第11話:帰宅騒動
部屋の扉を閉めその場にへたりと膝をつくと、硬い表情をした顔を両手で覆い隠す。
「顔がつかれたよう…。」
…明日は顔面筋肉痛になってると思います。
城の関係者と一通り挨拶をかわしたのだが、愛想笑いを多用しすぎて顔が引き攣りそうだった。
挨拶が辛くなる瞬間が来るなど考えもしなかったものだが…。
治療で体内の気もかなり減っている状態で、太刀打ち出来る人々ではないのは確かなようだ。
まず、貴族には一目見て悪人だなんていないのはいいとしても、そのうえで偉い人が腹の下でなんて考えていようが読もうなどとできる訳もない。
実際会った人達は"誠実"な人ばかりなのだろうが、問題はこの国の貴族に代々伝わる"褒めて伸ばす"育て方だ。
少しでも、後ろ向きな返事をするといい部分をしっかり褒める。
それは、褒められるのが苦手なアルチェの精神を的確に揺さぶる。
…おだてに乗ってしまいそうで怖い。
注意しなければいけないのは、憐れを誘う天涯孤独設定は非常にマズイので決して口に出してはいけないようだ。
容姿に関しても褒められたら素直に受け取り、その後の会話の主導権を与えてはいけない。
なぜなら、前者は養子、後者は異性の紹介に繋がるから。
…そう、それはとてもめんどくさい、非常にめんどくさい。
人の情けが身に染みるが、情けは人の為成らずで放置してほしい。
正直、もう華麗臭と関わりたくないんだよ。(ェ
…だけど、晩ご飯どうしようか、外に行くの面倒だけど、あったかいの食べたいわ。(脱力
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ウマッWW」
カウンター席に座り、シチューを白米にかけて黙々と食べる。端からみれば行儀が少々よろしくないが、アルチェになっても嗜好は変わらず米派だ、故にシチューはごはんにかけて食べる物。
ご飯にシチューかけるんはデフォでしょ?
ホクホクの野菜がたまらなく美味い、この世界も野菜はほとんど同じで嬉しい限りだ、食事で冒険する必要はないのは本気でありがたかった。
好き嫌いはないんだけど、見た事ない物に対してだけは流石にちょっと躊躇するよ。
スーパーで、アボカド見て見ぬふりするしな。
食堂に入った時は下品な野次がとばされたのだが、"気勢"をかけまくって黙らせた。
そのおかげで、食事に集中する前は通夜の如く静寂に包まれていた。
うんうん、マッチョな兄貴集団に男は背中で語る物さ…とエレックで言われたので試したのだが、効果は覿面だったようだ。
どす黒いオーラが見えたような気がした、とかあるから実際に視認が出来るドス黒いオーラを全身から立ち上らせてみせたら美少女に絡もうなど考える奴はいないのだょ。
(´Д`)気味悪いからな。
しかし、後から来た者達にはそんな事があったなどと思うはずもなく、後から一人で来た人はあいている席に座ってゆくんだ。
食べ終わる頃には、屈強な男達で席が大分埋まってしまっていた。
一番奥のカウンター席だったからガチムチに挟まれる事はなかったが少々熱苦しい。
後ろを見れば、空いているテーブルもあったんだけども、男達は互いに会話する訳でもない様子。
たまたま似たような体格の男が、独り酒を飲みにきたのだろうか?
…ここ普通の食堂だよ?そういうのは、場末の酒場とかでやるほうがダンディズムでいいと思います。
ぞろぞろと集団でガチムチが来店してたりとで、店内の肉密度が増加していた。
女性からしたら最悪な雰囲気のハズなのに、しばらくまったりしててもいいかな~と考える位に、穏やかな雰囲気が漂っているとあたりとか変だ。
へたしたら荒くれ者にしか見えないのに行儀よく食事をしているナニよコレ??
旅の途中、冒険者や荒くれ者が集まる食堂兼酒場の雰囲気は何度か体験した。
それらとはもっと互いに牽制し会うような喧々囂々といった騒ぎがあった。
そして、アルチェは大概その中に解け込めず、浮いた存在になる。なのに、浮き立つでもなく埋没するでもなく…。
ふと、視線を動かした時ガチムチ達のマナーの美しさが目に入る。
しかも、全員どこにでもありそうな服装だったが、エリ元にナプキンをかけて飲食を”嗜ん”でいた。
そこでようやく、城からそうは離れていないのだから、高い身分の人が立ち寄る事があってもおかしくはないのだと思いいたる。
「ごちそうさま、お勘定お願い。」
なんとなく納得できた気になって、女将さんに代金を支払い店を出る。
◇◇◇◇◇◇
数分後の店内
「隊長、緑の姫は無事ホテルに到着しました。」
「ご苦労、後はホテル内部に配置した護衛に任せよう。
当直組以外は解散。」
「了解。」
女将さんに多めの代金を支払い、ゾロゾロとガチムチが店を出ていく。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
イメージBGM:どんどんどろどろ(あ~あぁぁ~ああ~/ターザンのシャウト)どんどんどどろ…【リピート】
中庭のソレを見た瞬間、竹と木の打楽器、手で叩くような太鼓の音が響くジャングルの奥地に迷い込んだのではないかと錯覚しそうになった。
だって、イケニエが捧げられてんだもん。
四隅に松明がたかれ地面に突き立てられた丸太に、またしてもお兄さん。
腰蓑みたいな装飾と、竹槍を持ったメイドさんまでいます。
…うん、わかったよ理解して良い類いの世界じゃない事は。
【再びBGM】
「んぐぐんぐぐぐぅー。((オレは無実だー。」
「ダマレ」
ぶすっ
「ぐぎっー!?(いだー!?」
中庭に魂の叫びがコダマする。
◇◇◇◇◇◇
正直、たまに聞こえる"雑音"が嫌です。
「なんか、聞けるといいんだけどなぁ。」
"携帯ラジオ"のチューナーをいじる。
はい、オーバーテクノロジーじゃないのかって?
