第6章:夏休み前の最後の日
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
今回の第6章では、キラナたちにとって夏休み前の最後の学校の日が描かれます。
いつもの授業とは少し違い、最後のロングホームルームや夏休み前の大掃除をしたり、友達と話したりしながら、一学期最後の学校生活を過ごしていきます。
そして、学校が終わったあと、キラナたちはそのまま帰らず、桜森ふれあい広場へ寄り道することに。
そこで、これから始まる夏休みについて話したり、休みの間もまた会おうと約束したりします。
キラナにとっては、日本の学校へ転校してから初めて迎える長い夏休みです。
それでは、キラナたちの「夏休み前の最後の日」を、どうぞお楽しみください。
2019年7月19日(金)― 午後
ついに、桜森中学校の校舎中に下校のチャイムが鳴り響いた。
キーンコーンカーンコーン!
その音は、その日の授業がすべて終わったことを知らせていた。
田中先生とのロングホームルームも、ちょうど終わったところだった。
田中先生は教室の前に立ち、クラス全員を見渡した。
田中先生:「はい、みんな。今日のロングホームルームが終わったということは、夏休み前の学校生活もこれで終わりです。でも、本当に帰る前に、もう一つやることがあります」
ハルトはすぐにため息をついた。
ハルト:「まさか……大掃除?」
田中先生はうなずいた。
田中先生:「そう。今日は夏休み前の大掃除をします」
ハルト:「えぇー……」
ハルトが嫌そうな声を出すと、アイカが小さく笑った。
アイカ:「ハルト、『掃除』って聞いただけでもう文句言ってるじゃん」
ハルト:「だって、いつもの掃除でも疲れるのに、大掃除なんてもっと大変じゃん」
レンは眼鏡を直しながら言った。
レン:「じゃあ、夏休み前のトレーニングだと思えばいいんじゃない?」
ハルト:「何のトレーニングだよ?」
レン:「怠けないためのトレーニング」
カイトがすぐに笑い出した。
カイト:「ははは、言われてるぞ」
ハルトは不満そうな顔をする。
ハルト:「なんでみんなレンの味方なんだよ?」
キラナも笑った。
キラナ:「まあまあ、ハルト。これが終わったら、本当に夏休みだよ」
ハルトは少し黙ってから、うなずいた。
ハルト:「……それなら、頑張る」
田中先生は、これから行う掃除について説明を始めた。
田中先生:「夏休みの間は学校がしばらく使われないので、今日はいつもの掃除よりも念入りに学校をきれいにします。自分の担当する場所は、最後までしっかりきれいにしてください」
生徒たち:「はい!」
説明が終わると、キラナたち五人もそれぞれ机を整え、必要な掃除道具を取りに行った。
アイカは、クラスに配られた担当表を見ながら言った。
アイカ:「キラナ、今日はけっこう忙しくなりそうだね」
キラナは担当表をのぞき込んだ。
キラナ:「わあ……いっぱいあるね」
レンも担当表を見る。
レン:「いつもの掃除より多いね」
ハルトはほうきを手に取りながら、ため息をついた。
ハルト:「今日は最後までほうきと友達になりそうだな」
カイトがハルトの肩を軽く叩いた。
カイト:「友達になるだけじゃなくて、ちゃんと使えよ」
ハルト:「ははは、分かってるって」
そして、みんなは掃除を始めた。
今日は、教室の床だけを掃除するわけではない。
桜森中学校の生徒たちは、それぞれ担当する場所に分かれ、教室や廊下、窓、その他の校内の場所を掃除していった。
先生たちも校内を見回りながら、生徒たちの作業を確認したり、必要なところを手伝ったりしていた。
1年2組では、キラナとアイカがクラスメイトたちと一緒に教室の掃除をしていた。
キラナは机を拭き、ほこりがたまっているところもきれいにしていく。
キラナ:「こんなに掃除したら、教室がもっときれいになりそうだね」
