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ヤンデレ世界遺産  作者: 青木りよこ
5/5

私の夫

取材ですか?

それはすごいでね。

芸能人みたい。

そう言うの興味ありましたかですか?

あんまり、私は何といっても二次元ですね。

夫と出逢うまで、三次元の男性を好きになったことはありませんでした。

初恋は夫?

勿論です。


私の夫、恥ずかしいですね、これ。

私の夫はものすごく美男子で、背も高くて足も長くて、京大出てるんですよ、お医者さんだったんです。

そんな人が何故私みたいな、これと言って目立つような美少女でもない私を見初めてくれたのかは分かりませんが、夫は初めて一緒に食事に行ったときに私にプロポーズしてくれました。

当然私は引きましたが、私は彼の見た目が最高に好きだったのと、余りに必死で呼吸すら忘れている様に見える彼を自然と可愛いと思い、付き合うことにしました。


奥様は可愛いですよ?

ありがとうございます。

記者さんも可愛らしいですよ。

ちなみに記者さんは男性ですか?

我らに性別はない?

それは良かったです。

夫が嫌がりますから。


もう死んだからいい?

そんなわけないです。

死んだからといって、私があの人のものでなくなるとかありえません。


彼は可笑しな人でした。

結婚してからもずっとおかしかったです。

彼は私に出かけてほしくないため、何でも買ってくれました。

一日中家にいられて、掃除と洗濯と食事の用意くらいしかすることもなく、漫画を読んで、ゲームして、昼寝すると言った暮らしは私にとって天国でした。

だから長続きしなかったんでしょうね。

私結婚して三年で死んでしまったんです。

でも、まさか夫が家に火をつけるとは思いませんでした。

そして、自分が幽霊になってしまうだなんんて。


夫だけが私を見えないんですね。

皆さんには見えるのに。

それは悲しいですけど、でも来月からはずっと一緒です。

あの人には見えなくても、私には見えているから、まあいいかなって。


私夫の顔がすごく好きだったんです。

夫も私の顔がすごく好きみたいで、誰にも見せたくないとよく言っていました。

私達は似合いの夫婦だったと思います。

私は結婚してからは誰にも会わないようにしてましたし、外出する時は眼鏡も帽子もマスクも欠かしませんでした。

でも私が夫にしてあげれたのはそれだけでした。

私は幸せでしたし、夫もまあ、不幸ではなかったのではないかと思います。

残念だったのは子供だけです。

でも、夫は望んでなかったし、人類が滅亡したことを思えば、これで良かったとも言えます。


生まれ変わっても夫婦になりたいですか?

勿論。

なりたいですよ。

私はあの人のこと、大好きでしたから。


展示物「ヤンデレ」は公開期間を終え、移動となった。

移動先は古代人類幽霊館で、十代にしか見えない腰までの黒髪の美しい女性の幽霊と一緒に展示されることとなった。

登録名は「ヤンデレ夫婦」

機械の身体となり、決して死ぬことのない古代人類の生き残りである黒髪の陰鬱な美貌の成人男性がソファに座り、目を閉じているすぐ傍に、優しい笑みを浮かべた幸せそうな幽霊が一人。

男が瞳を見開き虚空に見出すは、思い出の妻か、今確かに存在する妻か、誰にも知ることはできない。

ただ、二人は妙に幸せそうなので、見る者の心を揺さぶるのだ。


男がベッドに横たわると、妻は甲斐甲斐しく膝を差し出した。

男は不思議そうに目を丸くした。

妻が優しく、男の黒髪をすくと、男はそのまま瞳を閉じ、手を伸ばした。







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