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第12話 要塞都市ミルソル

「…に決まってるじゃないですか…」

「ん?

なに?」

肝心なところが聞こえなかった…

「一緒に遺跡に行くに決まってるじゃないですか!」


ミリアは立ち上がり宿屋から出ていってしまった…

そうか、未探索遺跡のこと覚えたのか…

ん…


周りの客の視線が突き刺さった。

「…ちっ…早く追いかけろよ…」

ボソッと零したのはミリアに兄の情報を話してくれた警備兵だった。


「は、はは…」

ぎこちない笑いが漏れ、引きつった顔で宿屋を後にした。




街に駆け出てミリアを探す。

ミリアが行きそうな場所…と言っても初めて来た街だしなぁ…

いや…待てよ…


ふと思い付いて屋台が並ぶ市場に向かった。

市場は昼食を求める客で賑わっていた。

香辛料と油の匂いが胃を重くする。


う…二日酔いで来るとこじゃないな…


「あ!アインツさん!」

声の方へ振り返るとミリアだった。

手にはカリッとなるまで焼かれた干し豚が挟まった大振りのパンとエールの入った瓶を握っている。


マジかミリア…

「マジかミリア…」

声に漏れた…


「?」

ミリアがはてなマークを浮かべている…


「その…さっきまで怒ってなかった…?キミ…」

「…あ」

はっとした顔をするミリア。

良かった、思い出したみたいだ…いや良くないのか?


「とりあえず場所を変えようか…」

ミリアと共に喧騒から離れた公園に向かった。



「まぁ…何て言うか…

嬉しかったよ、素直に」

ベンチに座り目を合わせず呟いた。

「んふふー

わかってますよ!

でもでも!

もし追いかけてきてくれなかった…って考えてましたよ!」

ミリアが楽しそうにエールを煽る。

んん?ちょっとモヤモヤするが…

「うーん…まあいいか…

とにかく付いてきてくれるなら明日はお城に行くからね

通行証を貰って関所を通過しないと…」

「はーい!わかってますよー!」

はぁ…その手に持ったパンとエールがなぁ…

「じゃあ僕は宿屋に戻るね…」



翌日…

城門前。

門番の兵がこちらを見て近付いてきた。

「義手に義眼…貴方はアインツ様ですね

どうぞこちらへ」

「え?」

なんで僕のことを?

ミリアも不思議そうな顔をしている。

門番の開門の掛け声の後、門が開かれた。


装飾の少ない城内を進むと、比較的飾り気の多い部屋に通された。

「アインツさん、ここ来たことあるんですか?」

「ないよ、初めて来た

なんで僕のこと知ってたんだろうね…」

ミリア緊張してるな。

まぁ3日目の二日酔いよりはましか…


やがて重い扉が開かれ、髭を蓄えたいかにも武闘派といった男が現れた。


男はドカッと椅子に座ると口を開いた。

「アインツさん、お待たせ致しました

私はガンドーラと言います

早速本題に入りますね

国境を越えた先の遺跡…我が国ではサウスアルネルド遺跡と呼んでいますが…

あの遺跡の探索を所望と聞いています」

「は、はい…

でも…なんでそんなことまで知ってるんですか?

僕たちが来ることもわかってたみたいですし…」

ガンドーラは腕を組み少し考えてから再び口を開いた。

「特別対応と言うのはあまり自覚的に使うべきではない、私はそう思っています」

そう前置きし、説明を続けた。

「貴方のことは、貴方のお師匠様…つまり悠久の魔女カンナ様から申し付けられました」




城を後にし、教会に出立を告げに向かった。

歩きながらミリアが恐る恐る口を開く。

「あの…アインツさん…

悠久の魔女がお師匠様って…」

「ああ、そんなこと言ってたね…」

「…」

あれ?どうしたんだろう…

「なんか怖がってる?」

「だってあの有名な魔女様ですよ!?

この国より長生きとか魔術を全部覚えてるとか…

ホントに存在してたのもびっくりですけど…師匠って何ですか!?」

ミリアが顔を上げ一息で捲し立てた。

「え、う、うん

でも人違いじゃないかな?

だってそんなこと師匠は一言も…」

ミリアは息を整えながら問いかけてきた。

「普通魔術学校で教わりませんでした?

唯一今も生きている"魔女"ですよ?」

そうだったんだ…

確かにこの義手も義眼も師匠が作ったな…

「魔術学校は行ってないからなぁ…」

ミリアが"しまった"と表情で見せる。

「あ、ごめん、そんなつもりじゃないよ」


気が付くと教会の前に着いていた。

ノックするとククナさんが修道服で出迎えてくれた。

「あ!ククナさん!シスター似合ってますね!

私も着てみたいなー!」

すかさずミリアが反応を見せる。

「あ、シスター長に頼んでみましょうか?」

「え!いいんですか!」

「ダメダメ!

