青の龍とゲーム・ナイト⑬
「いっ、いらっしゃいませ、上兄様、下兄様! ほっ、本日は僕のパーティにお越しくださり、真にありがとうございますっ!」
青くんと買い物に行った日から、しばらく経った日の、夕暮れ時。
今夜の準備を済ませた空き部屋へと、お誘いしたとおりにやってきてくれた赤龍帝様と白様に、青くんがひどく緊張した様子でそう挨拶をした。
「青よ、久しいな。会えて嬉しいぞ」
「青君、また大きくなりましたね。あなたの成長、私も嬉しく思います」
それに、穏やかな笑みとともに応えるお二人。
だけどなんというか、やはり、同じ場所に住んでいる兄弟なのに、その挨拶には若干の距離がある。
兄弟というより、どちらかというと、久しぶりに会った遠い親戚のようだ。
三人は、どれぐらい顔を合わせていなかったのだろう。
私がそんなことを考えていると、そこで青くんが興奮した様子でこう言った。
「へ、へへ。来てくれて、本当に嬉しいです。その……人間の道具で遊ぶなんて、って、断られるかもって思ってたから」
そう、それが問題だった。
赤龍帝様は、龍が人間に関わることを禁じているらしい。
でも、青くんはそれを隠れて楽しむのではなく、とどうしても兄たちと一緒に遊びたいと言うのだ。
『でも、怖くてどう言えばいいのか……。兄様たちの前だと、僕、あがっちゃってうまく喋れないと思う。どうすればいいと思う?』
と聞くので、私は『手紙を書いてはどうでしょう。人間は誰かにしっかり伝えたいことがある時、そうするのです』と提案したのだった。
それに青くんは良いことを聞いたとばかりに喜び、心のこもった招待状をしたためた。
そして、私がそれを受け取り、使いとしてお二人に渡したのである。
それを読むと、赤龍帝様は難しい顔をし、そして白様はとても嬉しそうな表情をしたのであった。
「……正直、龍の王として、人間と関わることを禁止した身としては、なんとも言えぬところだ。だが、可愛い弟がそうしたい、というのならば……まあ、仕方あるまい」
と、仏頂面で言う赤龍帝様。
すると、それを聞いた白様が、クスクス笑いとともにこう言った。
「それはもちろん、許さざるを得ないでしょう。なにしろ、禁止なさった兄上みずからが、先に破ってしまわれたわけですから。しかもそれが、ペットであるウルリカを甘やかすため、という、とても私的な理由ですしね」
「むうっ……」
それに、気まずそうに声を上げる赤龍帝様。
そう、白様もとっくにご存じなのである。
私たちが人間の街に散歩に行ったことは。
なにしろ、私が人間の街で本を仕入れ、お土産として渡したのだから当然だ。
さすがに、お世話になっている白様に手ぶらでは帰れなかったのである。
そう、それは決して、これを機に白様も散歩に連れて行ってくれないかなー! なんていう、下心による行動ではないのだ。
本当である。
とか私が考えていると、そこで赤龍帝様が、長兄の威厳を取り戻せとばかりに咳ばらいをし、そしてこう言った。
「とにかく、目立たぬよう街に行って、交換をしてくるぐらいならば今後は許そう。ただ、人間の生活をおびやかさぬよう、細心の注意を払うように」
「う、うん。もちろんだよ、上兄様」
と、ひきつった笑みで言う青くん。
まあ、そうだよね。まさか人間の街で雷を落としまくり、あちこち壊しました、なんて言えるわけがない。
こればかりは、私たち二人だけの、永遠の秘密である。
「それで、青君。私たちで人間の道具を使って遊ぶ、というお話でしたが」
「あっ、はい、下兄様! その、実はいくつか用意したのですがっ」
そう白様が進行を促すと、青くんが慌てた様子でテーブルを指し示した。
四人で囲めるテーブルで、この空き部屋に私たちが運び込んだものだ。
そのテーブルには、中央に火の灯った燭台が置かれ、周りにはいくつか、私たちで厳選した玩具が置かれている。
「さっ、最初はこれでどうでしょう! 簡単で、気軽に遊べるんですっ!」
そんな玩具の一つを手に取ると、青くんが緊張した様子でそう言う。
それは、紙の上にいくつものマスが描かれ、それぞれに指示が書かれたもの。
赤龍帝はそんな玩具を不思議そうに見つめた後、「これは、なんという道具だ?」と私に聞いてきた。
なので、私はテーブルの上のサイコロを取って、見せながらこう答えたのだった。
「これは、すごろくというゲームです。このサイコロを使って、ゴールする順位を競い合うゲームなんですよ」




