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闇落ち砕きの利己主義者(エゴイスト)  作者: コミネカズキ
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家族

人の心ほど不確かで不安定なモノは無い。だから俺は人を信じない。

俺、作田者人(さくたものと)の人生には不条理なことが溢れていた。


子供の頃は意識していなかった……と、言うより比べる対象が無かったから疑問にも思わす【まあこんなものか】と思っていた。


例えば小学生の時、成績の悪い……と言っても平均位なのだが……俺を親父は地下に監禁し、親父が納得する成果が出るまで外出はおろか食事も与えなかった。

別に親父は教師でも何でもないのだから成果の云々など有って無いようなものだ。

結局自分の会社での憂さを俺を怒鳴り殴る事で晴らしていたのだろう。


ある日、突然親父が「釣り堀に行くな!」と怒鳴りつけてきた。

何故かと問い掛けても明確な答えは無く不機嫌面だけが膨れ上がったので、俺は本能的にその話題を切り上げた。

後日、俺は近所の友達に釣り堀に誘われた。親父の顔がチラついたが、しかし俺はその誘いに乗り出掛けた。

普段から親父の顔色を伺って生きてきた為、無駄に空気を読む癖が付いてしまっていたのだ。

だが、それがいけなかった。

近所にある釣り堀には魚を釣ると持ち帰り用の魚と交換出来るポイント券が貰える制度があったのだが、その日に限って一緒に遊んでいる友達がこぞって自分の釣ったポイントを俺に譲ってくるのだ。

2時間もすると俺の元には大量のポイント券が溜まっていた。

すると友人の1人がイヤラシイ声でこう宣言した。

「おい皆っ!溜まったポイント券を魚と交換して作田の家に届けてやろうぜ!」

……結果、俺は親父に殴られ蹴られ怪我を負わされた。

友人が持ち帰った魚は父親が八つ裂きにした。

その時のニヤけた親父の顔と釣り堀に誘ってきた友人の顔が重なった。

後から知った話だが、数日前、友人は父親から釣り堀の無料券を貰っていたらしい。


父親以外の家族も最低だった。


父方の祖父はセクハラを絵に書いたような人だった。

幼い俺と母が風呂に入っているとよく覗きに来ていた。

ボディタッチなども異常に多かった。

母は父親に相談したらしいが、逆に怒鳴られ否定され一蹴されたらしい。

家族旅行先などでも美人を見つけると家族そっちのけでその女を追いかけていっていたのを覚えている。


父方の祖母はドラマに出てくる様な鬼姑だった。

俺はよく買い物を言いつけられたのだが、例えば「パンを買ってこい!」と言われ食パンを買って帰ると

「私が食べたかったのは菓子パンだ!こんなもん要らないんだよ!」

と顔めがけて投げつけれ、家から追い出された。

母親が帰るまで雨の中玄関で震えながら立ちすくしたのを今でも覚えている。


この祖母の横暴さ、非道さは俺だけに留まらす、母親にも及んだ。


ギャンブル癖や浪費癖のある父親、高額の年金を生活費に回さない祖父母、作田家の経済状態は最悪だった。


母は外でフルタイムで働かされ、家庭内においても炊事洗濯家事の一切喝采をやらされ続けた。


ある日祖父が母に言った。


「者人を連れて出ていけ!」


どうやらこの時親父が外で作った愛人に子供が出来たらしく、その愛人を正妻に迎える為に父親が祖父とグルになって母と俺を追い出す算段を目論んだらしい。


母親はまだ幼い俺にとって父親が居なくなるのは良くないと必死に抗った。

しかし抵抗も虚しく、母と俺は作田の家から追い出された。

離婚届は暴力を振るわれ無理やり書かされた。

俺も死ぬ程殴られたのを覚えている。

今思えば母はそんな俺を庇って離婚届にハンを押したのかもしれない。


当然、父親からは慰謝料どころか生活費も養育費も援助はなかった。


数年後……俺が中学2年の時、母親は過労で死んだ。

死に付した床で母は俺に作田家での今に至る経緯を全て語った。

母は最後に……「父親や祖父母への恨みはある……。けれど、お前が居てくれたから幸せだった。」と言い残した。


…………処理しきれなかった…………。


幸せだったと言った母親。

何も知らなかった俺。

憎い父親と祖父母。

14才で1人になった不安。

孤独。


俺が母に出来る事は無かったのか?

父親達が憎い、復讐したい。

でもどうやって?

そもそもこの後どうやって生きていけば……?

将来……俺は将来どうなっていくのだろう?

俺の未来はどうなってしまうのだろう?


見る見る俺の心はグチャグチャで真っ黒に染まって言った。


「あらら~。こりゃあ落ちるな~。間も無く落ちる。」


何処かからそんな声が聞こえた。


その後、俺は間も無く意識を失った。

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