第3章:金曜日の午後、桜森で
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
今回の第3章では、学校が終わった金曜日の午後から、キラナたちのちょっとした寄り道が始まります。
友達と一緒に歩いたり、桜森中央へ行ったり、おしゃべりをしたり――。
特別な出来事が起こるわけではないけれど、そんな何気ない時間の中にも、キラナにとって大切な思い出が少しずつ増えていきます。
そして、今回は三連休も始まります。
キラナはこの休日をどう過ごすのでしょうか。
それでは、第3章をどうぞお楽しみください。
2019年7月12日(金)- 午後
時計は15時15分を示していた。
学校の掃除を終えた桜森中学校の生徒たちは、それぞれの教室を出始めていた。
キラナはアイカ、ハルト、レン、カイトと一緒に1年2組の教室を出た。
5人は階段へ向かい、1階まで下りると、そのまま昇降口へ向かった。そして、それぞれのバッグを持ちながら、学校の正門前を歩いていく。
キラナ:「はぁ......やっと終わったー!」
アイカ:「うん。今日はけっこう長かったね。」
ハルトは体を伸ばしながら、ほっとしたように息を吐いた。
ハルト:「やっと帰れる!」
カイトはハルトのほうを振り向いた。
カイト:「お前、ずっと帰る時間を一番楽しみにしてたよな。」
ハルト:「もちろん。ずっとこの瞬間を待ってたんだ。」
レンは小さく笑った。
レン:「まだ学校が終わったばかりだけどな。」
ハルト:「だからこそだよ。」
キラナとアイカは、ハルトの返事を聞いて小さく笑った。
キラナ:「ハルトって、本当に面白いよね。」
5人は学校の前で少し立ち止まった。
キラナは時計を見た。
キラナ:「今、15時15分だ。」
アイカ:「わあ、もう夕方だね。」
すると、ハルトが突然何かを思い出したような顔をした。
ハルト:「あっ、ちょっと待って......。」
カイト:「どうした?」
ハルト:「明日って土曜日だよな?」
アイカはうなずいた。
アイカ:「うん。明日は休みだよ。」
ハルトは満面の笑みを浮かべた。
ハルト:「やった! 明日は学校ない!」
キラナも嬉しそうな顔をした。
キラナ:「あっ、そうだった! 明日は土曜日だ。」
レン:「じゃあ、ゆっくり休めるな。」
ハルト:「それに、いつもより遅く起きられる。」
カイト:「それが一番楽しみなんだろ?」
ハルト:「もちろん。」
すると、キラナが突然何かを思いついた。
キラナ:「それなら......。」
アイカがキラナのほうを見る。
アイカ:「ん?」
キラナ:「今からすぐ帰るんじゃなくて、ちょっと遊びに行かない?」
アイカは興味を持ったような表情をした。
アイカ:「今から?」
キラナはうなずいた。
キラナ:「うん。明日は休みだし、今日はゆっくり遊べるよ。」
ハルトはすぐに手を上げた。
ハルト:「俺、行く!」
カイトは小さく笑った。
カイト:「返事、早すぎだろ。」
ハルト:「こんなチャンス、逃すわけにはいかない!」
レンは少し考えてから、うなずいた。
レン:「それもいいな。」
アイカも笑顔になった。
アイカ:「私も行きたい。」
キラナはさらに嬉しそうな顔になった。
キラナ:「じゃあ、みんなで遊びに行こう!」
5人は顔を見合わせた。
しかし、数秒後、カイトがあることに気づいた。
カイト:「でも......どこに行く?」
全員が黙った。
キラナ:「あ......。」
アイカ:「まだ考えてなかったね。」
ハルトは頭をかいた。
ハルト:「俺もまだ分からない。」
レン:「じゃあ、まず行く場所を決めよう。」
キラナはうなずいた。
キラナ:「よし! 楽しそうな場所を探そう!」
5人は学校の前で話し合いを始め、その日の午後に行けそうな場所を決めようとした。
学校での一日は終わった。
けれど、キラナたちの金曜日の午後は、まだ終わっていなかった。
そして、アイカが突然何かを思いついたような顔をした。
アイカ:「あっ! 行きたい場所、分かった!」
