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9 特徴

「……っ!」


 レイさんは顔を逸らした私を見て、クスッと笑った。そして、私にしか聞こえないぐらい小さく優しい声で囁いた。


「魔性の異形者よ

 共に人の世で皮を被れ

 ――『虚飾肉身(フェイク・アバター)』」


 レイさんがそう言った途端、顔の横側で眩く光った。驚いてレイさんを見ると、彼は悪戯が成功した子供のように笑みを浮かべていた。

 そして、その光は粉のように細かくなり、私に降り注いだ。それが私に触れた瞬間、雪のように消えていった。


「これは……?」

「魔性の落とし子の特徴、魔物の特徴を宿した部位のみを隠すことができる魔法だよ」

「!?そんな魔法が……」


 そこに置いてあった姿見を見ると、私の尖った耳はなかった。その代わりに、普通の人と同じような耳があった。私は思わずそれを触る。


「え!?実態まである……。てっきり幻影魔法かと思ったんだけど…………」

「この魔法はレイが創ったんだぜ」

「え……魔法って、創れるものなんですか?」

「普通は創れねぇよ。だからレイは規格外なんだ」

「あはは、そんなに褒められると照れるな」


 カイルさんたちの声に私は振り向く。振り向いた私は思わず息を呑んだ。


ルゥさんの頭には狼の耳。


メルティさんの額には虹色に輝く一本角。


カイルさんの口元からは鋭い牙が覗いていた。


「!?ルゥさん……その耳は?」

「狼の耳だよ!」


(フワフワそう……って、そんなことより)


「メルティさん、その角は……?」

「……えぇ。私、ユニコーンの落とし子らしいので。恐らくユニコーンの角なんでしょうね」


(……あまり聞かれたくない話なのかな)


「じゃあカイルさんの牙は?」

「ん?まぁ、オレ、吸血鬼の落とし子だしな。このぐらいの牙があるのは当然じゃね?」


(当然じゃないよ………。でも、吸血鬼ってそういえば………)


吸血鬼。

子供の頃から何度も聞かされた恐怖の魔物だ。

「早く寝ないと吸血鬼が来る」

そんな言葉を思い出す。


(まぁ、実際の吸血鬼ではないなら、大丈夫か………。カイルさんチャラいから、吸血鬼っぽいイメージないし)


―――吸血鬼の落とし子、ねぇ………。


「ん?ちょっと待って……。ルゥさんもメルティさんもカイルさんも見た目が変わっているってことは……もしかしてレイさんも…………」

「俺がどうかした?」


 レイさんの声に振り向く。


「レイさんは……何も変わりはないですね」

「あぁ、まぁね。ガッカリしたかい?」

「い、いえ別に」


(顔が良すぎるから、何かすごい特徴があると思ったなんて言えない……。それとも、隠してたり……?)


「え、えーっと……。それよりも、一体どうなってるんですか?私の魔性の落とし子の身体的特徴は消えてます。でも、ルゥさんとか……皆さんには見えてるんですけど…………」

「この魔法は、今言った効果の他に『魔法が掛かっている人には効かない』というものがある。だから、俺たちから見たらルシエラの耳も尖ったままだよ」

「そ、そうなんですね」


―――こんなに効果がある魔法を『創る』、か………。さすがレイヴァ……いや、今はレイだっけ。


(……何のこと?)


―――なんでもないよ。


「……とりあえず、そろそろ俺は店に戻るよ。昼休憩も終わり。午後からはルゥも手伝ってね」

「はーい!」

「カイルも行けるよね?」

「分かってるよ、サボんねぇって」

「そこまで言ってないんだけど…………。メルティさんは……今日、どう?」

「私は止めとくわ」

「うん、分かった」


(私も何かできること……いや、ダメ!過度に関係を作りすぎたら良くないよね。でも………)


 私は少し迷ってから、彼らに話しかけた。


「あの……私も手伝えることはないですか?」

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