いやいやサイズはかなり違うけどラジオ放送の普及がしてました。
電脳世界みたいな異世界ですから、エレック大聖堂を電波塔にして、提携している国やギルドに向けての放送とかもあるんだそうです。
ちなみに短波だの地上波ではなく地中波【地脈放送】で、この小さいラジオは祠エレク専用の端末機で外のラジオもやってます。
他にはレーダー機能もあり、個体の識別もして報せてくれるので、祠エレクは温厚で物知り(情報通)で霊感が強い(レーダー万能)人が多いとゆう偏見があるのだとか。
ザザッザッ…ィハンニョ、サルビォ……
〇鮮放送?イラエ。
ザザッザッザッザー(桃Zの新曲)
「…これでいいか。」
ベッドに潜り込んで聞く事にした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「…………はっ。」
どうやら、ラジオを聞いている間にうたた寝をしていたらしい。"明かり"をつけっぱにしていたので部屋の中は明るい。
「ふうぁ、今何時だろ。」
外は暗いがやけに湿った空気が首筋をなぞる。
ピカ☆
「…なんか光っ《ドーン》…ぅきゃ~!!」
超ビビりました!至近距離の落雷でした。
う~、ビビった、なんて心臓に悪いんだ。
あっ、ラジオ!
ラジオを消さねば!
確か雷が鳴ってる時にテレビやラジオを聞いていると"雷が落ちる"とお母ちゃんがいってたんだっけ!(なんて間違った認識
プルプルとラジオに手を延ばす。
だただだ…ダカダカダカダカ
ドカッ!バタタン
「巫女さま!大丈夫ですか!!」
ひいっ!?ガチムチが扉を蹴破って乱入して来たぁあっ!?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
巫女様のおわす宿屋に護衛として配備されたのは、日頃から身辺警護にあたっている近衛騎士団だ。
『きゃ~!?』」
若い女の悲鳴が聞こえ、小隊長は疾風の如き速さで部屋を飛び出し、彼の部下もソレに続く。
「巫女さま!大丈夫ですか!!」
ドアを蹴破り部屋へ突入するが、巫女様の他は誰も部屋にいない。
幸い怪我をした様子でももない。
「…ふうぁぁっ!?」
悲鳴というより、障害物に足を取られて転びそうなドジッ子が口から出しそうな声が彼女の口から洩れる。
部隊の突入で、相当酷く驚かせてしまった様子ではあったが、どうやら無事なようだ。
「ぅぁあ、…にげちゃだめだ逃げちゃだめだ…肉団子にマッシュポテトが(中略)…ウメさんへるぷみー。」
がくがくぶるぶると震えながら、彼女がベッドの上で三又の短槍を構えて…少々やりすぎたのかもしれない。
「お、落ちついて下さい。我々は王宮近衛『なんだ貴様ら…ぐぱぁっ。』
バギャン、カランカラン
「貴様ら彼女に何をした。」
後ろを見れば、廊下に立っていた隊員の上半身が仰向けに壁を突き抜け、そのわずかな隙間から半身を乗り出した男。
えっ、どこ通り抜けるきだっ!?
小隊長は底知れぬ悪寒を覚えた。◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
アルチェ視点
街の宿屋なのにガチムチの物取りが(涙ブワッ
逃げたいへるぷみー。
こわいよー。
おうちへかえりたいよぅ。
そんな事を考えながらガチムチに刃先を向ける。
…勝てるけど、攻撃したら肉団子がマッシュポテトのケチャップ和えになると思うんだ。
いわゆるスプラッタです、人だけは嫌ー。(ガクブル
なんで、あれだけ派手な音がしたのに他に人が来る気配がないのさ。まさか、この宿屋が手引きを?抵抗しなけりゃられる…でもマッシュポテトのケチャップがけが(泣)うああああ(錯乱中)
はっ、ウォーター!
へれんけらよありがとう。
マッシュポテトとケチャップだから悪いんだ!
イチゴソースをイチゴソースをハンバーグ添えて…(´Д`)どないせいっちゅーねん。(爆
なら梅果肉を…ウメさんへるぷみー。(ぷるぷる
※隊長の言い訳は全く耳に留まってません。
「貴様ら(略)。」
聞き覚えのあるようなないような声にハッと意識を取り戻す。
そこには、蓑虫の用に縛られ穴から身を乗り出した青年の姿があった。
…どMの大将ぉっ!?
柚|`)感想お待ちしてます