キラナは興味津々に振り向いた。
キラナ:「ん? どこ?」
アイカ:「桜森中央に行ってみない?」
キラナはすぐに不思議そうな顔をした。
キラナ:「桜森中央......?」
ハルト:「うん。桜森中央。」
キラナ:「そこって、どんなところ?」
アイカは少し驚いた。
アイカ:「えっ? まだ行ったことないの?」
キラナは首を横に振った。
キラナ:「うん。私、日本に住み始めてまだ5日だから。」
カイト:「ああ、そういえばそうだったな。」
レン:「それなら、キラナが知らなくても当然だな。」
ハルト:「じゃあ、ちょうどいいじゃん。キラナを連れて行こう!」
アイカ:「うん! けっこうにぎやかだし、行ける場所もたくさんあるよ。」
キラナはだんだん楽しそうな表情になった。
キラナ:「本当? それなら行ってみたい!」
アイカは笑顔になった。
アイカ:「じゃあ、桜森中央へ行こう!」
キラナ:「やった!」
ハルト:「やっと行き先が決まったな。」
カイト:「さっきまで、ここでみんなで悩んでただけなのにな。」
レン:「少なくとも、今は行き先が決まった。」
キラナは小さく笑った。
キラナ:「じゃあ、行こう!」
5人は学校の前から歩き始めた。
キラナはアイカの隣を歩き、ハルト、レン、カイトは少し後ろを歩いていた。
その日の夕方、桜森の周辺はけっこうにぎやかだった。
ほかの生徒たちも学校から帰るところで、家へ向かう生徒もいれば、友達と一緒にどこかへ向かう生徒もいた。
キラナは興味深そうに周りを見渡した。
日本に住み始めて5日間、家や学校の周辺は何度か見ていた。
しかし、友達と一緒にここまで遠くまで歩くのは、今日が初めてだった。
道沿いには、小さな庭のある家が並んでいた。
家の塀の近くには何台かの自転車が止められていて、道端の木々が夕方の風に吹かれてゆっくり揺れている。
少し歩くと、いくつかの小さな店も見えてきた。
食べ物を売っている店や日用品を扱う店、小さな店などがあり、夕方になったため、明かりをつけ始めている店もあった。
キラナは目を輝かせながら、周りを見ていた。
キラナ:「わあ......。」
アイカが振り向く。
アイカ:「どうしたの?」
キラナ:「桜森って、こんな感じなんだって今さら気づいた。」
後ろから聞いていたハルトが声をかける。
ハルト:「まさか、桜森って学校と家しかないと思ってた?」
キラナ:「そういう意味じゃないよ!」
カイトが笑った。
カイト:「でも、この5日間、キラナはあまり出歩いてなかったもんな。」
キラナ:「まあ、それもそうだけど......。」
レン:「5日じゃ、町全体を知るにはまだ短すぎるよ。」
キラナはうなずきながら、再び前を見る。
キラナ:「そうだね。まだ知らないことがいっぱいある。」
5人はそのまま歩き続けた。
時々、交差点で立ち止まり、アイカが進む方向を教えてくれた。
ハルト:「まだ遠い?」
アイカ:「そんなに遠くないよ。」
ハルト:「その答え、なんか信用できない。」
カイト:「まだ少ししか歩いてないのに、もう文句かよ。」
ハルト:「文句じゃない。ちゃんと今の状況を確認してるだけ。」
レン:「つまり、文句だな。」
ハルト:「おい!」
キラナとアイカはすぐに笑い出した。
キラナ:「3人って、いつもこんな感じなの?」
アイカ:「だいたいね。」
5人は再び歩き始めた。
学校から離れていくにつれて、周りの景色も少しずつ変わっていった。
住宅はだんだん少なくなり、店が増えていく。
大きな通りでは何台かの車が走っていた。
歩道には人が行き交い、何人かの学生たちも友達と一緒に歩いていた。
キラナはまた周囲を見渡した。
店の看板、街灯、小さなバス停、並んで止められた自転車、そして今まで見たことのなかった建物。
キラナ(心の中):「まだまだ、私が知らない桜森がいっぱいあるんだ......。」
キラナは小さく笑った。
5日前、この町はまだキラナにとって知らない場所だった。
それが今では、一緒に歩きながら冗談を言い合える友達がいる。
