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おっさんは帰りたい! -冤罪でダンジョンを探索していたら異世界に出てしまった。人類初の異世界到達で特典?そんなことより早く家に帰りたい……。-  作者: 士口 十介
おっさん異世界に立つ

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廃坑とオークと女騎士とくれば……

 ダンジョンの廃坑部はかなり広く両手剣ツヴァイハインダーを振り回せるぐらいの広さがあった。

 通路の壁には等間隔にランタンらしい灯りが並んでいて通路を明るく照らしている。

 音のする方向へ目を向けると少し先にある部屋から音がしているようだ。


(通路よりも明るそうだな……。音からすると一対一の戦いに思えるが……。)


 部屋の入り口近くになると部屋の灯りで戦う者同士の影が廊下に映し出されているのが判る。

 動く影は二つ……一対一で戦っているのは判るがそれだけではない。戦っている者たちとは別の影も見える。


(戦う者達を囲んでいるのか?それとも……。)


 部屋の入り口からそっと中をのぞく。


(!なんだって!!)


 部屋の中では人間よりも二回りほど大きく暗灰色で牙の生えた豚面の魔物が全身鎧フルプレート装備の騎士と戦っていた。

 その後ろには二匹の薄汚い暗青色の魔物が騎士を見ている。


(いったいどんな状況なんだ?と言うよりオークにこんな習性があったのか?)


 暗灰色のオークは体格から考えるとオークの上位種、たぶん小説とかでよくある“ハイ・オーク”と言う奴だろう。

 凄まじい力を持っているらしく人の身の丈もあるような出刃包丁の様な武器を縦横無尽に片手で振り回している。ワシには出来そうに無い芸当だがオークの剣筋を追う事はできた。

 それに対して騎士の方は全身鎧フルプレート片手剣ショートソードシールドと言うダンジョン探索では一般的な物だ。

 戦闘は片手剣が届くぎりぎりの範囲で行われている為か騎士の方が一方的に嬲られている状態だ。


(これは敗北が見えた状態だな。だがこの状況、加勢すべきか否か……。)


 ハイ・オーク、そしてハイ・オークの後ろに立つ二匹のオーク。ハイ・オークの力量は騎士よりも上。わし一人でオーク一匹に勝てるとは考えられない。つまり、この状態で加勢しても犠牲者が一人増えるだけだろう。


 ワシは頭を下げて奥歯を噛み締めるとその場をゆっくりと立ち去ろうとする。

 立ち去る前に戦いの様子を伺う為に顔を上げると丁度騎士がハイ・オークの一撃を受け盾ごと入り口近くまで吹き飛ばされてきたところだった。

 壁に当たった衝撃で兜の面覆部分フェイスガードが外れ床に転がり落ちる。


(ここからでは見えん。金色のような前髪が見えるが顔は確認できん。男か女か……。ん?)


 騎士を吹き飛ばしたハイ・オークは牙が覗く口から涎をたらし股間を膨らませながら騎士に近づいてゆく。


(む?オークのこの反応もしや……。)


 ハイ・オークがすぐ近くまでやってくると騎士はお約束の言葉を吐いた。


「くっ!殺せ!」


 そんな騎士の言葉を聞いたオークたちは涎をたらしながら盛大に下卑た笑いを上げた。


 ん?


 待てよ、これはチャンスじゃないか?


 今現在、騎士(たぶん女)の前にはボスらしいハイ・オークが一匹。そこから少し離れてオークが二匹。

 ハイ・オークは騎士が抵抗できないとみて油断しているのか武器をだらりと下げている状態だ。


(この状態でハイ・オークに一撃でも入れて注意をこちらに向ければ騎士が反撃しハイ・オークを倒す事ができる。そうすれば残りのオークの数は二匹。こちらも二人になるから同数だ。

 ハイ・オークの力量から考えると、わしの方は倒せなくても防御に専念すればオーク一匹の攻撃ぐらいは何とか持ちこたえることが出来そうだ。

 そして騎士の力量ならオークを倒すことはたやすい。


(よし!勝ち目が見えた。ならここはよく狙って……。)


 今立っている場所からハイ・オークが立つ位置まで距離は結構ある。通常の武器の攻撃では届かないが、槍を持っての攻撃、突撃チャージならこの距離は逆に有利になる。


(距離は十分。ハイ・オークに突き刺す瞬間、捻ることを意識して……。)


 ハイ・オークの手が騎士に手をかけようとしたその時、わしは猛烈な勢いで飛び込みハイ・オークに対し捩じりながら槍を突き立てた。

 探索者の間では螺旋衝、いわゆる“スパイラル・チャージ”と言われる槍技だ。


 突撃で槍を突き立てたにしては大した抵抗もなく、気が付いたらわしはハイ・オークの横を通り抜けていた。


(狙いがそれたか!不味いぞ!)


 急いで振り向いたわしの目に映ったハイ・オーク姿は予想もしなかったものだった。


 ハイ・オークの横腹の部分と太腿部分は無くなり丸く削り取られた様になっていた。しばらくするとハイ・オークは体を支えきなかったのか折りたたむ様にその場に崩れた。

 そのハイ・オークの姿を見たオーク二匹はとっさの出来事に硬直した様に棒立状態になっていた。


(何が起こった?いや、今それは考えるな!これはチャンスだ!)


 わしはすかさず体をひねりハイ・オークに後方で立っていた二匹のオークへ接近する。体をねじった反動を槍に伝えながらオークの頭の斜め上から槍を叩きつけた。

 槍の最大の攻撃ともいわれる上からの叩きつけを受けたオークの頭は首の骨ごと陥没しその場にうずくまるように倒れる。

 わしは叩きつけた際に下段の構えになった槍を薙ぎ払い残るもう一匹のオークの腹を斜め下から切り裂いた。オークは上半身と下半身に分かれながら絶命する。


 ハイ・オークへの突撃からわずか数秒。

 その部屋での生存者はわしと女騎士の二人だけになっていた。

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