第46話 サイは王子に身体を確認された
「いいお湯ですぅ」
「ですね~」
「…………」
気が付くと三人並んで温泉に入っていた。
仕切りに入って、二人が脱ぎ出したので慌てているうちに、エメフィーの服も脱がされてしまった。
二人とも全く恥ずかしがらない上に、エメフィーの身体に興味津々なので、エメフィーも男の子と女の子が、なんて言っているのも馬鹿らしくなった。
恥ずかしげもないアメランの裸を見ても、思ったよりも胸があるなこの子、と思っただけに留めた。
それ以上は男の子が出てしまうので考えないようにしよう。
だが、アメランの方はそうでもなかった。
「……あのさ、見るのは別にいいんだけど、そんなにじっくり見られると恥ずかしいんだけど……」
逆にまじまじと見られ、エメフィーの方が恥ずかしくなっていた。
「見てませんよ~。見てません~」
「いや、そんなに高速でチラ見されても同じだけどさ」
「だって~見たいです~」
可愛いアメランに懇願されるように言われると、エメフィーとしても無下にできない。
「……分かったよ、好きに見ればいいよ」
「わ~い」
アメランは、エメフィーに覗き込むように股間を見始める。
エメフィーは股間を見られる恥ずかしさと、目の前に女の子の裸体を突き付けられる双方に戸惑う。
アメランがエメフィーの股間に近づくことでエメフィーもアメランの裸体に近づいてしまうのだ。
「……あのさ、二人はどうして恥ずかしくないの? 僕男の子なんだけど」
「はい?」
「え~」
エメフィーの両隣で胸も隠さず湯に浸かっている二人に聞いてみた。
自分だったら男と風呂に入るなんて、絶対嫌だ。
見るのも見られるのも恥ずかしいなんてものではない。
「どうしてって、それは、エメさまだからですぅ。ずっと一緒に入ってたじゃないですかぁ」
「そうですね~。エメさまはいつも私のお尻を可愛がってくれましたし~」
今思うと、とんでもないことをしていたのだが、シェラやアメランは自分が男だったと知った今となってもそれを嫌だと思っていない。
「じゃあ、僕じゃなかったら嫌ってこと?」
「殿方に~、お尻をお見せするなんて恥ずかしいです~」
「いや、僕も殿方なんだけど!」
エメフィーはまだ時々忘れそうになるが、自分が男だと肝に念じている。
「ですが~、マエラさんとかシェラさんとかとは、ずっと入ってたんですよね~。女の子の裸を知り尽くしてる方なら、見慣れてるでしょうし~」
別に知り尽くしてなんていないよ、と言いたいところだが、残念ながらアメランの言う通り、エメフィーは他の同年の男に比べたら、女の子の身体を熟知していると言ってもいいかも知れない。
「それに、ここにいるみんな、エメさまが男の子……えっと、殿方? だって分かってもついて来てるですぅ。自分たちの、女の子の騎士団の団長って認めてついて来てるです。だからみんな、エメさまになら裸を見られても構わないと思ってるはずですぅ!」
「……そうなの?」
「そうです~。みんな~、エメさまにじっくり見てもらいたいと思ってるです~」
「そ、そっか……」
変に気を使い過ぎていたのかもしれない。
自分はこれまで自分のことを女の子だと思っていたし、今でも急に生き方が変わるわけでもない。
無理せずに、これまで通り、女の子として振る舞っても問題ないし、誰も文句は言わないだろう。
確かに自分は男だし、性欲もあるから女の子の身体に触りまくったりして来たが、それも許されてきたのだ、今後もその程度なら変わらないだろう。
「分ったよ! 僕はもう気にしない! ここも僕専用じゃなく隊長以上専用にして、みんなで入ろう!」
「はい~」
「いい考えですぅ」
性欲がどうとか、そんなことはどうでもいい。
今まで楽しかったことはこれからも楽しくしていこう。
それは、許されることなのだ。
実はこれはある程度正しくて、だがある程度間違っている。
この二人のように見られても平気、というのは全ての少女には当てはまらないだろう。
確かにエメフィーが男でも騎士団長としては認めるが、だからと言って裸の付き合いが出来るかといえば、それは別問題だ、という少女も多いことだろう。
この二人が特殊な存在である、ということはこの二人には分かっていない。
マエラがいるなら理解してエメフィーにも教えてくれるだろうが、そのマエラも、今この場にはいない。
だから、エメフィーが暴走しても、それに乗りかかる人間はいても止める人間はいないのだ。
「よし、じゃあ、もう一人のサイを連れて来よう!」
「はいですぅ!」
「恥ずかしがるようなら無理やり連れてきて慣れさせよう!」
「は~い!」
その後、仕切りを飛び出した三人は、一般風呂に浸かっていたサイを捕まえて連れて行こうとした。
それに気付いたサイは逃げようとするが、誰よりも素早いエルフは、全裸でかつ湯の中ということもあり動きが鈍り、囲まれてすぐに捕まり、仕切りの中に連れて行かれる。
逃げないように、両脇をエメフィーとシェラでしっかりつかんで四人で湯に浸かった。
それだけでもサイは真っ赤になって目を潤ませていたが、何とか耐えていた。
だが、そのうち、エメフィーに魔がさした。
サイは白髪だが、下の毛も白いのかな? という好奇心を、止められなかったエメフィーが、身体の軽いサイをひょい、と持ち上げて股間を確認した。
目にも止まらぬ戦闘で、獣人と互角に戦い、空飛ぶハーピーを数匹仕留めた本日一番の活躍者であるエルフの戦士サイラーネ・カッシーダ。
彼女はエメフィーのためなら死んでもいいと本気で思っているほど忠義の者だ。
そんな彼女が、騎士団最高クラスの戦士が、エメフィーのちょっとした好奇心の行動に、まるで大切なものを奪われた女の子のようにしくしく泣きだした。
さすがにエメフィー達三人は慌てて、見られたいって言ったじゃないか、と責任転嫁するエメフィーに、さすがにあそこまでやるとは思ってなかった、とまた転嫁するアメラン。
少しの間ああだこうだ言っていたが、結局全員で際に平謝りすることになった。