アイカ:「キラナ、どうして一人でニコニコしてるの?」
キラナは少し驚いた。
キラナ:「えっ? 何でもないよ。」
アイカ:「本当に?」
キラナ:「うん。ただ、嬉しくて。」
ハルト:「もうすぐ着きそうだから?」
キラナ:「違うよ!」
カイト:「ははは!」
レンは3人の様子を見ながら、小さく笑っていた。
さらにしばらく歩くと、5人はようやく、これまでよりずっとにぎやかな場所へたどり着いた。
キラナは目の前の景色にすぐ気づいた。
通り沿いにはたくさんの店が並び、いくつかのレストランはすでにお客さんでにぎわっていた。
コンビニにも、仕事や学校帰りに立ち寄る人たちの姿が見える。
その周辺には娯楽施設などもあり、さっきまで歩いてきた場所よりも桜森中央はずっと活気にあふれていた。
キラナ:「わあ......すごくにぎやかだね。」
アイカは笑顔になった。
アイカ:「ほら、ここが桜森中央だよ。」
キラナは感心したように周りを見渡した。
キラナ:「ここが桜森の中心街なんだ......。」
ハルト:「そう。けっこうにぎやかだろ?」
キラナ:「うん! 私、ここに来るの初めて。」
カイト:「じゃあ、これで自分の目で見られたな。」
キラナ:「まだまだ知らない場所がいっぱいあるんだね。」
レン:「まだ日本に来て5日だからな。」
キラナ:「まあ、それもそうだね。」
5人は道の端で少し立ち止まり、周りにあるさまざまな場所を眺めた。
アイカ:「よし、着いたけど、まず何する?」
ハルト:「うーん......。」
カイト:「まさか、食べたいとか言わないよな?」
ハルト:「まさにそれを言おうとしてた。」
カイト:「やっぱりな。」
キラナは笑った。
キラナ:「私はまず、ちょっと見て回りたいかな。お店がいっぱいあるし。」
アイカ:「いいよ。少し歩いてみよう。」
レン:「そのあとで、ほかの場所を探そう。」
ハルト:「でも、食べるのも予定に入ってるよな?」
アイカ:「うん、ハルト。」
ハルト:「よし。」
キラナはみんなの様子を見ながら笑った。
キラナ:「じゃあ、まずは見て回ろう。それからどこに行くか決めよう。」
アイカ:「賛成!」
5人は桜森中央の通りを歩き始め、さまざまな場所を眺めながら、夕方の時間を楽しんだ。
桜森中央をしばらく歩き回ったあと、5人は軽く何かを食べることにした。
今いる場所からそれほど遠くないところに、コンビニがあった。
5人は中に入り、棚に並んでいるさまざまな食べ物を見ながら選び始めた。
キラナはたくさんのお菓子を興味深そうに眺めていた。
キラナ:「わあ、すごく種類が多いね。」
アイカ:「どれを買う?」
キラナ:「まだ迷ってる。」
隣の棚を見ていたハルトも声をかける。
ハルト:「迷ったら、うまそうなやつを選べばいいじゃん。」
カイト:「それ、全然アドバイスになってないぞ。」
ハルト:「なんで?」
カイト:「全部おいしそうだから。」
ハルト:「ああ......確かに。」
レン:「やっと気づいたか。」
キラナとアイカは小さく笑った。
キラナ:「じゃあ、私はこれにしようかな。」
キラナはお菓子を一つ手に取り、飲み物も選んだ。
それぞれ食べ物と飲み物を選び終えると、会計を済ませ、コンビニを出た。
5人はお菓子を食べながら座れそうな、ちょうどいい場所を探した。
ハルトはすぐに食べ物を開けた。
ハルト:「うん、やっぱりこれだな。」
カイト:「お前、本当にずっと食べたかったんだな。」
ハルト:「それがどうした?」
カイト:「別に。」
キラナ:「ハルトって、本当に面白いね。」
ハルト:「褒め言葉として受け取っておく。」
5人は笑った。
お菓子を食べながら、5人は学校での生活について話し始めた。
アイカ:「キラナ、ここで何日か学校生活を過ごしてみて、どう?」
キラナ:「うーん......最初はちょっと戸惑ったかな。」
アイカ:「まだ慣れてなかったから?」
キラナ:「うん。前の学校とは違うところがたくさんあったから。」
そう言って、キラナは笑った。