アイカはうなずいた。
アイカ:「うん。これからしばらく学校が休みになるしね」
教室の反対側でほうきを使っていたハルトが、すぐに声をかけてきた。
ハルト:「じゃあ、これから誰も教室を汚すなよー」
レンがハルトのほうを見る。
レン:「誰が汚すんだよ。明日から学校ないんだから」
ハルト:「……あ、そうだった」
カイトが笑った。
カイト:「頭の中はもう夏休みなんだな、ハルト」
ハルトは肩をすくめた。
ハルト:「別にいいだろ? みんなだって、もう夏休みを楽しみにしてるじゃん」
キラナはそんな二人を見ながら笑った。
キラナ:「それはそうだね。私ももう夏休みのことを考え始めてる」
アイカがすぐに振り向いた。
アイカ:「本当? もう予定とかあるの?」
キラナは首を横に振った。
キラナ:「まだないよ。でも、日本の夏休みってどんな感じなのか気になる」
アイカ:「じゃあ、あとでまた話そうよ」
キラナ:「うん!」
二人は笑いながら、再び掃除を続けた。
しばらくすると、みんなはそれぞれの担当場所へ移動した。
廊下を掃いたり、窓を拭いたり、校内のいろいろな場所を確認したりして、見落としがないように掃除を進めていく。
いつもより大変な作業だったが、雰囲気は相変わらず穏やかだった。
キラナ、アイカ、ハルト、レン、カイトは、時々冗談を言い合いながら作業を続けていた。
カイト:「ハルト、そのほうき、立たせてるだけじゃないだろうな?」
ハルト:「今、考え事してるんだよ」
カイト:「掃除しながら?」
ハルト:「できるだろ?」
レンはあきれたように首を振った。
レン:「とりあえず、手はちゃんと動かして」
キラナとアイカが笑った。
キラナ:「ほらほら、早く終わらせよう」
ハルト:「了解、隊長!」
キラナ:「私、隊長じゃないよ!」
ハルト:「じゃあ、俺はそのまま掃除する!」
キラナ:「それならいいよ」
みんなはまた笑った。
そして、掃除は続いていった。
かなり長い時間が経ったころ、ようやくそれぞれの担当場所の掃除が終わった。
最後にもう一度、自分たちの担当した場所を確認し、見落としているところがないか確かめる。
田中先生も教室の様子を見に来た。
田中先生:「うん、いいね。これで全部終わったようですね」
キラナは教室を見渡した。
床はきれいになり、机と椅子もきちんと並んでいる。
窓も、掃除をする前よりずっときれいになっていた。
アイカが笑顔で言った。
アイカ:「わあ……本当にきれいになったね」
ハルトはほうきを立てかけた。
ハルト:「やっと終わった……」
レンもうなずいた。
レン:「お疲れさま」
カイトも笑った。
カイト:「これで学校も、夏休みの間しばらくお休みできるね」
キラナは1年2組の教室をしばらく眺めていた。
キラナ:「なんだか、ちょっと変な感じ」
アイカがキラナを見る。
アイカ:「どうして?」
キラナ:「だって、これから何週間も、この教室に来ないんだよね」
ハルトがすぐに口を挟んだ。
ハルト:「俺はうれしいけどな。つまり、夏休みが始まるってことだろ?」
レン:「ははは、ハルトらしいな」
キラナも笑った。
キラナ:「確かに、そうだね」
掃除がすべて終わったことを確認すると、キラナたちは教室へ戻り、それぞれ自分のバッグを取りに行った。
キラナは本や学校用品をバッグに入れながら、自分の机の周りを確認する。
キラナ:「忘れ物は……たぶん大丈夫」
アイカも机の下を確認した。
アイカ:「私も大丈夫」
ハルトはバッグを持ち上げた。
ハルト:「俺も大丈夫。やっと帰れる!」
レンはハルトの机のほうを見た。
レン:「もう一回確認したほうがいいんじゃない?」
ハルト:「なんで?」
レン:「いつも一番忘れ物が多いの、ハルトだから」
ハルトは少し黙り、もう一度机の周りを確認した。
ハルト:「……あ」
カイトがすぐに笑った。
