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何者でもなく、何者にもなれず、今後とも何者かになるつもりはない  作者: 中原 誓
2. 春の章

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春の鹿

 雪解けと共に、冬の間ずっと行方をくらましていた鹿たちが戻ってきた。


 春の鹿は、アスファルトの色をしている。


 あの色で車道に立たれると、急に現れたように見えて心臓に悪い――ほんと、勘弁して。


 そこ、そこのエゾシカ君。君だよ。車道の真ん中で立ち止まって、こっち見てんじゃないよ!


 スンとした顔でこちらを凝視する姿には、既視感がある。

 乳牛(ホルスタイン)に似ているのだ。


 以前、道東を旅行している時に、牧草地から牧草地へ移動する牛の横断に出くわした事がある。

 牛の歩みは意外と速い。

 ただ必ず、一頭いるのだ。

 道路の真ん中で立ち止まり、こちらをじっと凝視する奴が。

 蹄に中指があったなら、間違いなくこちらに向かって立てている。


 エゾシカも牛も、鯨偶蹄目(くじらぐうていもく)ウシ亜科。

 似た習性を持っているのかもしれない。


 そんなエゾシカ君だが、好物はチューリップだという。

 数日前のニュースで、植えていた100本のチューリップを全て食べられたという人がインタビューを受けていた。


「ああ、球根じゃなくて葉っぱとか、花芽を食べるんだ」


 テレビには、根本近くまでザックリと食べられた緑の残骸が点々と映っている。


 待てよ。

 あれと同じ物、私も見たぞ。


 急いでレースのカーテンを開いて庭を見た。


 柔らかい土の上に残る蹄の跡――そこまでは気づいていた。『いつ来てるんだろう?』くらいに思っていた。


 そして、枯れた雑草の間に散る緑の残骸。


 あれは、チューリップだったのか。



 しまった。

 うちもやられてた。



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