キラナ:「でも、今は少しずつ慣れてきたよ。それに、みんながいてくれるから。」
アイカ:「ふふ、よかった。」
ハルト:「じゃあ、桜森での学校生活もそんなに悪くないってことだな?」
キラナ:「全然悪くないよ。」
カイト:「授業のほうは?」
キラナ:「授業はまだ何とかついていけるけど、ちゃんと理解するためには、もっと勉強しないといけないかな。」
レン:「分からないことがあったら、聞けばいいよ。」
キラナ:「うん。ありがとう、レン。」
ハルト:「俺も手伝えるぞ。」
カイト:「お前が?」
ハルト:「なんだよ?」
カイト:「なんか、あまり信用できない。」
ハルト:「おい!」
キラナとアイカはまた笑った。
しばらくすると、アイカが突然何かを思い出した。
アイカ:「あっ、そうだ、キラナ。月曜日は休みだよ。」
キラナはすぐに振り向いた。
キラナ:「えっ? 月曜日、休みなの?」
アイカ:「うん。」
キラナ:「なんで?」
ハルト:「祝日だからだろ。」
キラナ:「それは分かってる! 何の祝日なのってこと!」
ハルト:「ああ、そっちか。」
カイトは笑った。
カイト:「知らなかったの?」
キラナは首を横に振った。
キラナ:「うん。知らなかった。」
レン:「海の日。」
キラナ:「海の日?」
アイカ:「うん。」
キラナは少し考えた。
キラナ:「名前からすると、海に関係する祝日なの?」
アイカ:「まあ、そんな感じ。」
キラナ:「じゃあ、海の日って普通は何をするの?」
ハルト:「いろいろあるぞ。」
キラナ:「うん。そうじゃなくて、普通は何かするの?」
アイカは少し考えてから答えた。
アイカ:「うーん......海の日だから海に行ったり、泳いだり、家族と一緒に過ごしたりする人もいるよ。」
カイト:「もちろん、みんながそうするわけじゃないけどな。」
レン:「そうだね。普通の休日として過ごす人も多い。」
キラナ:「へえ......つまり、普通の休日だけど、海がテーマになってる感じ?」
アイカ:「まあ、そんなところかな。」
キラナ:「へえ、面白いね。」
ハルト:「何より、休みってことが大事だ。」
カイト:「ほら、それがハルトの祝日に対する一番の目的だ。」
ハルト:「もちろん。」
キラナは笑った。
キラナ:「じゃあ、明日が土曜日で、日曜日があって、そのあと月曜日が海の日?」
レン:「そう。」
キラナ:「わあ、三日間も学校がない!」
ハルト:「いいだろ?」
キラナ:「最高!」
カイト:「お前ら二人、休みの話になると本当に嬉しそうだな。」
キラナ&ハルト:「別にいいだろ?」
カイト:「まあ、悪くはないけどな。」
アイカ:「ははは。」
5人は再び笑いながら、それぞれのお菓子を食べ続けた。
アイカ:「じゃあ、みんな週末の予定はある?」
カイト:「まだないな。」
レン:「俺も特にない。」
ハルト:「俺は家でゆっくりする。」
カイト:「何するんだ?」
ハルト:「寝る。」
レン:「やっぱりな。」
ハルト:「睡眠は大事だからな。」
キラナ:「私はまだ分からないかな。あとで考えるかも。」
アイカ:「私もまだ予定ないよ。」
5人はそのまま、桜森中央の夕方を楽しみながら、のんびり話を続けた。
キラナにとって、その日はますます楽しいものになっていった。
ただ友達と一緒に桜森の中心街を見て回っているだけではなく、日本での普段の生活についても少しずつ分かってきた。
そして、7月15日月曜日が海の日だということも知った。
海の日。
数時間後、5人はまだ一緒に座りながら、お菓子を食べたり、のんびり話したりしていた。
話題は次々と変わっていった。
学校のことを話したり、その日にあった小さな出来事を話したり、いつものように冗談を言い合ったりした。
5人が気づかないうちに、時間はどんどん過ぎていった。
さっきまで明るかった空は、少しずつ色を変え始めていた。
夕日の光が辺りを暖かく照らし、周りのいくつかの店では、すでに明かりがついていた。
キラナはしばらく空を見上げた。
キラナ:「あっ......。」