カイト:「ほら、やっぱり!」
ハルトは机の中に残っていた本を取り出した。
ハルト:「教えてくれて助かった」
キラナも小さく笑った。
キラナ:「言われなかったら、夏休みが終わってから探してたかもね」
ハルト:「それだけはやめたい」
忘れ物がないことを全員で確認すると、五人は一緒に教室を出た。
廊下を歩き、階段へ向かう。
掃除したばかりの廊下を通りながら、キラナは少しずつ静かになっていく学校の様子を眺めていた。
キラナ:(学校が、いつもよりずっと静かに感じる……)
三階から一階まで階段を下り、そのまま玄関へ向かう。
そして、学校の外へ出ると、午後の空気が五人を迎えた。
キラナは少し立ち止まり、桜森中学校の校舎を振り返る。
キラナ:「これで……しばらく学校はお休みなんだね」
アイカ:「うん」
ハルトは両手を上げた。
ハルト:「やったー! やっと夏休みだ!」
レン:「そんなに大声出さなくてもいいだろ」
ハルト:「だって、もう授業ないんだから!」
カイトが笑った。
カイト:「まあ、それはそうだな」
五人はそのまま一緒に学校の門を出て、歩き始めた。
しかし、数歩進んだところで、アイカが突然立ち止まった。
アイカ:「あ、ちょっと待って」
キラナたちも足を止める。
キラナ:「どうしたの?」
アイカ:「みんな、このまま帰るの?」
ハルトがアイカを見る。
ハルト:「うーん……俺は帰るつもりだったけど」
アイカ:「でも、今日は夏休み前の最後の日だよ?」
レンはアイカの言いたいことをすぐに察した。
レン:「つまり、少しみんなで過ごしてから帰ろうってこと?」
アイカはうなずいた。
アイカ:「うん。せっかくの最後の日だし、すぐ帰るのはもったいないかなって」
キラナは嬉しそうな顔をした。
キラナ:「賛成! ちょっとだけどこかに行こうよ」
カイト:「俺もいいよ」
ハルトは少し考えた。
ハルト:「うーん……まあ、いいか。でも、あんまり遠くには行かないでくれよ」
カイトが笑った。
カイト:「また自分で条件つけてる」
ハルト:「だって、夏休みの初日に疲れたくないんだよ」
レン:「まだ始まったばかりなのに」
キラナとアイカが笑った。
キラナ:「じゃあ、行く場所を探そう!」
五人は、そのまま帰らずに少し寄り道することにした。
学校最後の日は終わった。
けれど、その日の午後はまだ終わっていなかった。
五人は一緒に桜森中学校を離れ、帰る前に立ち寄れる場所を探しながら歩いていった。
数分後。
五人はまだ桜森中学校から離れる道を歩いていた。
キラナは、これからどこへ行くのか気になって仕方がない。
キラナ:「ねえ、まだ教えてくれないの?」
アイカ:「もう少しで着くよ」
キラナ:「さっきからずっと気になってるんだけど」
ハルトが小さく笑った。
ハルト:「まあまあ、キラナ。もうちょっとだから」
キラナは仕方なくため息をつきながら、それでもみんなと一緒に歩き続けた。
しばらくすると、周りの景色が少しずつ変わってきた。
住宅が少なくなり、道幅も広くなっていく。
そして前方に、キラナは少し広い場所が見えてきた。
たくさんの木があり、いくつかのベンチが置かれている。
中へ続く小さな道も見える。
キラナは入口の近くにある看板に目を向けた。
そこには、こう書かれていた。
桜森ふれあい広場
キラナ:「桜森ふれあい広場?」
アイカが笑顔で答える。
アイカ:「うん。ここが私が言ってた場所」
キラナは広場を見渡した。
キラナ:「私、ここに来たことない」
カイト:「だから、キラナを連れてきたんだよ」
レン:「座ってゆっくり過ごすのにちょうどいい場所だよ」
ハルト:「それに、学校からそんなに遠くないし」
カイトがすぐに笑った。
カイト:「ハルトは本当に距離のことばっかり考えてるな」
ハルト:「もちろん。夏休みを楽しむための体力は残しておきたいからな」
