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続:異世界交差点事務所

 時井を転送魔法で送り出した後、アンダンテは大きく息をつくと事務所のソファーに深く腰を下ろした。


「ふぅーやれやれ一件落着だ。この後、監察局の査察が入るから無事終わって何よりだよ。それに監察局にばれたら減給物だったな」


「所長、所長専用の机があるのですから来客用のソファーに座ることはないですよ」


 と言いつつフォルテはアンダンテに緑茶の入った湯飲みを差し出した。


「まぁ、一息つくぐらい大目に見てくれよぉー」


「仕方ありませんね。でも実際どうなることかと思いました。トキイさんが入ってきたときは口や目から血が噴き出してあわや死ぬところだったのですよ」


「魔力に耐性のない者が濃密な魔力に満たされたこの部屋に入るだけで体に変調をきたすのは当然だろうね」


 アンダンテはフォルテからトキイが死にかけたという報告を聞き軽く首を傾げ疑問符を浮かべた。


「……でも普通に会話していたよな?あの世界の住人の特性か?」


「違いますよ。メトロノーム世界の住人と何ら変わりありませんよ」


「そうか?では何故トキイ殿はなぜ無事だったんだ?」


 アンダンテの問いかけにフォルテは大きく胸を張って答えた。


「それは私がトキイさんを強化したからですよ。ほら、この間来た人がいたでしょう。その人を参考に足らない分を強化したのですよ」


「なるほど。そうか……強化ね」


 アンダンテはフォルテの言葉にかるく頷きかけた。


「……まて、フォルテ。強化といったな。その強化の効果時間は?」


「効果時間ですか?そんなに長くはないですよ。対象が人族だったので効果はせいぜい千年といったところでしょうか。我々の寿命と比べれば一瞬ですね」


「なんだー、千年か確かに我々ではい……おい、フォルテ」


「?」


「人族の平均寿命は何年だ?」


「えーっと、長い人で数千年といった人がいましたが、あれは特殊な魔導士でしたし……一般の人ならせいぜい七十年でしょうか……あ!」


 フォルテはこの時点でやっと自分の間違いに気が付いた。


「やれやれ、起きたことは仕方がないが……フォルテ、始末書を提出するように」


 フォルテはアンダンテから始末書の提出を命じられ項垂れた。


「まぁ、嘆くな。減給は無しにしておいてやるよ。トキイ殿も無事送り返したことだしな」


「そうですね……」


 フォルテは自分の引き出しからいつもの・・・・始末書を出そうとしてその手が凍り付いたように止まる。


「……あれ、でも所長。トキイさんの世界をどうやって判別したのです?」


「それは本人の魔力から……あ?」


「トキイさん本来の魔力は小さいのでこの間来た人を参考に強化したから……」


「うわわああああああ。しまった!元の場所ではない場所に転送している!」


 “転送先の世界を間違える。“アンダンテの間違いはそれだけではなかった。


「そうですねぇ。参考にした人が来たダンジョンの階層は百階層。トキイさんが来たダンジョンの階層は五十階層。五十階層分しか転送しないということは……」


「途中の五十階層に転移させてしまった!!」


 アンダンテは驚愕の事実気が付き頭を抱えた。


 だが、数分後。


「……彼はあの世界から初めて訪れた者だったね?」


「そうですね。あの世界でダンジョンが出来たのはつい最近です。トキイさん以外の訪問者はまだ表れていませんね」


「そうか、なら話は簡単だ。トキイ殿の強化は初めて異世界交差点事務所に訪れたことによる特典だ。これなら問題ない」


「なるほど、初回特典ですか。それなら何も問題なさそうですね」


 こうやって事件をごまかそうとする二人だったがその後ろの影から人が不意に現れる。


「ん?何が特典だって?」


「「アレグロット監察官!」」


 アンダンテとフォルテは異口同音に現れた人物の名を叫ぶ。

 黒く長い髪をオールバックでまとめ、黒いスーツを身に纏い片眼鏡を掛けたその姿は出来る女を表していた。

 そんな監察官に対して何とか自分の都合のいい理由をつけようとする二人であったが、不意打ちで査察を行ったエリート監察官であるアレグロットの目を誤魔化すことはできなかった。

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