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僕は御三家の最高傑作~現代社会の裏側で最強を極める~  作者: 藤水 肇


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5.妖命開帳


「【妖命開帳】」


なんだこれ。減っていた風間の妖力総量が全快し、身体に纏っている妖力が爆発的に増加している。


「若様、これが陰陽師の最終奥義【妖命開帳】です。その日1日の妖力使用を代償に妖力を全開させ、それを爆発的に放出し数分から十数分間の覚醒状態を作り出す。デメリットももちろんありますがそれは後ほど。今は体感してください」


言葉と共にチェス兵が動く。速い。クイーン、ナイト、ポーンが目の前に迫る。そうか、妖力の放出量が上がったことで術式の出力も上がってるのか。《信仰武装》を解き《奔流支配》を使い攻撃を流すことでなんとか窮地を脱する。


「若様、戦場では常に敵味方の位置を頭に入れておきませんと命にかかわりますよ」


風間の拳が無警戒だった脇腹に直撃し、訓練場の壁に身体が叩きつけられた。痛い。とっさに妖力を込めたがほぼノーガード。全身から血が溢れ出し思考がまとまらない。


おかしい、風間の術式はチェス兵の操作。式神には複雑な命令をすればするほど自分で操作しなくてはならない。数体ならまだしも十数体を連携させながら術者本人が攻撃などできるはずがない。実際、風間の戦いも先ほどまではそうだった。しかし、風間は16体による連携攻撃と本人による奇襲攻撃を成功させた。何かカラクリがある。それを考えろ。


まとまらない思考に1つの可能性が浮かび上がる。

まさか、【妖命開帳】は術式までも覚醒させるのか?


「若様、若様のお考えの通りですよ。【妖命開帳】は術式の格を限界の1段階上に上げます。故に【妖命開帳】には【妖命開帳】でしか対応できません。私の場合チェス兵を全自動化できます。妖力放出力も一時的とはいえ特級クラス。ギブアップなさいませ若様。負けるのは恥ではございません。若様はまだ若く、【妖命開帳】を習得されていないのです。この戦いは私めが卑怯な手を使った故のこと、若様の実力は十分、正二階位に届きうるでしょう」


風間が倒れ伏す僕に近寄り、思考を読んだようにそう話す。黙れよ。負けなんか認めてたまるか。負けたら終わりだ。終わってしまう。何が恥じゃないだ。恥に決まってるだろ。相手がどんな技使ってきたって勝つのが最強だ。最強に負けなんてない。だから僕は負けちゃダメなんだ。僕は現代最強なんだから……


……みんなが言う現代最強は僕であって僕じゃない。天性の才能と人工的に与えられた才能、それらに並ぶほど強力な特級クラスの妖力、その3つの潜在能力のことを人は現代最強というのだ。僕自身のことではない。僕の今の実力は風間の言う通りせいぜい正二位階レベル。従一位階には届かない。それでもなお、人は僕のことを生まれた時から現代最強などと呼ぶ。僕を見ていないのだ。みんな僕を通して如月家の最高傑作を見る。数百年の彼岸と未来への希望を僕を通して感じている。


それを知ってなお、僕は僕のことを現代最強と嘯く。自分より格上などいくらでもいることを知っても傲慢な態度を取る。それがみんなが望む現代最強だとわかっているから。これを無くしたら僕は空になってしまう。自分の人生に意味がなくなる。そんなことは耐えられない。だから負けられない。


 ――まさくんはもっと私たちを頼っていいのよ。重荷を背負う必要はないわ。まだ子供なんだから。


母の言葉を思い出す。なんでこんな時に思い出した?無意識に負けを認めたのか?あんな言葉を真に受けるな。現代最強は誰にも頼らない、子供かどうかなんて関係ない。


だから……だから立て!自分自身を証明するために


「!!あの状態からまだ立ちますか……若様、立つというなら手加減できませぬ。私はここで負けを認めることで若様が先に進めると思ってます。負けをお認めください。勝ち目はありませんぞ」


風間の言葉を聞きながら『回復』の術式で身体を全回復させる。


「もう時間ないんだろ?時間内に決着つけてやるからさっさとかかってこいよ。お前こそ勝てると思うなよ現代最強に」


風間の方めがけて本気で駆け出す。風間と僕の間に割り込んでくるチェス兵を《奔流支配》で流していく。頭が壊れそうだ。こんなに《奔流支配》を同時使用したのは初めてだ。それでもやらなければ最強には届かない。


残りはクイーンのみ。いける。


クイーンの側部にまわり、反応される前に本気の一撃を叩き込むとクイーンが倒れ伏す。これで後、風間だけだ。いける……!!


