表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女騎士団は今日から僕のハーレムになりました  作者: 真木あーと
第四章 それでも、それでも結束は──
57/64

第57話 絶対に、絶対に、裏切らない。

「……ちょっとだけ、時間をくれますか?」

「ああ、じっくり考えて欲しい」


 これほどまで重要な判断を、エメフィー一人では出来ないと思った。


「マエラ、ちょっとこっちへ」


 マエラを隅に呼んで、話をすることにした。


「……どう思う?」

「疑わしいのは確かです。ですが、私──私たちは魔姫(まき)を知らないのも事実です。それが真実である可能性もあります」


 この件に関してはマエラも慎重だ。


「真にしろ偽にしろ、倒すのなら結果は同じなのですが……こちらも決死の覚悟で来ていますし、しなくていい戦いならしたくはありませんし」


 怒らせて、討伐に失敗すれば、世界が再び魔族に制圧されることだろう。

 これは騎士団だけの、そして、ジュエール王国だけの問題ではないのだ。

 だが、それらも全て、嘘だったとしたら?


 それで時間を稼いで、本当に研究を完成して、完全な抗体を作ってしまったらどうなる?

 エメフィーのフットワークとマエラの知識、これまであらゆることを決定して来た二人でさえ、今回の決断には躊躇せざるを得なかった。



「君は、エルフの子なんだね?」



「あ……はっ! エメフィー殿下にはよくしていただいております」


 エメフィーとマエラが悩んでいる間、退屈だったのか、ルンジールがサイに声をかける。

 サイは敵かも知れないルンジールにどう対応していいか迷ったが、一応は王子であるため膝を付き、答える。


「そんなにかしこまらなくてもいいよ。僕は王子じゃない、ただの魔姫(まき)の使いに過ぎないんだ」

「ですが……」

「本当、構わないから」

「は、では──」



 サイが、立ち上がる、その瞬間だった。


「っ!」


 ルンジールは、サイのその唇を、自らの唇で奪った。

 呆然とするサイ。


「んぐっ!」


 ルンジールはサイを離し、唖然としていたシェラにも近づき、キスをする。


「アメラン、離れて!」


 エメフィーの声に、アメランが逃げる。


「二人、か。まあまあかな」


 ルンジールは先ほどと違い、不遜な態度で笑う。


「お前! 僕の兄上じゃないな!」

「いや、僕は君の兄さ。この、王族にしかない能力を持っているのが証拠だ。ただ、骨の髄まで魔姫(まき)様の栄光を願うだけだがね」

「くっ……!」



 油断した。

 これは明らかな油断だった。

 ここは魔姫(まき)城で、出て来るものは全て敵なのだ。


「君の最強の戦士は、今日から君の敵になる。さて、君と僕、どちらが強いかな?」


 余裕のある、ルンジールの態度。

 おそらく、高速戦において、この二人を抑えておけば勝てると踏んでいるのだろう。


 アメランの呪文は時間がかかる。

 高速戦はエメフィーも可能だが、シェラとサイ、最強の二人相手は不可能だ。

 シェラと戦っている時、サイに矢を射かけられたら(かわ)せない。


「ぐっ……アァァァァァァァッ!」


 サイが叫ぶ。

 おそらく自分の中の心と戦っているのだろう。


「ふふふ、(あらが)っても無駄なのにね。可愛い子だ」


 ルンジールはまだかかり切っていないサイから少し離れる。

 かかり切るまでの間に、襲いかかって来ることを警戒したのだ。


 危険は冒さない、ただ、かかり切るのを待っていればいい。

 だが、サイはその時、信じられない行動を取った。


「アァァァァァァァァァァァァッ!」

「な……っ!」

「サイっ!?」


 矢筒から矢を一本取り出し、その矢じりを、自らの膝に突き刺した。

 矢は膝を貫通する。

 骨を貫き、自分の膝を壊す。


 それは死ぬより苦しい激痛が走ることを理解している者なら、相当な胆力と覚悟がなければ出来ない。

 それを、サイはやってのけたのだ。


「まさか……自分を自分で戦闘不能にするために……?」


 マエラの驚愕の声。

 それは、自己犠牲、などというレベルの話ではない。

 ルンジールの能力にかかって、自分が完全にエメフィーの敵になってしまう前に、自らを戦闘不能にしたのだ。


 敵になったサイは強敵なんてものではない。

 それを自分でもよく分かっているサイが、自らを壊したのだ。

 サイは、しばらく絶叫を上げると、そのまま痛みで気を失った。


「ふふっ、忠臣で羨ましいね」


 それを、軽く笑うルンジール。


「……笑うな」


 サイの決死の忠誠を軽く嘲笑するルンジールに対する殺意は、兄であるという遠慮を遥かに超越した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