キラナも笑った。
キラナ:「みんな、本当に面白いね」
アイカは先に広場の中へ歩き出した。
アイカ:「ほら、まずはちょっと見て回ろうよ」
キラナ:「うん!」
キラナがアイカの後を追い、ハルト、レン、カイトも一緒に中へ入っていった。
広場の中に入ると、キラナは周りを見渡した。
そこは思っていたより広く、落ち着いた雰囲気の場所だった。
たくさんの木があり、日陰になっている場所もある。
ベンチもいくつかあり、広々とした場所ではいろいろなことができそうだった。
キラナは嬉しそうに周りを見た。
キラナ:「ここ、いいところだね」
アイカ:「でしょ?」
キラナ:「うん。こういう場所、好き」
レン:「じゃあ、少し座ろうか」
レンが近くのベンチを指さした。
ハルト:「賛成。もうちょっと歩いただけで足が疲れた」
カイト:「まだ少ししか歩いてないだろ」
ハルト:「それでも疲れるんだよ」
カイト:「まったく」
アイカは笑いながら首を振った。
アイカ:「はいはい。じゃあ、座ろう」
五人は木陰にあるベンチまで歩き、そこに腰を下ろした。
桜森ふれあい広場の午後は、穏やかで静かな時間が流れていた。
しばらくの間、五人は何も話さず、ただその場の雰囲気を楽しんでいた。
やがて、アイカがここ数日ずっと考えていたことを口にした。
アイカ:「じゃあ……明日から、本当に夏休みなんだね」
ハルトがすぐに笑顔になる。
ハルト:「やっとだ!」
レン:「ハルトが一番うれしそうだな」
ハルト:「そりゃそうだろ。ずっとこの日を待ってたんだから」
カイト:「夏休みの間、ずっと寝てるために?」
ハルトは少し考えた。
ハルト:「その通り!」
アイカが笑った。
アイカ:「本当にいつもそればっかりだね」
ハルト:「別にいいだろ?」
レン:「まあ、いいけど。それほど面白い予定でもないよね」
ハルト:「俺にとっては十分面白い」
キラナはハルトの答えを聞いて笑った。
キラナ:「じゃあ、みんなはどうするの?」
アイカ:「私はまだそんなに予定はないかな。家族と過ごしたり、たまに外に出たりすると思う」
カイト:「俺もまだ決めてない。たぶん、そのうち考える」
レン:「俺もだいたい同じかな」
キラナもうなずいた。
キラナ:「私も特に予定はないよ」
すると、アイカが四人の顔を見ながら言った。
アイカ:「でも……一つ思いついたことがある」
カイト:「何?」
アイカ:「夏休みの間も、みんなで会えるよね?」
さっきまでのんびりしていたハルトが、すぐにアイカのほうを向いた。
ハルト:「ああ、そうか」
レン:「確かに」
キラナは少し黙った。
キラナ:「じゃあ……明日からは、毎日みたいに会うことはなくなるんだね」
アイカはうなずいた。
アイカ:「うん。学校がある間は、ほとんど毎日教室で会ってたからね」
カイト:「明日からは、毎朝学校に来る理由もなくなるし」
ハルト:「それに、田中先生に授業をちゃんと聞けって言われることもない」
レン:「そこを考えるのかよ」
ハルト:「もちろん」
五人は小さく笑った。
しかし、笑い声が落ち着くと、少しだけ静かな空気が流れた。
キラナは前を見ながら言った。
キラナ:「一か月以上って、けっこう長いよね」
アイカ:「うん。私たち、やっと仲良くなってきたところなのに、いきなり長い休みだもんね」
キラナ:「学校の雰囲気が、ちょっと恋しくなるかも」
ハルト:「俺は授業は恋しくならないと思う」
カイト:「じゃあ、友達は?」
ハルトは少し黙った。
ハルト:「……みんなには、まあ、ちょっと会いたくなるかも」
アイカが笑う。
アイカ:「『ちょっと』?」
ハルト:「うん、ちょっと」
レン:「ちゃんと認めたな」
キラナも笑った。
キラナ:「私も、夏休みの間にまたみんなで会いたい」
アイカ:「じゃあ、予定を合わせようよ」
カイト:「毎回じゃなくてもいいよ。たまに会えれば十分だろ」
