表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キモデブと、琥珀色の守護天使  作者: あるふぁ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
47/47

47話 夢の続きを、隣で

倒れた背もたれと、重なる鼓動


「そんなに、わたしに気を使わなくても良いのですよ……」


 腕の中に収まるレナの、あまりにも慈愛に満ちた声。カズヤは自身の奥底に沈んでいた不安を、掠れた声で吐き出した。


「レナに、嫌われたら……また、一人に……」


「大丈夫ですよ……。カズヤくんを一人になんてしませんから」


 その言葉は、呪いのようにカズヤを縛っていた孤独への恐怖を、優しく解いていく。触れたら壊れる、触れたら嫌われる。そんな怯えが消え去り、カズヤは自然と、彼女を抱きしめる腕に力を込めた。


 抱きしめ合っていると、膝の上に乗っていたレナが、不安定な姿勢のままモゾモゾと動き出した。


「ん……このソファ、背もたれを倒せたような気がしたのですけれど……」


 レナが、さらりと破壊力のある言葉をカズヤの耳元で囁いた。甘い吐息が耳朶を擽り、カズヤの脳内は瞬時にショートする。


「え、なにを……?」


「このまま、ゴロンって……しようかと。その方が、お互いに楽ですし……」


「それは……ダメだって」


「また、それですか……。んしょっと……えいっ!」


 レナが座面の脇にあるレバーを弄ると、バタンっ! と音を立てて背もたれが水平に倒れた。


「わぁっ!」

「ひゃぁ!」


 予期せぬ勢いに二人は驚きの声を上げ、顔を見合わせて思わず笑い合った。

 フラットになったソファーの上。レナは迷うことなくカズヤの隣に潜り込むと、彼の腕を自分の首の下へと引き込み、腕枕をさせるような形でピタッと密着した。


「えへへ……特等席です」


 レナはカズヤの胸板に頬を寄せ、潤んだ琥珀色の瞳をゆっくりと彼の方へ向けた。至近距離で見つめられ、カズヤはもう、抗うことをやめた。

 彼は観念したように、レナの細い背中に腕を回し、彼女の温もりを全身で受け止めるように抱きしめ返した。


 窓から差し込む陽光が、重なり合う二人を包み込む。

 静かな部屋に響くのは、トクン、トクンと共鳴し合う二人の心音だけ。青いリボンがカズヤの腕の中で微かに揺れ、甘く、溶けるような時間が静かに流れていった。



夢の続きを、隣で


「カズヤくんを……嫌いになんて、なりませんよ……。これ、落ち着きますね。温かくて、柔らかくて……優しいカズヤくんのいい匂いがします。……ふぁぁ……居心地が良くて、安心できますし、眠くなってきちゃいました……」


 独り言のように呟いたレナだったが、ふと、腕の中から返事がないことに気づいた。

 顔を上げると、そこには規則正しい寝息を立てるカズヤの寝顔があった。


「あら? ……カズヤくん、眠ってる? えっと、わたしじゃ……カズヤくんを運べませんし……んふふ」


 レナの存在が、彼にとってそれほどまでに深い安らぎになっていた証拠だ。

 カズヤは彼女の柔らかな温もりに包まれ、これまでの緊張や不安から完全に解放されて、深い眠りに落ちていた。


 レナは彼を起こさないよう、細心の注意を払って腕の中から抜け出した。自分の部屋へと戻り、動きやすい部屋着に着替えると、お気に入りの枕と羽毛の掛け布団を抱えて、再びソファーへと戻る。


 カズヤに優しく布団をかけると、レナもその隙間に潜り込んだ。再び彼の腕を枕にし、大きな体格にすっぽりと収まるようにして抱きつく。


「今日も、いっぱい……ありがと。おやすみなさい……」


 レナは愛おしさがこみ上げ、我慢できずに顔を寄せた。

 カズヤの吐息が届く至近距離。レナはそっと瞳を閉じ、彼の頬に自らの唇を重ねた。


 触れた瞬間、レナの柔らかくぷるんとした唇の感触が、カズヤの肌に吸い付くように伝わる。瑞々しく、熱を帯びたその感触は、彼女の心の奥に秘めた情熱と、彼を慈しむ慈愛の結晶だった。

 ただの挨拶とは違う、どこか湿り気を帯びた甘く深いキス。


「ちゅ……♡」


 小さな音を立てて唇を離すと、レナは満足そうに頬を緩め、カズヤの胸に耳を当てた。

 ドクン、ドクンと一定のリズムを刻む彼の心音。それはレナにとって、どんな音楽よりも心地よい子守唄だった。


 彼女はカズヤのTシャツをぎゅっと握りしめると、その温もりに包まれながら、幸せな夢の続きへと誘われていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