、からかうような笑みを浮かべながら言った。
「大野、何カッコつけてんだよ」
これまでの人生で最高に楽しかった時を挙げるなら、彼と谷口と三人で遊んでいた中学一年の頃だったかもしれないと、しばし過ぎし日の思い出にふけり、僕はふと押し黙った。一緒にいるだけで本当に楽しかったあの頃。けれど、すべてはあっけなく、味気なく終わってしまった。あれは本当に夢だったんじゃないかとさえ思えてくる。
そして、最後に、もう一度だけ谷口に会った日のことを書いて終わりにしたいと思う。
それは、高校一年の夏が始まる少し前のことだった。僕は偶然、道端で谷口とばったり出くわしたのだ。
昼の十一時過ぎ、ぼんやりと歩いていた僕の目の前に、脇道から奴が現れた。こんなところで谷口に出会うとは思っていなかったから、息が詰まるような思いがして、一瞬、立ちつくしてしまった。
谷口のほうは、声も表情もまるで変わっていなかった。あの懐かしくも、生まれつきやらしい顔をした谷口が、いつもの調子で、少し笑いを含んだ声でこう言った。
「大野、この辺で飯食うとこ知らない?」
あの頃と変わらぬ様子で言うものだから、僕も思わず「そこにデニーズがあるだろ」と答えた。横断歩道を渡った先にデニーズが見えていたからだ。
そして「じゃあな」と言い、振り返ることもできずに歩き出した。けれど、胸がぎゅっと苦しくなり、何か大切なものを取り逃がしたような気がした。
もし谷口が本当に僕を好いてくれていたのなら、あのとき、食事に誘おうとしていたのかもしれない。そう思うのは、きっと僕自身が、心のどこかでそれを望んでいたからだろう。
「なんだよ谷口、久しぶりじゃんか。デニーズでお茶でもしようぜ」
——本当は、そんなふうに冗談めかして言いたかった。
でも僕には、それができなかった。そんな自分が、嫌で、嫌で、胸が張り裂けそうだった。
交差点を左に曲がり、高戸橋まで来たとき、胸の奥に、風吹先生の声が聞こえるようだった。
みんなが応援しているときに、応援できない子がかわいそうだって。
歩きながら、僕は自分の心の奥を見つめ、こう呟いた。
「本当、かわいそうな奴だな――」