レン:「大事なのは、夏休みが終わるまで一度も会わないなんてことにならないことだね」
ハルト:「それには賛成」
キラナ:「じゃあ、時間があるときは連絡し合うっていうのはどう?」
アイカ:「いいね。暇な日があったら、みんなを誘おうよ」
カイト:「それならいいと思う」
レン:「俺も賛成」
ハルト:「俺も行く。ただし、あんまり遠くないところで」
キラナは嬉しそうに笑った。
キラナ:「うん!」
五人は顔を見合わせ、笑った。
まだ、次にいつ会えるのかは決まっていない。
それぞれの夏休みの予定も、まだはっきりしていない。
それでも、学校で毎日会えなくなっても、時間が合えばまた一緒に過ごせる。
少なくとも、五人はそう約束した。
キラナにとって、今回の夏休みは、ただ一か月以上学校を離れるだけのものではなかった。
新しい場所で、自分を一人だと感じさせないでくれた友達と、しばらく離れて過ごす初めての長い休みでもあった。
やがて時間は過ぎていき、太陽は少しずつ低くなっていった。
午後の空も、だんだんと夕方の色へ変わっていく。
アイカが空を見上げた。
アイカ:「そろそろ帰ったほうがよさそうだね」
カイト:「うん。遅くなる前に帰ろう」
レン:「いつもの場所で別れようか」
ハルトはうなずいた。
ハルト:「そうしよう。行こうぜ」
五人はベンチから立ち上がり、桜森ふれあい広場を後にした。
そして、いつもの帰り道を一緒に歩いていく。
最後にはそれぞれ違う方向へ向かわなければならないことを分かっていても、しばらくは五人で歩いていた。
キラナはアイカの隣を歩きながら言った。
キラナ:「今日は楽しかったね」
アイカ:「うん。最後の学校の日に、みんなで過ごせてよかった」
キラナ:「夏休みの間も、また会えるといいな」
アイカ:「きっと会えるよ。あとでまた連絡しようね」
キラナはうなずいた。
キラナ:「うん」
それから少し歩くと、道が分かれる三叉路に着いた。
カイトが隣の道を見る。
カイト:「俺はこっち」
レン:「俺もここから別の道だね」
ハルトは反対側の道を指さした。
ハルト:「俺はあっち」
アイカはキラナを見る。
アイカ:「キラナはどっち?」
キラナは自分の家へ続く道を指さした。
キラナ:「私はこっち」
五人は三叉路でしばらく立ち止まった。
アイカ:「じゃあ、またね」
ハルト:「みんな、夏休み楽しもうな!」
カイト:「楽しい夏休みを!」
レン:「みんな、いい夏休みを過ごしてね」
キラナは笑顔で答えた。
キラナ:「みんなも、楽しい夏休みを!」
アイカ:「時間があったら、ちゃんと連絡してね」
キラナ:「うん。みんなもね」
五人は手を振り合った。
キラナ:「また会おうね!」
アイカ:「またね!」
ハルト:「じゃあ、また!」
レン:「気をつけて帰ってね」
カイト:「またな」
そして、五人はそれぞれの道へ進んでいった。
キラナはバッグを持って、一人で家へ向かって歩いていく。
時々、さっきの会話を思い出した。
ついに、夏休みが始まった。
けれど、明日からはいつものように学校でアイカ、ハルト、レン、カイトに会うことができない。
それを考えると、少しだけ寂しい気持ちもあった。
それでも、夏休みの間も連絡を取り合い、また会おうと約束したことを思い出すと、自然と笑顔になった。
しばらくして、キラナは家に着いた。
玄関のドアを開けて、中へ入る。
キラナ:「ただいま!」
リビングから、父と母がすぐに迎えてくれた。
母:「おかえり。今日はまた少し遅かったね?」
キラナはバッグを置いた。
キラナ:「うん。学校で大掃除をしたあと、アイカとハルトとレンとカイトで、そのまま帰らずに少し寄り道したの」
父:「そうなのか? どこへ行ったんだ?」
キラナ:「新しい場所だよ。桜森ふれあい広場っていうところ」
母は笑った。
母:「へえ、楽しそうね」
