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南極の氷が解けるとき、魔法は名前を失った  作者: つのん。
第二章 融けはじめた名前

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『南極の氷が溶けるとき、魔法は名前を失った』制作ノート

① はじめて小説を書くにあたり、小説の書き方を調べた


今回、はじめて本格的に小説を書くにあたり、まず小説の書き方そのものを調べるところから始めた。


調べていく中で意識するようになったのは対比、登場人物の感情、伏線回収、読者が続きを読みたくなる引き、話や章ごとの役割などだった。


普段は物語を娯楽として消費している時には、こうした要素を強く意識することはあまりない。


作る側に回ると自然に受け入れていた展開や感情の流れもかなり細かい設計があることに気づいた。


例えば、ただ悲しい場面を書くのではなく、なぜその人物が悲しいのか、その悲しみが過去のどの場面とつながっているのか、その場面を読んだ後に読者が何を感じるべきなのかを考える必要がある。


伏線回収についても単に前に出した情報を後で使うだけではなく、読者が読み返した時に「最初からこの意味があったのか」と思える形にしたかった。


WEB小説の構造にも注目した。

以前はWEB小説のタイトルがなぜあれほど長いのか、あまり理解できていなかった。

調べていくうちに、タイトルには作品の内容を一瞬で伝える広告のような役割があり、読者が好む要素を見つけやすくする機能もあるのだと知った。


自分ひとりで考えているだけでは気づかない視点があることに気づいた。

そこからAIを壁打ち相手として使うことも考えるようになった。


②テーマの設定


小説にはテーマ性が重要だということを学びテーマをいくつか考えた。


地球温暖化、気候変動


他人の選択肢を封じることの危うさ


ファンタジー、魔法


最初は「南極の氷が溶けた時に、その下から魔法文明の遺跡が現れる」という発想だった。


現代的な問題である気候変動と、ファンタジーである魔法文明を組み合わせれば面白い世界観ができるのではないかと考えた。


それだけでは「南極の氷の下からすごい遺跡が出てきました」という設定の面白さで終わってしまう。


そこで南極大陸そのものを地球温暖化を「止める」ことに絡められないかと考えた。

そこから「止める」という行為に意味を持たせることにした。

止めることは、本当に正しいのか。止めることによって、誰かの選択肢を奪ってしまうことはないのか。


この問いを物語のあらゆる場所に散りばめることができた。

古代の魔法文明、氷結の魔女、兄妹、主人公と弟、現代社会の保護や管理。

それぞれの場面で、「止める」という言葉の意味が少しずつ変わっていく。


小説という形でありながら社会性を帯びた作品にできる。


③世界観の設計


テーマがある程度固まった段階で、南極と過去の文明について考え始めた。


最初は親子の対比構造を作り、親心から来る子供への制止行為を軸に物語を進めようとしていた。しかしこの構図には問題があった。


親子の関係であれば時間の経過とともに子供側が親の意図や気持ちを理解できるようになってしまう。そうなると南極の古代文明がすでに失われている構造と噛み合わない。物語の現在に存在していない文明を扱う以上、その対比はうまく機能しないと感じた。


次に南極について調べるうちに「止めることの正しさ」という行動の制止だけではなく、「時間の停止」という視点が出てきた。


南極の氷層は過去を知るためのタイムカプセルとしての役割も担っている。単に自然に閉じ込められていたのではなく、意図して閉じ込めた文明だったらどうか、という発想が生まれた。


氷と停止。その二つを象徴する存在として、氷結の魔女という人物像が浮かんだ。世界を壊そうとしたのではなく善意から。その「止める」という行為が結果的に人々の生活や未来まで止めてしまう。


この作品の南極は遺跡としてではなく魔女の罪を背負った場所に変わって行った。


④登場人物・物語の作り方


小説の基本である対比を考えた時、過去の兄妹と現代の兄弟を対応させると綺麗なのではないかと思った。


しかし物語を進める上で妹を現代に出すと対比構造が歪になることに気づいた。そこで過去の兄弟と現代の兄弟を対比させ氷結の魔女は物語の「出題者」のような役割にすることにした。