アイカ:「どうしたの?」
キラナ:「空の色、変わってきたね。」
アイカも空を見上げた。
アイカ:「本当だ。」
カイトはスマートフォンで時間を確認した。
カイト:「うわ、もうこんな時間か。」
ハルト:「マジで?」
レン:「けっこう長くここにいたな。」
ハルトは手に残っていたお菓子を見て、それを食べた。
ハルト:「時間が経つの早いな。」
キラナ:「うん。まだ少ししか経ってない感じがする。」
アイカは笑った。
アイカ:「今日はずっと話してたからね。」
カイト:「話してたら、時間を忘れちゃったな。」
レン:「このままいたら、帰るのが遅くなるぞ。」
ハルト:「ああ、それもそうだな。」
キラナは立ち上がり、自分の荷物を整理した。
キラナ:「じゃあ、そろそろ帰ったほうがいいかもね。」
アイカ:「うん。今日はもう十分遊んだしね。」
ハルト:「まだ見てない場所がいっぱいあるのにな。」
カイト:「また今度来ればいいだろ、ハルト。」
ハルト:「それもそうだな。」
キラナは周りの景色を見ながら笑った。
今日は初めて友達と一緒に桜森中央へ来た。
そして、思っていた以上に楽しい時間を過ごすことができた。
キラナ:「今日はすごく楽しかった!」
アイカ:「私も楽しかったよ。」
レン:「学校の一週間を終えるには、ちょうどよかったな。」
ハルト:「そして、一番大事なのは......。」
カイト:「まだ何かあるのか?」
ハルト:「お菓子を食べられたこと。」
キラナ:「ハルトって、いつもお菓子のことばっかり考えてるよね。」
ハルト:「だって、お菓子おいしかったし。」
5人はみんな笑った。
そのあと、それぞれ荷物を片付け、そこを出る準備をした。
夕方は少しずつ夜へと変わり始めていた。
桜森中央での5人の時間も、いよいよ終わりに近づいていた。
そして、5人は一緒に歩きながら、桜森中央を離れていった。
周りの通りは、さっきよりも少し静かになっていた。
空はすでにオレンジ色に染まり、道沿いの街灯も少しずつ明かりをつけ始めていた。
5人は歩きながら、ときどきその日の出来事について話したり、冗談を言ったりしていた。
ハルト:「学校が終わったあとに遊びに行くのも、けっこう楽しいな。」
カイト:「さっき疲れたって言ってなかったか?」
ハルト:「さっきのは、まだ食べる前だったからな。」
レン:「つまり、食べ物のおかげで元気になったわけだ。」
ハルト:「その通り。」
キラナ:「ははは、ハルトって本当に変だね。」
アイカ:「でも、今日は本当に楽しかったね。」
キラナはうなずいた。
キラナ:「うん。みんなと一緒に行けてよかった。」
5人は歩き続け、やがて一つの交差点にたどり着いた。
アイカが立ち止まった。
アイカ:「たぶん、ここからは別々だね。」
カイト:「うん。俺の家はあっちだから。」
レン:「俺もそっち。」
ハルトは別の道を指差した。
ハルト:「俺はこっち。」
キラナは反対側の道を見る。
キラナ:「私はあっち。」
アイカ:「じゃあ、ここでお別れだね。」
キラナは笑った。
キラナ:「じゃあ、みんな気をつけてね。」
ハルト:「じゃあ、月曜日に会おう!」
キラナ:「えっ、月曜日は休みだよ。」
ハルト:「あっ、そうだった!」
カイト:「忘れてたのか?」
ハルト:「忘れてたんじゃない。『月曜日に会おう』って言うのに慣れすぎてただけだ。」
レン:「タイミングが悪いだけだな。」
キラナとアイカは笑った。
アイカ:「じゃあ、次はいつ会う?」
キラナは少し考えた。
キラナ:「明日?」
アイカ:「明日は土曜日だよ。」
キラナ:「あっ、そうだった......。」
ハルト:「また誰か遊びに行きたくなったら、そのとき会えばいいんじゃない?」
カイト:「でも、まだ予定は決まってないぞ。」
レン:「また予定を決めてからでいいだろ。」
アイカ:「うん。時間があったら、お互いに連絡しよう。」
キラナ:「うん!」
アイカ:「じゃあ、またね。」
キラナ:「またね!」
ハルト:「じゃあな!」
カイト:「気をつけて帰れよ。」
