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その悪役令嬢、天下無双の武神になりて。  作者: 卑下流
第一章:サレス・レディールは死んだ。
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竹林と滝のある露天風呂は雅といえないのだろうか?




少年の採寸が終わったので

服を職人面の店主に仕立てて貰っている間に

俺とラウルは宿屋の中にある浴場に来た。


長い洗い場の奥には

青々とした竹林が茂っている。


何故風呂に竹林が???


「人いないね、魔女様」


「貸し切り同然だな

 だからってはしゃすぎるなよ?」


「お風呂って身体を洗う以外に

 やる事があるの?」


「浴槽で泳いだりアヒル浮かべたり…

 後はサウナくらいかな」


「さうな?」


サウナ…よくその言葉を聞いていた感じがするが

あまり思い出せない。


「ここ座って、ラウル。

 洗って進ぜよう」


「よ、よろしく…?」


埃や汚れに脂でベタつく髪から洗っていく。

湯水で流してやるだけでも相当汚れが落ちた。

ラウルの地毛は綺麗な赤色をしている。


「何か良い匂いがする…!」


「石鹸の匂いだ。

 初めてか?」


頭皮をマッサージしながら洗っているので

泡立ちが凄く石鹸の匂いも一帯に漂っている。


「うん、初めて」


「捨て子だと言っていたが

 街の人は助けてくれなかったのか?」


「ううん。

 でも、なんだか申し訳なくて」


自分の事より他人の事ばかり…

生まれながらに優しい子だ。


「私の騎士になったからには

 私の為に命を捧げて貰うぞ?」


「うん、頑張る」


「その為にまず

 ご飯食べて勉強して強くなって貰う」


どうにも先程の事件を見る限り

フルーゴル領を守る騎士達のレベルは

お世辞にも高いとはいえない。


団長だか代理だかのクラヴィスがいなければ

強敵を相手に蹂躙されてしまうだろう。


そんな騎士団からクラヴィスを抜いてしまえば

世紀末めいたフルーゴル領の治安は

悪化の一途を辿るかもしれない。


ならば、手ずから最強の騎士を育てればイイ。


「流すぞ、目瞑って」


「うん」


「…犬かお前は!」


しっかりと頭を流してやると

水浸しの感覚が嫌だったのか

犬の様に頭を振って水分を飛ばすラウル。


泡が流れ去ると

彼の綺麗な緋色の髪が現れた。


「明るい黄緑の瞳と相まって

 かなり男前だな」


「おとこまえ?」


「カッコイイって事さ。

 次は身体を洗うから

 手上げといて」


「カッコイイなんて初めて言われた…」


「頑張れば私以外にもそう言ってくれる人が

 増えるかもな」


「…カッコイイ…」


筋肉量や骨格を調べるがてらに

くまなく隅々まで洗っていく。


溜まった垢や汚れが剥がれていき

若々しい肌つやが復活する。


うん、今の筋肉量は少ないが

骨格が中々しっかりしている。


「ラウルは今何歳なんだ?」


「えっと、8歳くらい」


体格の割には幼いな。

サレスが今150cmちょいでそれより

少し小さいから…大体145cm位だろうか?


「でかい…」


「なに?」


「何でもない。

 それより身体も流したんだ。

 早くお湯に入ろう」


「うん…おわっ?!」


「滑りやすいから気をつけろ?

 …ほら、手繋げば大丈夫だから」


「ありがとう」


謎の竹林を抜けると大きな滝のある

露天風呂が広がっていた。


「この世界の風呂はどうして

 マッチョやら竹林やらと

 雅のカケラも無い物を置こうとするのだ」


「あの滝、おっきい…!」


温泉に在っていいレベルじゃない大きさだ。

華厳の滝くらいはある。

湯気が発生してるのであれが源泉らしい。


「ちょうど良い湯加減だな

 …ふぅ~」


500kgを超える大剣を持ち上げたからか

凄く染みる。


「あっつ!」


「ゆっくり慣らしてきな、ラウル」


「魔女様、魔法使ってるでしょ?

 こんなあついの入れないよ!」


いやー?

44℃くらいだから人間なら

誰でも入れると思います。


熱いとは言いつつ興味津々なのか

何度も足をつけては「あつい!!」と

徐々に慣れて来ているらしい。


5分くらいして肩まで浸かれたラウルは

そそくさと俺にくっついた。


「おやおや、意外と甘えん坊なのかな?」


「うん、初めて来たところだから

 迷子になったらいやだ」


「なっちゃえば?」


「いやだ、恥ずかしいよ…」


子供っぽいところもあると思えば

背伸びしてる感じもする。


どこの世界でも少年少女というのは

輝かしい存在だ。


「魔女様は何歳なの?」


初めてのラウルからの質問!

少しは信頼を得られたかな。


「サレスは14才だ」


「そうなんだ!

 おっぱいが大きいから

 16才くらいかと思ってた」


「そこで判断してたのか」


確かにデカい。

なんならまだまだ成長する予感すらある。

おかげで刀は振りにくく

肩凝りが凄い。


胸元に視線を感じて

ラウルの方を見ると

どうやら胸が気になっているらしい。


「…触る?」


悪戯っぽく微笑んでみる。

少し目を輝かせながら

ラウルは即答した。


「うん!」


触るんだ。


「…随分遠慮気味に触るんだな」


「凄い柔らかい…!!」


おっぱいの側面を人差し指で

軽く突つくラウル。


もっとガッついて来るかとも

思っていたが意外と紳士的で安心した。


一通り触り終えると

満足したのか口元まで

湯に浸かってまったりするラウル。


「どうだ、気持ちいいか?」


「うん、ここ好き!」


「それは重畳」


目を閉じると滝の音や竹の葉が風に揺れる音

俺とラウルの息遣いだけが聞こえて

とても穏やかな気持ちになる。


存外滝や竹林が温泉の中にあるのも悪くない。

ただ、マッチョな像はどうかと思う。


「…ラウルには

 王国最強くらいにはなって貰おうかな」


やたらに多いAランク冒険者とやらは

少なくとも王国指折りの実力という程ではない。


「まずはAランク冒険者より強くなれ

 ラウル」


「Aランクの上ってあるの?」


もっともな疑問だ。


「私にも分からん

 その件は後回しだ。


 番頭さんだか宿主だか知らんが

 牛乳が売っていたし

 飲みにいこう」


「ぎゅーにゅー?」


聞き慣れない言葉に目を輝かせる

ラウルの手を引いて

俺たちは温泉を後にした。










ブックマークと高評価が(私の中の価値として)高すぎる!

ヨロぴくね~♪

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