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片翼の翼〜姫巫女は後継探しの旅に出る〜  作者: 佐藤真白


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プロローグ 辺境の村

私の背は激しく竹鞭で打たれ服の切れ端やら血飛沫やらが細かく飛んだ。


人のものなのかと自分で出していて驚くほどの獣の咆哮も、もう音を成さない程に枯れ始めたころ、私を鞭打つ手が不意に止んだ。

破れた鼓膜が微かに音を拾う程度に大きな声が掛けられる。


「大丈夫?安心して、私が来たからもう心配はないわ」


そう言って差し出された手は柔らかくて温かくて力強かった。


息も絶え絶えに見上げれば、月光を背負った少女はその銀の髪をゆっくりと揺らしながら大人達の方へと歩いて行く。


そして懐からキラリと光る月の雫を固めたような色味のロザリオを取り出した。








私の村は大陸から沖に200メートル程船を出した場所にある。

離小島の村落は排他的で内向的だ。

余所者を受け付けない雰囲気で近付くものすら稀な陰気臭い場所だ。


偶に来るのはやはり近くの離小島や大陸の村の人か、この村を出て行った人の縁者くらいで訪れる者はまず居ない。


昨日と同じ今日をただ生きる。そんなつまらない生活を粛々と送る。


主な収入源は漁業と家業。それを細々と日々こなす。



島の外に出るのは漁に出る時か狩に行く時、あとは5歳の選抜と成人の祝祭の旅のみが外界に出る事を許される唯一と言っても良いかもしれない。


そこで逃げ出すことも出来るかもしれないけれど、5歳の時には村から数人の大人達がお目付け役として同行していた。

成人の時にもお目付け役は同行するのだろう。でも、誰が同行するのかは何となくだけどわかる。



私はこの島が大嫌いだ。娯楽もなく楽しみが何も無い。未来すらない。私は産まれてからずっとお前は男になって村に戻って来いと言い聞かされて育った。同い年の母互いの妹は逆に女になって縁を繋げと言われていた。

でも、5歳の選抜で妹が教会へと連れて行かれた。


それは誉れだと両親だけでなく村中の大人は喜んだ。妹との別れを悲しんでたのは私だけだった。

5歳の選抜で選ばれた子供は教会で巫女になるのだと大人は言った。なりたくてなれるもんじゃない。入りたくて入れるもんじゃないって…。


そして教会にも出入り出来るのは許され人だけ。

まして妹の連れて行かれた中央大教会はその中でも特別だ。世界で唯一巫女を囲うそこは、私たちみたいな平民は人生でただ一度、神聖な成人の儀でだけ入る事が許される特別な場所…



そんな島から私は出たくてしょうがなかった。


13歳になれば祝祭の旅に出れる。

その時になれば逃げ出そう。そうして教会で巫女になっているであろう妹を連れて何処か遠くへと逃げて暮らすのだ。

そう夢見ていた。




私が11才の時に祝祭の旅の途中だと言う客人が島に訪れた。中央の金持ちの子供は成人前に祝祭の旅と称して大陸を巡る巡業の旅に出ると聞いた。本当にそんな人がいるのだと、こんな小島にまで来るのかと呆れと憧れが私を襲った。


だから夜中、人目を忍んで一行の泊まる村長の離れ屋敷へと向かって連れて行ってと頼むと決めた。

でもその途中で私は聞いてしまった…


招かれざる客人は消す…大人達がそう話しているのを…

客人の身なりは大変に良く、持っているものですら良い金になると…


私は驚いてしまった。盗み聞きするのに使った木箱を蹴飛ばしてしまい、大人達に気付かれた…


走って、走って客人の離れまで後少しと言うところで捕まった…私は最後の力で叫んだ


「逃げてーーーー!」


そこで私は殴られて意識を失った。


そして私は村の共同土蔵で見せ様に折檻を受ける。逃げ出そうとした事もバレた…

罵声も鼓膜を破る程殴られて聴き取れなくなったのは有難い。だってその中には一緒に暮らす親や祖父母、叔父や叔母の姿もあるのだから…




あぁ…私の人生もここまでか…成人前に死ねば女神様が少しばかり気をかけてくれるかな…



また意識が飛びかけた時、閉ざされていた扉が開いた。

光を背負って姿を見せた少し年上の少女の銀糸の髪が風に靡き、片翼のように見えた。

そしてその瞳の翠は草原を吹き抜ける風のような力強さを感じる。



逃げてと言ったのに…だと言うのに…何故か自分が助かったのだと不思議と理解する。彼女達が助けてくれたのだと…。


差し出された手は温かく、そして柔らかだった。

そして私の顔を包むと私の身体の痛みは引いた。耳も聴こえる…。これは神の奇跡?



「えぇい!善良なる村民の皮を被りし海賊どもよ!此方におわすお方を誰方と心得る!畏れ多くも現薔薇巫女様が絆の恩妹君で在らせられるぞ‼︎姫巫女様の御前である‼︎図が高い!控えおろう!」

呆然とする私の近くで少女のものではない、少し低い声が響く。


少女が胸元から取り出したロザリオには可憐なスノードロップの花が刻印されていた。



ご無沙汰しております。

佐藤です。



少しずつ書く元気が戻って参りましたので、本当に少しずつ楽しんで進めていきたいと思います!


冒頭だけ書いて10年放置の話です(笑)

基本のんびりと書いていく予定ですので気長に読んでいただけると嬉しいです。

勧善懲悪の姫巫女様の珍道中から世界の真理への探究の物語となると予定です。最後は決めておりますが好き嫌いの別れる作品かなと思います。


性差別などを、助長したい訳ではございませんが物語の進行上デリケートな問題を取り上げる可能性を含んでおります。ご了承の上で読み進めて頂けますと幸いです。



誤字脱字のご報告は大変有り難いです。お気付きの際にはご連絡頂けますと幸いです。



別作品では御座いますが「本当の娘が帰ってきたので養女の私は消えることにしました」の書籍が現在1〜3巻発売中です。そちらもよろしければご覧ください。



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