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キモデブと、琥珀色の守護天使  作者: あるふぁ


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42話 甘い香りと、独占欲の特等席

鉄壁のボディーガード


 髪を整え、上質な服に身を包んだカズヤは、190センチの体格も相まって、どこかモデルのような独特の存在感を放っていた。

 デパートのコンコースを歩いていると、すれ違う人々の視線が以前のような嘲笑ではなく、純粋な興味や驚きに変わっているのが分かった。


「あの、すみません……」


 不意に、若い女性の二人組がカズヤの前に立ち止まった。彼女たちは少し顔を赤らめ、上目遣いでカズヤを見上げている。


「え、あ、はい」


「この近くに、美味しいスイーツのお店があると聞いたんですけど……場所が分からなくて。もし良かったら教えていただけませんか?」


 カズヤが戸惑いながら口を開こうとした、その瞬間だった。


「この辺りの案内なら、わたしが承りますっ!」


 レナがカズヤの前に割って入り、鉄壁の守りを見せた。彼女はカズヤの腕をこれ以上ないほどぎゅっと抱きしめ、二人の女性に対して花のような、けれどどこか威圧感のある「完璧な笑顔」を向けた。


「そのお店でしたら、あちらの出口を出て左です。……ね? カズヤくん、行きましょうか♪」


「え、あ、ああ……」


 圧倒的なオーラで女性たちを後退させたレナは、カズヤを引きずるようにしてその場を離れた。角を曲がり、人影が少なくなったところで、レナは「ぷーっ」と分かりやすく頬を膨らませた。


「……言ったそばから、これです。カズヤくん、優しすぎます! あんなの、絶対道を聞くフリをしてカズヤくんを狙っていたんですよ!」


「いや、流石に自意識過剰だって……。本当に困ってただけだろ?」


「いいえ、女の勘です! もう……やっぱりカズヤくんを外に出すのは危険です。お家で、わたしだけが見ていられるように監禁……はダメですけれど、とにかくダメです!」


 レナはさらに密着し、カズヤの腕に自分の頬をぷにぷにと押し付けた。その独占欲全開の様子に、カズヤは困り果てながらも、彼女の必死な姿をどうしても愛おしく感じてしまうのだった。



甘い香りと、独占欲の特等席


「……もう、カズヤくんは無自覚なんだから」


 先ほどの女性たちの視線がよほど癪に障ったのか、レナはカズヤの腕を離そうとせず、足取りもどこか重い。琥珀色の瞳は少しだけ潤み、眉を八の字に下げて不満を隠そうともしなかった。


 (本当に、俺なんかのことであんなに必死になるなんて……)


 カズヤは彼女のそんな様子を放っておけず、フロアガイドの看板を見て一つの提案をした。


「レナ、あそこにあるカフェ……入ってみないか? 紅茶とフルーツタルトが有名らしいけど、レナが好きそうな雰囲気だと思って」


「……わたしの、好きな……」


 レナが顔を上げると、そこにはアンティーク調の家具が並び、落ち着いた照明に包まれた隠れ家のようなカフェがあった。

 カズヤがエスコートするように彼女の背中にそっと手を添えると、レナは少しだけ表情を緩め、「……はい、行きたいです」と小さく頷いた。


 店内の奥まったソファー席に座ると、レナはカズヤと正面ではなく、迷わず隣の席に腰を下ろした。


「レナ、さっきはごめんな。……でも、俺にはレナしかいないから。道を聞かれたくらいで、どこかに行ったりしないよ」


「……本当ですか? 本当に、わたしだけですか?」


「ああ。約束する」


 運ばれてきた色鮮やかなフルーツタルトを前にしても、レナの視線はカズヤに固定されたままだ。

 カズヤは彼女をなだめるように、フォークで小さく切ったタルトを差し出した。


「ほら、これ美味しそうだぞ。……あーん」


「……! あ、あーん……」


 レナは驚いたように目を見開いたが、すぐに蕩けるような笑顔になり、差し出された一口を頬張った。

 甘い香りが二人の間に広がり、レナの頬がぷにぷにと動く。


「んふふ……とっても、甘いです。カズヤくんの優しさの味がします♪」


 すっかり機嫌を直したレナは、カズヤの肩に頭を預け、幸せそうに紅茶を啜った。外界の視線を遮る静かな空間で、二人の心は再び深く、甘く重なり合っていった。

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