エンカウント
「そうか、先祖からの因縁があるのだな」
「乱世や世界の移り変わりにドラゴンって奴らは…
よっ!!…現れるらしいからな!!
シャアアア!!!」
「「ナァァァァ!?」」
「あまり動くなよ、カリン?
フッ…!」
ルシオラから魔槍とレガリアナの昔話と
ドラゴンとの因縁を聞いていると
インサヌマン・タイガーの群れに襲撃され
泣き叫ぶカリンバとナーちゃん※を守りながら
(※ルシオラが生み出したカワイイドラゴン)
ゆっくりと山頂へと歩を進めている。
「それにしてもこんな修羅場で鍛えてるとは
ルシオラ、君は本物の戦士だな」
「いやいや!!
普段はこんなに大量に
猫が湧く事なんてないよ」
「この状況で何でそんなに余裕綽々で
会話してられんのよ…マジヤバタニエン」
「ナァァ…」
虎達を薙ぎ倒しながら前進していると
前方から無数の虎達が
光の槍に突き上げられているのが見えた。
それを見て曇りの晴れた表情をするカリンバ。
「あれって!!」
モーセの如く
無数の虎達を割って正面から
ディーバちゃんがぼっーとした顔で
ゆったりと散歩中みたいに歩いて来た。
「お前達に追いついてしまったか…
お、何か知らない顔が増えてる」
「どもっ!!
俺はルシオラ、よろしくな!」
「大天才魔術師のディーバちゃんだ」
「よろしく、ディーバちゃん」
握手を交わした2人はまた
襲い掛かってくる虎を屠り出す。
抱えてるナーちゃんと震えているカリンバは
ディーバちゃんに進捗の方を確認した。
「ディーバ、結界の方はどうだったの??」
「どうやら村の方でなく
村の周りの龍脈を使った代物らしいので
一帯の龍脈を調べていたところだ」
レガリアナに関する情報がない
ディーバちゃんの口からは
先程ルシオラから聞いたのと同じ情報が出てきた。
やはりS級冒険者ともなると
戦闘能力だけでなく知識や情報量に
状況に合わせた臨機応変さも備わっているようだ。
是非とも見習わさせて頂く。
「何とかなりそー?」
「あぁ、時を経て
龍脈の流れや龍穴の規模が変わったから
術式に手を加えてやれば
魔除の効果を取り戻す事が出来るぞ」
それを聞いてカリンバとルシオラは安堵した。
「そうか!
先祖様とレガリアナの
結界は未だに村人達を守ってくれて
いたのだな…良かった」
涙を滲ませるルシオラ。
顔に似合わず情熱的な男だ。
「おっしゃ!
気合い入れて猫と戯れてやるか!!」
ルシオらの魔槍が蒼白い稲妻を纏い出す!
彼自身も帯電したのか髪の毛が逆立ち
黒かった髪の色も青く蒼く輝き出す。
「『心装・雷神舞』…!!」
「凄まじい闘気だ…魔力や力の巡りが
人間を超越している…!!」
言うなれば、存在としての規格が昇格している。
疑似的な神と言った方が的確か。
「ディーバちゃんもあんな強大な魔力は
初めて見たぞ!!」
「えぇーッ!?
それって、この山ごと粉微塵にしてやるぜぇ!!
的な奴って感じー!!?」
虎達も目の前の人間が放つ凄まじい
力の波動を前に怯え切って後退している。
「皆、ちょっとだけ伏せてて!!」
言われた通りに全員が地に伏せると同時に
ルシオラの姿が消えた。
そして辺り一帯を一条の稲妻が駆け巡る。
ビュウッ…ゴウゥッ…バチバチィッ…
俺達の頭の上ではルシオラが踊る様に
飛び、跳ね、抉り、穿ち、殺していた。
「何何何何〜!?!?」
「完全に理解したわ(理解してない)」
「ナァ…?」
「落ち着け、ただ音速以上の速さで
槍を振るっているだけだ」
俺でも、サレスの肉体と魔力だけでも
充分に躱せる程度の速さだ。
恐らくまだ全力ではないはず。
大きな穴を穿たれ
虎の死体の上に新しい虎が重なっていく。
そこから滴る鮮血が海の様に波打つ。
「彼と出会った窪地でも
同様の事が起こっていたようだな」
2回以上連続で使う事に躊躇がない。
ルシオらの本気はこの程度ではないという事だ。
「分析しとる場合かぁッー!!?」
やがて5分程経過し
辺りの虎の全てが骸となった頃に
ようやくルシオラは静止して
新たに出来た死体の山の上に座した。
「ふぅー、いい汗かいた!!」
「はい、タオル」
「ありがとう、サレス」
「ルシオラもそうだけど
サレスちゃんって結構な大物だったりしちゃう?」
「ディーバちゃんの魔眼によると
お嬢の戦闘力は53万…くらいだな」
フリーザか何か俺は?
「53万とか言われても全然分からん。
さっきのルシオラとならどっちが強いのさー?」
「お嬢があのままで拮抗しているか
僅かに戦士の方が勝る感じだな。
だが、お嬢はまだ変身を3回も残している」
そんな奇怪な事が出来るわけなかろう。
目が光り出した状態を変身と呼ぶなら
1回は変身出来るが。
虎がようやく全滅した事で
冷静になったカリンバは改めて
状況を分析し始めた。
「インサヌマン・タイガーが
2-300体同時に発生なんてね」
ディーバちゃんも死体の山を見上げながら
カリンバに続ける。
「本来は単独行動するプライドの高い生き物だ。
集団行動を取るなんて何か
異常事態が起きてない限り絶対に無い」
「ドラゴンだろうな!間違いなく」
「ナァァァア!」
「ドラゴンは縄張りと決めた場所を
何箇所か持ち、数十年周期で
移動すると聞いた事がある」
「じゃあ、ルシオラの先祖の方のルシオラが
戦った奴が帰ってきたってわけ!?」
「その可能性は高いだろうな…
このディーバちゃんの第六感がそう言っている」
「しかしドラゴンとこの霧の関係が解せないな!」
ルシオラが首を傾げながら降りてくる。
「ドラゴンが新たな能力を獲得したとか?」
「未知の部分が多いからな、そうかもしれん」
「だが俺の先祖の伝承には
濃霧なんて欠片も出てこなかったぞ?」
「アタシもドラゴンが霧を支配したって
話は初見だなー」
そうなると、可能性としては。
「ドラゴンとはまた別の原因が存在している、か」
「…最悪なケースだが、それが一番濃厚だろうな。
ディーバちゃんの第六感も…」
「ドラゴンだけでも厄介なのに…」
「ではドラゴンを討伐する班とは別に
霧の原因を調査をし排除する班も必要だな」
「…本当に討伐出来るかもだよね、皆がいれば!
でも、流石にあのドラゴンを
相手に二手に分かれるのは
無謀だと思うんだけど?」
未知数の能力を持つ相手に対して
戦力を分散させるのは下策だ。
カリンバが正しい。
「そうだな!
先祖様が手を焼いた相手だ。
侮る様な真似は許されないだろう」
「ならば、先にドラゴンを討伐し
後に全員で霧の原因の調査・排除だな」
「よし、ドラゴンを討伐するぞー!!」
「「「「おー!!」」」」
俺の掛け声に合わせて皆で円陣を組んで腕を空高く上げると
空から巨大な影と顔が我々一行を睥睨してきた。
隻眼のドラゴンだ。
「ギィアァアアアアアァアアア!!!!!」
「こんばんは?」
チェシャの声がすぐ近くに聞こえる。