キラナ:「うん! みんなで座って、夏休みのことを話してたの」
父:「それなら、最後の学校の日も楽しく過ごせたみたいだな」
キラナは満面の笑みでうなずいた。
キラナ:「うん。楽しかった!」
母:「これで本当に夏休みね」
キラナ:「そう! でも、なんだかまだ変な感じ」
父:「まあ、ゆっくり休んで夏休みを楽しみなさい。新しい学校での毎日も、よく頑張ったんだから」
キラナは笑った。
キラナ:「うん。ありがとう、お父さん」
母:「今は少し休みなさい。きっと疲れたでしょう?」
キラナ:「うん!」
キラナはバッグを持って、自分の部屋へ向かった。
部屋に着くと、学校のバッグを置き、ベッドの端に腰を下ろした。
キラナはバッグを見ながら、微笑んだ。
今日からしばらくの間、次の日のために学校の準備をする必要はない。
長い夏休みが、ついに始まったのだ。
やがて、桜森にも夜がやってきた。
部屋でしばらく休んだあと、キラナはいつものように一階へ戻り、父と母と一緒に夕食を食べた。
けれど、その夜は少しだけいつもと違っていた。
次の日の学校の予定を気にする必要もない。
朝、学校へ行くために目覚ましをセットする必要もない。
桜森中学校に通い始めてから初めて、キラナにはゆっくり休んで、夏休みを楽しむための時間がたくさんある。
夕食を終えると、キラナは再び自分の部屋へ戻った。
そして、机の近くにあるカレンダーを見る。
2019年7月19日。
その日を、キラナは無事に終えた。
キラナは小さく笑った。
キラナ:「やっと……夏休みが始まったんだ」
そのままベッドに横になる。
キラナは、ここ数日の桜森での生活を思い返していた。
初めての学校で、何もかもが少し不思議に感じた日。
アイカ、ハルト、レン、カイトと出会ったこと。
少しずつ楽しくなっていった学校生活。
一緒に下校したり、いろいろな場所へ行ったり、冗談を言い合ったり、勉強したり、助け合ったりした日々。
今は、しばらくの間、それがなくなる。
でも、それはすべてが終わるということではない。
キラナは、夕方にみんなで話したことを思い出して笑った。
夏休みの間も連絡を取り合い、時間が合えばまた会おうと約束した。
キラナ:「また、みんなで会えるといいな」
そうつぶやいて、キラナは布団をかけ、目を閉じた。
明日は学校がない。
授業もない。
掃除もない。
目の前にあるのは、長い夏休みだけ。
そして、キラナはまだ、その夏休みをどんなふうに過ごすのか分からない。
ただ一つ、はっきりしていることがある。
桜森中学校での最初の数週間を過ごした今、キラナはもう、自分が一人だとは感じていなかった。
小さな笑顔を浮かべながら、キラナは静かに眠りについた。
こうして、夏休み前の最後の学校の日が終わった。
そして、キラナの夏休みが正式に始まった。
— 第6章・完 —
第6章を最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
今回は、キラナたちにとって夏休み前の最後の学校の日のお話でした。
学校で大掃除をしたり、友達と一緒に帰ったり、桜森ふれあい広場で夏休みについて話したり。
いつもと同じような一日にも見えますが、キラナにとっては、友達としばらく離れる前の大切な一日でもありました。
夏休みの間は、毎日学校で顔を合わせることはできません。
それでも、またみんなで会おうと約束したことで、キラナは少し安心したようです。
そして、ついに夏休みが始まりました。
これからキラナは、どんな夏を過ごすのでしょうか。
学校がある日とは違う、キラナの夏休みの日々も、ぜひ楽しみにしていてください。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
それでは、また次のお話でお会いしましょう!
— マナンザイニ




