侍女の心得
その日は修羅場になるかと思われた。
まだ若い巫女様の護衛騎士ロット様の婚約者候補さまのメイリーン=ナイナクレ子爵令嬢が面会を求めてこられ、巫女様がこれを了承した。
最近まで遠征に同行されていて、戻って来られてからは自国のエレックから随分と色々な物をお取り寄せをなさっておられます。
特に書物関連が多く、少し見せていただいただけなのですが内容的には絵が多く殿方が主役の…というか、殿方だらけの本が多いです。
しかも、ななめ読みというのでしょうか、小さな蔵書のような書物を読むのが物凄く早いのです。
一般的な女性であれば、しおりを挟んで、少しずつ余韻を楽しみながら物語を味わうのですが、巫女様は一時間に一冊とか、午後だけで二冊は読破なさいます。
絵の多い蔵書は表紙もペラペラと薄く、確かタイトルが♪シャンプとサンディ♪だと言っておられた気がします。
でも、取寄せなどは物凄くお金がかかりますから一般的ではありません。
それを彼女は「〇〇〇〇の発売日だ。」なんて、如何にも思いつきましたとばかりに取り寄せてしまうのです。
御実家のハイマート家の爵位も侯爵かそれに準ずるくらいの家柄なのかもしれませんが、あまり金銭に頓着がないようなのです。
そもそも取り寄せに関しては城の者は誰も知らないのです。
どうやって祠の中から発注なさっておられるのか検討もつきませんが?
なにか、僕や密偵のようなお付きがおられるのでしょうか。
しかも、書物もどこかにしまっている様子もありませんし、一体どこへ消えていくのでしょう。
彼女の謎は深まるばかりです。
後一月程度の予定で次の祠へ巡礼に向かうらしいですが、男性ばかりの書籍を愛用なされておられるくらいですからその間になんとしても侍女仲間の集まりなどに誘いたいのです。タイミングや話す機会に恵まれずなかなかままなりませんが、裸の殿方がたくさん描いてある蔵書ですから、きっと私共との時間を楽しく分かち合えると思うんです。
今日だって急な来客がなければ、彼女の部屋にちょっとした本と会報をさりげなくお渡し貸しするか、最悪テーブルの脇に忘れていく(・・・・)予定でした。
会報とは名ばかりの侍女仲間の数人が協力し作ったちょっと過激な内容の詩集と本なんです。
…が、雲行きが怪しくなってまいりました。
彼女は最近の私が食器のカートに忍ばせているモノの存在に気づいておられるようでした。
給仕を済ませ去り際にさりげなくプツを残していこうとした私を「もう少しお茶をいただけますか。」と、引き留めて男と女の淫靡な物語を語り始めたのです。
アルチェ様もの凄い過激派でございます。このご令嬢様が耐えられるか不安でございます。
ああ、しかし、これは、かなりの持論をお持ちなご様子。
とにかく、お一人で過ごす事に非常になれた方なので、私共としては一般的な会話からいろいろなお話をさせていただいてましたが、非常に合理的な意見で結論づけてしまわれるので、世間話などは続きません。
まるで学者か何かのような知識きにも精通しておられます。
しかし、若い女性としてこれはどうなのでしょう。
お父様の秘蔵のカンノーショウセツといわれておりました、お父様が書をお書きになられているだなんてやはり彼女はとんでもない良家の生まれのようですね。
でも、その内容が…「いけないわミカーヤさん私には子供と旦那が…。」
「サザーニェさん、それでもボクは…。」
そして、「剛直したクシをサザーニェのツボ口にゆっくりと…。」
最後はなぜか、隣人のお館様を交えての………いけません、うら若いご令嬢がこんな物語を知っていてはいけないと思うんです。
そして彼女が「やっちまいなさい。」何もかも私の想像の上をいっておられました。
最後の『なのかしら~。』のくだりで、物凄く艶のある演技をなさっておられ、同性でありながらオチてしまいそうな気持ちになりました。
でも、最早そんな事言っていられません。彼女にこの詩集を絶対に見せてはならないと理解致しました。
天国へ導かれてしまいそうな素晴らしい笑顔に魂が抜かれるかと思いました。
そして理解いたしました。
私共絶対にアルチェ様を煩わせばたりはいたしません。
えぇ、ムネに誓います。
ですからお願いします。
カートの中は見逃してくださいませ~(;△;)。
流れがあべこべになっていたので修正しました。