まず、過去の兄弟の対比構造を考えた。


兄は守ろうとする。弟は進めようとする。どちらも間違っているわけではない。


そして、その二つの正しさの間に妹がいる。


この二つを重ねることで、過去の悲劇と現代の主人公の傷がつながっていった。


物語の途中の過程や最後に何を解決しなければならないのかが少しずつ見えてきた。


そこから細かいストーリーや具体的なエピソードを肉付けしていく段階に入った。


⑤AIの役割


ここまで来ると、序盤・中盤・終盤の大きな流れはほとんど固まっていた。


それを実際の物語として具現化を自分だけでは難しかった。そこでAIを壁打ち相手として利用することにした。


使い方としては、エピソードの具体化、辻褄の確認、薄い部分の指摘、セリフ回しの違和感確認、伏線の置き方や回収タイミングの相談などが中心だった。


特に多く相談したのは伏線回収のタイミングだった。


「この伏線はどのタイミングで回収するのが一番刺さるのか」「このエピソードは全体の中でどんな役割を持たせられるのか」


こうしたことを何度も確認した。


一つ一つ描きたいシーンを伝えそれが物語全体のどこに置かれるべきかを整理していった。


そして大事なことで、1話をどのように区切るかについてもAIと相談した。最初は52話程度になりそうだったが最終的には32話構成に圧縮していくことになった。


⑥草稿の作成


ここまで来るとほとんど完成したも同然。(と思っていた)実際に文章を書き始めると思ったよりも冗長になった。プロローグだけで一万字を超え、これでは読者が入ってこれないと感じた。


そこでさらに相談して行くと自分の文章にはいくつかの癖があることが見えてきた。


反復して書く癖。説明が長くなる癖。表現が直接的になりすぎる癖。事実を並べるだけで、小説の情景になりきっていない箇所。


小説を書いているつもりだったが実際には「説明文」を書いていた。


この表現はどうか、もっと短くできないか、別の言い方はないか、情景として見せられないか、といった相談を何度も重ねた。


少しずつ、削れるところが見えるようになった。感情を直接説明するのではなく、手、沈黙、視線、物の位置、氷や白さの描写で表すことも意識するようになった。


但し、これは最後まで伴走が必要だった。初稿では足りなかった部分を見つけ、削り、書き直し、また読み直す。その繰り返しで、現在の形に近づいていった。


⑦最後に


この作品は自分ひとりでは完成しなかったと思う。


伝えたいテーマや物語の中に散りばめたいメッセージ性のあるエピソードがあった。グリム童話や寓話のように読んだ後に何かが残るような場面を書きたいという思いもあった。


AIを使う前は、そうした要素は余計なものとして削られるのではないかと気掛かりだった。しかし実際には大事にしたかった要素をどう物語の中心に置けるかを考えるための壁打ち相手になった。


私が伝えたいと思っていたことがAIとの相談の中で蔑ろにされることはなかった。むしろ、AIが一番評価してくれたのはそういう人間臭さや人間的な表現ばかり。


昨今、AIによる創作活動には否定的な意見が多い。


AIを使うことそのものが悪いとは思わない。問題なのは何も考えずに人間の表面的な部分だけをなぞらせるような使い方だと思う。


表現とは自分の内面や思想を外に出し他者と共有する行為だと思う。そして表現が得意な人ばかりではない。


自分の中にある価値観や感情をどう形にすればいいのか分からない人もいる。そういう人がAIの補助を借りて自分の中に眠っていたものを言葉にしていくことはとても人間的な行為ではないかと思う。


この作品はAIに書かせた作品というより、AIと対話しながら自分が書きたかったものを見つけていった作品。最終的に残ったのは最初から自分の中にあったものだった。


そして作者は読者に対しての出題者であったが、私に対しての出題者は『南極の氷が溶けるとき、魔法は名前を失った』という作品そのものとAIだった。

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