私にとって期待というのは裏切られるものなのだろうね
全速力で帰宅!
「ただいまー!」
「おかえりなさい。良い事あった顔ね」
「うんっ、グニアがルナードに謝ってくれるって。後、お母さんに罪を着せた男っぽい奴にシルフィードがプンプンになって風の契約をしたんだ」
「あら、聞かせて」
「全ての悪事を認めないと、声が出なかったり身体が不自由のままって感じかな。恐らく一生あのままだよー」
「あらー、あらあらそれならもうすぐルクナと王都を歩けるかしら?」
「騎士団の指名手配も無くなっていたらかなー? そこら辺は、魔法士団の人に聞いてみるよ」
フエゴさんを味方に付けられたら、結構安泰だし。
母がご機嫌に抱き締めてくれた。
「謝ってきたら、ルクナは許してあげるの?」
「まぁ、死にかけていたから、充分過ぎるくらいの罰は受けたんだ。だからちゃんと謝ればそれで終わりかな」
「もぅ、優しいんだから。ルクナは私の天使ねっ」
「はいはい」
翌朝、学院へ行きチラチラ見られながらいつもの後ろの席に座る。
セイランは目を閉じて私と目を合わせない…もちろんギリギリ遅刻したよっ!
「はい、先日の警報についてですが、軍事演習の一環として王都の皆さんに臨場感を持った避難をして貰おうという国の意向です。良いデータが取れたので、国王様は大変満足している……そうですよ」
「本当に、魔物の氾濫が無かったのですか?」
「はい、無かったようですね」
「でも知り合いは中位の魔物の軍勢だったって……」
「国がそう言っているから、氾濫なんて無かったんですよ」
「本当ですか?」
みんな疑問に思っているみたいだな。
そりゃそうか…あれだけの人数の口を塞ぐなんて不可能。
先生はある程度知っていそうな雰囲気だから、氾濫なんて無かったの一点張りだろうな。
「さて、今日は学院長がして欲しいというので、精霊様について勉強しましょう」
精霊の授業、か。
きっと精霊は何処にでも居るから理解を深めろって事ね。教壇に座って私を見ている緑髪の女の子も、精霊だし……今日の子は堂々としているな。
見えるのは私だけ、みたいだ。精霊石の影響かね。精霊石はオッサンが触ったから、新しいのをシルフィードに貰ったよ。グニアは来ているみたいだ……あの後どうなったんだろうね。
朝の様子が解らないから、なんとも言えないけれど……
精霊の授業も終わり、みんなが雑談を始める中、教壇に座っていた精霊がこっちに来たので見詰めていた。お団子頭で着物みたいな服……東方にいるニンジャってやつかな?
「ルナード・エリスタ、ちょっと来なさい」
「……」
授業が終わり、グニアが眉間に皺を寄せながら私の前に立ち、親指を廊下に向けて来いと言った。
教室がシーンとする中、私はグニアと共に廊下へ行くと……この前みたいに仲間も居て、囲まれた。
「ルナード・エリスタ。この前は言い過ぎたわ。ごめんなさい」
「「「……ごめんなさい」」」
素直に謝られると気持ち悪いよね……全く感情は篭っていない。
でも仁王立ちで謝る人達なんて中々居ないから新鮮といえば新鮮か。
グニア、謝りたくないオーラ全開じゃん……すげー嫌そうじゃん。
周りの女子も嫌そうじゃん。青筋すげー。
これは許さないと許さない状況だ。私が許したらこの話は終わりで解散。でも許さなかったら罵倒が待っている。後者が気になる……あっ、セイラン。
「はぁ、あなた達、そんなに嫌そうに謝るのは失礼よ。それなら謝らない方がマシね」
「セイラン様……だって、謝らないと……」
「グニア、ちょっと来なさい。あなた達は……ルナード・エリスタに私から言っておくから解散で良いわ」
「はい……」「……ありがとうございます」
セイランがグニアの取り巻きを帰し、グニアと階段の方へ歩き出し……止まって私を見た。
「ルナード・エリスタ、あなたも来るの」
「えー……」
注目度が凄いね。
セイランの後を付いていき、階段を上がって上がって四階へ行く前の踊り場に到着した。
「……グニア、本当に謝る気……ある?」
「あります、よ。でも、いざルナード・エリスタを前にすると……ムカつくんです」
ハッキリ言うなぁ……セイランさんは呆れた顔でグニアを見て、大きなため息を吐いた。
「兄さんから聞いたけれど、クルルと約束したんでしょ? 零組の教室そこだから、嫌われても知らないわよ」
「……ぐぅぅ、ご、め、ん、な、さ、い」
歯を食いしばって喋る人なんて中々見られない。私も歯を食いしばって笑ってみると、グニアの眉間に大きな皺が出来た。おぉ…歯を食いしばって眉間に大きな皺があるから、すっげぇブスだなぁ。
「ルナード・エリスタ、どうするの? これで許すの?」
「良いんじゃない? 形だけでも謝った訳だし、もう二度と話す事も無いでしょ。私は戻る」
「待ちなさいよ。グニア、彼とはもう二度と話さない話題にしない関わらない……で良い?」
「はい、それで良いです。もう関わりません」
「そう、それは良かったわ。あっ、ルナード・エリスタ……髪に糸クズ付いているわ、取ってあげる」
「ん? ありがとう……えっ……」
「……へっ? ……う、そ」
セイランさんっ!
