第180話「幼女の気持ち」
「…………」
なんとか美咲をなだめるも、彼女は疑うジト目をやめてくれない。
よほど志藤さんのことを危険視しているようだ。
困った……そう思っていると、突然下からクイクイッと服を引っ張られてしまう。
「ん?」
「じぃーっ……」
視線を向けると、なぜか志藤さんの妹が俺の顔をジッと見つめていた。
何か顔についてるのか……?
と気にすると、志藤さんの妹は勢いよく両手を広げた。
「んっ……!」
そして、何かをアピールするように、強く俺の目を見つめてくる。
これは、まさか……抱っこしろ、ということか……?
「…………」
戸惑っていると、みるみるうちに志藤さんの妹の目に涙が溜まり始める。
まるで心愛を相手にしているような感覚に陥り、俺はとても申し訳なくなった。
「あっ……! 駄目だよ、莉々……!」
俺が幼女の無言のアピールに屈しようと、手を伸ばした時だった。
考えごとをしていたらしき志藤さんが、慌てて声を出したのは。
きっと、会ったばかりの人に抱っこを求めたら駄目って言っているんだろう。
だから、俺が抱っこをやめようとすると――『パンッ!!』と、莉々ちゃんが勢いよく開いていた両手の平を合わせた。
猫だましだ。
「きゃっきゃっ!」
目をパチクリとさせる俺を、莉々ちゃんはペチペチと拍手しながら楽しそうに大笑いする。
この子、ボーッとした様子や、かわいらしい見た目に反して、なかなかのクソガキだったようだ。
「あぁ……遅かった……」
志藤さんは猫だましをした妹を見つめながら、頭が痛そうに項垂れてしまう。
つまり、常習犯だったというわけだ。
彼女は考えごとをしていたので反応が遅れたんだろうけど、こういうことは早めにやめさせるようにしないと、他の人に迷惑をかけることになるんだが……。
――と、思った俺なのだけど。
「ごめんなさい……その子、家ではいつもおとなしいのに、外で私の友達に会うと、いっつも抱っこを求めてからの猫だましっていう、いたずらをしちゃうの……」
申し訳なさそうに説明をしてきた志藤さんの言葉を聞いて、気が変わった。
「家ではおとなしいのに、志藤さんの友達にはいつもいたずらする、か……」
俺が莉々ちゃんの目を見つめると、莉々ちゃんはキョトンとした表情で小首を傾げる。
うん、多分この子……。
「俺と遊びたいの?」
心当たりがあった俺は、優しい言葉遣いを意識して、莉々ちゃんに尋ねてみる。
すると、莉々ちゃんは――
「んっ……!」
――途端に目を輝かせ、コクコクと頷くのだった。








