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少女騎士団は今日から僕のハーレムになりました  作者: 真木あーと
第四章 それでも、それでも結束は──
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第58話 怒りの果てには何も残らない

「でも、これで君は二人の忠臣を失い、僕は一人の忠臣を得た。さて、君、名前は?」

「シェラーマナですぅ……ルンジさまぁ。大好きですぅ」


 ルンジールに甘えるように抱き着く、シェラ。


「シェラ! そいつは敵だ!」

「ルンジさまぁ……」

「ふふっ、もう君の声は届かないよ」


 ルンジールはシェラの髪を撫でながら、笑う。

 その仕草が、妙に癇に障る。


 シェラは自分とマエラと三人で育ってきた仲間であり、大切な友達であり、また、将来の妻でもある。

 そのシェラの愛を、いとも簡単に能力を使って奪っていった。



「シェラを返せぇぇぇぇ! ルンジール!」



 あの髪に、触っていいのは自分かマエラだけだ。

 それが独占欲というならそれでいい、シェラの全部を自分で受け止めてやる。


 あの子は、僕のものだ。


 シェラが奪われた。


 サイも失った。


 これまで共に戦ってくれ、そして信頼しあっていた、頼もしき、そして愛すべき二人が、この一瞬にして奪われた。



「返せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」



 エメフィーは穏やかだとは言い難い性格だが、それでもあまり怒ることはない、明るい性格だった。

 だから、ここまで怒りが湧いてきたのは初めてだ。


 先ほどのアメランの爆発のような、強く、強大に湧き上がる怒り。

 自分でも自分を制御することを諦めた。

 もう自分を止められない。


 気が付いたら、剣を抜いてルンジールへ走っていた。


「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」


 そして、ルンジール目がけ一撃を──。


「っ!」


 だが、その前に立ちはだかるシェラの槍に止められる。


「やめ……ろ、シェラっ!」

「ルンジさまを殺そうとする敵! 殺す!」

「違う! シェラの敵がルンジールなんだよ!」


「殺す! 殺す! コロス! コロス!」

「やっ……めっ……」



 ルンジールしか見てなかったエメフィーだったが、シェラの攻撃があまりに鋭いので、シェラに集中するしかなかった。

 練習の時とは違う、本気で自分を殺そうとするシェラを相手に気を抜くことは出来なかった。


 話すことすら、出来ない。

 このままどちらかが死ぬまで戦うしかないのか?


 シェラに殺されるならそれもいい。

 だが、このシェラは、ルンジールを愛するシェラだけには殺されたくはない。


「殿下! 能力をかけた者が死ねば、能力は無効化します!」


 マエラが言うが、この状況ではどうすることも出来ない。

 シェラを何とか無力化するか、少なくとも大きな隙が無ければ何も出来ない。


 だが、そこまで実力差のないシェラを、無傷で隙を作るのは非常に難しい。


「えい~」


 間の抜けた声。


 それと共に強烈な突風、というか、ぽふん、という巨大な空気の移動のような現象が発生する。

 それは、軽いサイが向こうに転がっていくほどの力だ。


「チャンス!」


 その瞬間、隙を見つけたエメフィーが走る。

 そう、その風は、軽いシェラがよろめくほどの力があり、そして、多少それより重量のあるエメフィーやルンジールにはそこまでの力ではない。


 更にそれはエメフィーにとっては追い風だ。

 それは、瞬きするほどの、ほんの一瞬のことだった。

 エメフィーは浮き上がってバランスを崩すシェラを追い抜き、ルンジールに迫り、そして──。



「────────────っ!」



 一閃。


 それは、声にはならなかった。

 エメフィーの剣筋は、ルンジールの首筋から脇腹に達した。


 余裕の表情で立っていたルンジールは、表情を変えないまま、声もなく崩れる。

 確認するまでもなく、即死だろう。


「…………」


 絶命した彼の亡骸を見下ろす。

 これはもう、自分の兄ではない。

 本人も言っていたが、魔姫(まき)の使いに過ぎない。


 だが、もし、(さら)われず、自分の兄として王宮にいたら。

 自分は弟として、彼を慕っていたのだろう。

 将来王になるという責任感から解放されていた自分は、妹のララフィーのように自由に我儘に生きていたことだろう。


 どうしてこうなってしまったのだろう?

 どうして血を分けた兄と、殺し合う敵同士になってしまったのだろう?


「殿下……お疲れ様でした」


 背後から、マエラが優しく抱きしめてくる。

 賢い、姉のような彼女は、自分の気持ちを十分に理解してくれているのだろう。

 だから、自分はそれに甘え──。


「マエラ、ありがとう。もう大丈夫だ」


 振り返ったエメフィーは、マエラを抱きしめてそう言った。

 甘えることは、なかった。

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