眼鏡取らないでよ!
返してー!
きゃー!
グニアに顔見られたー!
見ないでー!
「セイラン返してーまじでーほんとにーやだー」
「ふんっ、昨日待っていたのに……グニア、約束守ってね。もう戻って良いわよ」
「……うっ、うっ、うえぇぇぇぇん! ごべんなざぁい……許してくだざぁい……」
「……あーあ、セイラン泣かせたー」
「えっ、私のせいじゃないわよ。あなたが地味すぎるのが原因よ」
「ぐるるざまぁ……ゆるじで、ゆるじで……じらながったんです……ごめんなざい……」
「知らなかったからは理由にならないよ。誰であろうと、言ってはいけない事だってある」
「はぃぃ……うぅ……ぅぇぇぇぇ……ふぇぇぇぇん!」
ガチ泣きしちゃったじゃん。
駄目だよセイラン、ルナードの時にもう話さない約束をしてからクルルを出すなんて卑怯だぞっ。
あっ、不貞腐れた……唇を尖らせて私を睨まないでおくれ。
「はぁ……セイランがごめんね。ちゃんと許すよ……形だけでも謝ってくれたし、グニアも大変だった訳でしょ?」
「うえっ、えぐっ、うぅぅ……ありがどうごじゃいまじゅ……」
「君達二人はルナード・エリスタが嫌い、これは周知の事実だから崩さないでね」
「やだぁ……ぐるるざまぁ……」
「グニア、我慢しなさい。友達無くすわよ」
「それ酷くない? 確かにルナードと仲良くすると友達減るけれどさぁ……」
「ルナード・エリスタのイメージ最悪なのよ? 慎重に行動しないといけないわ」
「うぐっ、ふぐっ……がまん、します……」
「もう行く。セイラン眼鏡返して」
「……怒って、いる?」
眼鏡を返して貰い、いつのもルナードに戻ってセイランに笑いかけた。
グニアは私の顔を見て、寂しそうにしている……
「ちょっとね」
勝手に眼鏡を取るなんて、ルール違反だ。
だからちょっと怒っている。
セイランの言葉を待たずに階段を降りて、何食わぬ顔で教室に戻って席に座った。
チラチラ見られる中、ジェジェが近付いて来た。代表で聞いてこいとでも言われたのだろう。
「な、なぁルナード、どうしてグニア・マグリットは謝ったんだ?」
「あぁ……好きな人を振り向かせたいだけだよ。ルナード・エリスタの事は相変わらず相当嫌いみたいだし」
「なるほど、そういう事かぁ……図書館によく居る奴が好きって聞いた事あるし、お前も大変だな」
「まぁそれなりに楽しいよ。陰口叩かれてありもしない噂流されて罵倒されて挙句に嫌々謝られてさ」
「いや、なんか、気の毒だな」
「ははっ、ジェジェ君もあんまり私と話すと嫌われちゃうよ。ほら、みんな見ている」
私が周りを見ると、ささっと視線を逸らされた。
良い感じに嫌われているね。
遅れてセイランとグニアが戻って来た。
セイランは少し落ち込んだ表情で、グニアは泣き腫らした顔でまだえずいているから、みんな何事かとザワザワしていた。
だから私と何かあったと思うのは当然で、また避けられるのだろうって思う。
「えぅっ、ぅぐっ……」
「グニア、大丈夫? あいつに何言われたの?」
「なにも、わたしがっ、わるい、からっ、ぅぅぅぅ……」
「……こんなに泣いているのに……最低野郎」
めちゃくちゃ睨まれている。最低戴きました。セイランの最低に比べたら可愛い最低だな。
あの子の名前なんだっけか。あっ、そうそう……クベリアさんの姪っ子の……ラミアライ侯爵家のリベッカだっけ。気が強そうだから苦手なんだよねぇ。
セイランに聞いても、濁しているね。流石に私が好きな人だったから泣いているなんて言えないよね。