レン:「また会おう。」
5人はそれぞれ別れを告げ、それぞれの道へ歩き始めた。
キラナは何度か後ろを振り返り、友達に手を振った。
キラナ:「またねー!」
アイカ、ハルト、レン、カイトも手を振り返し、やがてそれぞれの道へと離れていった。
こうして金曜日は、静かに終わりを迎えた。
それは、友達と一緒に過ごした短い時間だった。
けれど、その時間は、キラナにとって新しい桜森での生活をさらに身近に感じさせてくれる、大切な一日になった。
それからしばらくして、キラナはようやく家に着いた。
ドアを開けて家の中に入り、靴を脱ぐ。
キラナ:「ただいま!」
リビングにいたキラナの父と母が、すぐに振り向いた。
母:「おかえり、キラナ。」
父:「おお、帰ってきたか。」
キラナは学校のバッグを持ってリビングへ入った。
母:「今日はちょっと帰りが遅かったわね。」
キラナ:「さっきアイカとハルトとレンとカイトと一緒に桜森中央に行ってきたの。」
父:「桜森中央?」
キラナ:「うん。私、初めて行ったんだ。」
母:「楽しかった?」
キラナはすぐに笑顔になった。
キラナ:「すっごく楽しかった! 思ってたよりずっとにぎやかだったよ。」
父:「それはよかった。少しずつ周りのことも分かってきたな。」
キラナ:「うん。今までは家から学校までの道くらいしか知らなかったから。」
母:「でも、あまり遅くならないようにね、キラナ。」
キラナ:「うん、お母さん。」
父は、楽しそうにしているキラナを見て笑った。
父:「今日はずいぶん楽しかったみたいだな。」
キラナ:「うん、すごく!」
キラナはバッグを持ち上げ、部屋へ向かった。
キラナ:「じゃあ、私、部屋に行くね!」
母:「うん。」
父:「ゆっくり休めよ、キラナ。」
キラナ:「はーい!」
キラナは学校のバッグを持って、自分の部屋へ上がっていった。
部屋に着くと、バッグを机の近くに置き、ベッドに腰を下ろした。
今日は、これまでの日々とは少し違う一日だった。
桜森の別の場所を見ることができただけではない。
新しくできた友達とも、さらに仲良くなれたような気がした。
キラナ:「日本の学校で友達ができるって、けっこう楽しいかも。」
キラナは小さく笑いながら、学校が終わったあとの出来事を思い出した。
すると、あることを思い出した。
キラナ:「あっ、そうだ......月曜日は休みなんだ。」
キラナの顔が一気に明るくなった。
キラナ:「じゃあ、学校がない日が三日もある!」
キラナは満面の笑みを浮かべながら、ベッドに倒れ込んだ。
キラナ:「やったー!」
いつもの学校生活の一日として始まった金曜日は、キラナにとって新しい経験で終わった。
初めて新しい友達と一緒に桜森中央へ行き、自分が暮らしている場所について、少しずつ知ることができた。
そして何より嬉しかったのは、もう一人でいる新入生ではないということだった。
話したり、冗談を言ったり、一緒に時間を過ごしたりできる友達が、キラナにはもういる。
そして、三連休の週末が、すぐそこまでやって来ていた。
この休みの間、キラナは何をするのだろうか。
それは、また次の日の物語。
- 第3章・完 -
第3章を最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
今回は、キラナが学校の友達と一緒に桜森中央へ行き、学校とは少し違った時間を過ごすお話でした。
転校してきてまだ五日しか経っていないキラナですが、少しずつ学校にも慣れ、そして一緒に帰ったり遊んだりできる友達もできました。
普通の金曜日だったはずの一日が、友達との時間によって、ちょっと特別な一日になりました。
そして、キラナには三連休が待っています。
この休日に何が起こるのか。
キラナはどんな一日を過ごすのか。
その続きは、次のお話で――。
ここまでキラナたちと一緒に歩んでくださって、本当にありがとうございました。
それでは、また次の物語でお会いしましょう!
— マナンザイニ




