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22 接続
舞台袖。
赤が、ミナの横を通る。
足音だけが残る。
「……触らなかったんだ」
ミナが「……はい」と返すと、
赤は「いい判断」とだけ言う。
それ以上は何も言わない。
赤はそのまま奥へ行く。
暗い場所。
線の先。
しゃがむ。
手を伸ばす。
接続する。
小さく、低い音が鳴る。
今まで聞いたことのない音。
長く、続く。
ミナは動かない。
見ている。
光が、わずかに変わる。
床に沿う線が、一瞬だけ、脈打つみたいに明滅する。
時間が、伸びる。
何秒なのか分からない。
けれど、すぐではない。
音は続いている。
ノイズの意味は聞こえない。
音としては届いているのに、
意味だけが分からない。
言葉のようで、言葉ではない。
何かがやり取りされている気配だけが残る。
ミナは理解しようとする。
けれど、追いつかない。
ただ分かる。
何かが起きている。
ここではない、どこかと。
やがて、音が止まる。
光も元に戻る。
赤はゆっくり手を離す。
何事もなかったみたいに立ち上がり振り返る。
「……記録は外にある」
それだけ。
それだけで十分だった。
記録。契約。所属。
全部が、ここではない場所にある。