ククナさんも冗談言わないで下さいよ…」

ブンブンとご機嫌に振っていた尻尾がシュンと垂れ下がった…気がした。




「…と言うわけで…

もう僕たちはこの街から出ます

無事未鑑定の聖遺物を手に入れたら、また戻ってきますよ」

ククナは俯いて話を聞いていたが、顔を上げ口を開いた。

「はい…

短い間でしたが、アインツさんには感謝の言葉が尽きません…

歓迎会じゃ先輩たちの料理でしたが、今度街に来たら私の手料理を食べて下さいね

今度は睡眠薬は入れないので…」

「…ぷ、ぷふふ」

堪えきれない笑いが漏れてしまった。

「はい!私も楽しみにしてますね!」

すぐ横でミリアも声を上げる。

またも赤面して俯くククナに別れを告げ、教会を後にした。




宿屋に戻り荷物をまとめ、国境側の関所へ。

城で受け取った通行証を見せるとすんなりと通ることが出来た。


「ミリア、ここからはトールミルディンだよ」

「来たことありますよ」

覚悟を求めて言ったつもりだったが、ミリアは平然と応えた。

「と言っても小さい頃なんでよく覚えてないんですが…

兄と父と私の3人で、確か首都のミルディンに行きましたよ」

「そうなんだ

これから行くのはミルソルって街だけど何か知ってる?」

歩みを止めずに問いかけた。

「うーん…

行ったことはないですけど、世界史の教科書で名前を見たような…」

「そっか

国境からそう遠くないはずなんだけど…」

小高い丘を登りきると先の視界に物々しい雰囲気の巨大な壁が見えてきた。

「あれかな…」

アルネルドが城塞都市ならあれは要塞都市かな…

「でっかいですねぇー」

ミリアが見たままの感想を口から垂れ流す。

「もうひと頑張りだね

明るいうちに到着しそうだ」

「はーい」




丘から見えた距離以上に時間がかかってしまった…

途中崖があったり水路が掘られていたり、何度も迂回をさせられた。

結局着いたのは夕刻過ぎ、辺りは暗くなり始めていた。


「お腹すきましたね…」

「今日はやめてね、お酒」

「私をなんだと思ってるんですか!」

酒乱?酔っぱらい?

「酒乱でも酔っぱらいでもないですからね!」

ミリアがキッと睨みを効かせる。

「心読まれた!?」

「やっぱり思ってたんですか!?」

「あ、ほら着いたよ」


黒く塗られた壁は近くで見るとより冷たい印象を受けた。

なるほど夕闇に溶け込むように塗ってるのか…


「止まれ!」

門に付けられた小窓から兵士が1人顔を覗かせていた。

「何者だ、この国の者か?」

任務に忠実って感じの兵士だ。

やましいことはない、正直にいこう。

「僕はカルナッゾから来たアインツと言う者です

同行者はミリアと言います

中に入れて貰えますか?」

兵士は一切視線をそらさず僕の言葉を聞いた。

「私の立場で許可は出せない

隊長に確認してくるから待っていてくれ」

ピシャリと小窓が閉められた。


「なんかお堅い感じですねー」

のんきだなぁ…

「入れて貰えなかったら野宿だよ?」

「え!じゃあもっと頼んで下さいよ!

酒場に行こうと思ってたのに…」

野宿で良いかも…


やがて通用口の扉が開かれ装飾の入った鎧を身につけた狐顔の兵士が現れた。

「あなた様がアインツ様ですね!

どうぞこちらへ!

(わたくし)はこの要塞を取り仕切っております、ルーベルと申します!

以後お見知りおきを!」

これはひょっとしてまた師匠が?

でも正直話が早くて助かるよ。

ルーベルに導かれ通されたのは豪勢な屋敷だった。

ミリアが目を輝かせてキョロキョロと内装を見渡している。

「ここは私めの別荘でございます!

お二人でお使い下さい!

急いで料理も用意させますので!」

ルーベルがパン、パンと手を叩き、矢継ぎ早に指示を出していく。


数分後に案内された食堂には豪華な料理が並んでいた。

海から山まで内陸部とは思えないメニューだ…

「それでは私はこれで…

あとはお二人でごゆっくり…」

ルーベルは意味深な笑みを残して消えた。

なんか勘違いしてそうだな…

「アインツさん!早く食べましょう!

ワインもありますよ!」

ミリアは料理に釘付けだった。

「ミリア、お酒はやめてね」

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます。

感謝してもしきれない思いです。


もし本作をお読みになった結果、ほんの少しでも「面白い」「続きが気になる」「良い暇潰しになった」等、思っていただけましたら、

ページ下部にある星マークからの評価、感想、ブックマーク等いただけますと、とんでもなく励みになります。


ではでは、今後ともよろしくお願いいたします。

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