「若様も知っているはずですよ。ポーンは代償を払い覚醒できることを。クイーン以外の全てのチェス兵を捧げてもう1体クイーンを造っただけですよ。それにまだそこのクイーンも壊れてません」


一度距離を取る。クイーン2体に風間、まずいな。風間のタイムリミットまであと3分弱だろう。それまでに勝つ。何としてでも……


クイーン2体が僕を挟み込むように移動し、風間が正面から突っ込んでくる。風間の攻撃を受け流しながら側面からのクイーンの遠距離攻撃を躱わす。


このままじゃジリ貧だ。やるしかない。ぶっつけ本番で術式の同時使用。


《奔流支配》と『闇影』を使う。先程と比にならないほどに頭が割れそうだ。……!そうか、壊れそうなら片っ端から治していけばいい。僕ならそれができる。すぐさま『回復』を使う。一瞬、脳みそが内部で破裂したようだがそれすらも『回復』で治す。いける。これならできる。術式の同時使用。最初の構想とは異なり3つの術式併用になったが安定している。まあ、その分妖力の消費は激しいが僕の妖力なら十分許容範囲だ。


今なら出せる。理想の大技……


「[影奔黒流]」


訓練場に物理防御不可能の直接人体には影響がない黒い水流が溢れ出す。その水流が全てを飲み込み訓練場は暗闇と巨大な渦流のステージとなる。


……何も見えず自身の位置すらも分からない。


暗闇は妖力を持つ全てのものから少しずつ吸収する。また、渦流により妖力の巨大な流れができていることから妖力を使用すると渦の中心に向かってしまい正常な術式使用は不可能となる。


そう。最強以外は……


《奔流支配》により渦流を支配しその中心に自身を置くことで訓練場内の妖力全てを自身に集約する。更には『闇影』による効果で自身と繋がった闇から風間を探しだし[影渡り]を使い集約した妖力全てを風間に放出する。


まさしく必殺の攻撃であった。


攻撃とともに轟音が響き訓練場が倒壊し雅仁は術式を解除する。疲労は限界を超え倒れこみ空を見上げた。


……何とか勝てた。負けるところだった。風間は大丈夫であろうか。戦いに夢中になるあまり本気で殺しにいってしまった。


そんなふうに考えていると瓦礫の中からボロボロの風間が姿を現し僕の横で倒れ込む。限界らしい。


「生きてたんだ。あれ喰らって生きてるとか人間辞めてんじゃない?」


「【妖命開帳】でキングの防御力が底上げされてたのと、とっさにクイーンを解除し結界を本気で張ったおかげですよ。制限時間があと3秒早かったら生きてません。まさか【妖命開帳】の最中に負けるとは……さすが現代最強でございますな。感服です」


「別に勝ったとは思ってないよ。でも負けなかった。及第点は取れた。今日のところはそれで満足さ」


僕たちは空を見上げながら笑い合う。楽しかった……これが本気のぶつかり合い。癖になりそうだ。



このあと僕は訓練場を倒壊させたことを母上にしこたま怒られ、そのまま食事も取らず死ぬようにベットの上で眠りについた。



 ===


私―風間総一郎は若様との戦闘後、ご当主様の執務室にて報告を行なっていた。


「……以上が本日のご報告となります」


私の報告を聞き終えたご当主様は少しの間考え込むように腕を組み、口を開いた。


「そこまでの力を既に得ているとは……自身の息子ながら恐ろしいものだ。では予定を早めて来年の幼年総祓の前までには序列戦を行わせる」


「かしこまりました。では序列戦に間に合うように鍛錬と実践を予定に組み込みます」


「ああ、そうしろ。下がっていい」


「はっ。失礼しました」


執務室を出て自室へと向かう。


それにしても将来が楽しみよ。若様はどれほど強くなられるというのか。10になる頃にはもう従一位階へと昇進なされているだろう。容易にその未来が想像できる。私は歓喜で身体を振るわせ自室へと入った。

 


 








 

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